Wat00372 科学面改革・臨時会議<2> 火曜「この人この夢」

#0000 dando    9202031541

 科学面の紙面改革で「火曜科学」に生まれたコラム「この人この夢」について
感想・討論・注文などを。(関連発言#1に記事例。92年2月中の時限開催)


#0001 dando    9202031638

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* イカの墨 松江一さん  (この人この夢) *
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          92.01.07  夕刊 科学面 写真付き
 
 資源への応用を探る<45歳>
 
 イカをくんせいや塩辛などに加工する際に出る皮や内臓などは、
あまり利用法がなくほとんど捨てられる。「資源として使えないか
」と、89年春、水産廃棄物利用チーム、通称イカ・チームを発足
させた。青森県が、地元と密接な関連を持つ先端技術研究のため、
十数億円かけて建設した産業技術開発センターの開発部長としての
本格的な初仕事だった。
 皮や軟骨には特殊な複合糖質のあることが分かっていたが、あえ
て研究の少ない墨に取り組んだ。「分かってないことをやるのが研
究」。イカ1ぱいに1グラム弱しか含まれていないのを絞り出し、
ろ過・減圧処理して粉末にし、酵素で分解し……。ねらいは的中し
た。まっ黒い墨に、白い粉末になる未知の複合糖質が含まれていた。
手足と頼む内沢秀光技師(29)と高谷芳明技師(29)らが、企
業からの共同研究員と連夜遅くまでがんばった成果だ。
 とはいえ、大学と違い、いつまでも基礎研究にとどまることは許
されない。資源活用に結びつけるには、この新物質をどう使うか。
ねらいが絞れない。
 「抗がん剤として使ってみよう」。長年、糖を手掛けてきた研究
者としてのカンだった。祈るような気持ちで、母校弘前大に試料を
送り、動物実験を頼んだ。
 約4カ月後、飲み仲間の佐々木甚一・医学部講師から「たしかに
効くよ」と興奮気味の電話が入った。腹の中にがん細胞を植えたマ
ウスに、墨から取った複合糖質を注射すると、6割強のマウスのが
んが消えた。他のマウスもずっと長生きする。毒性もない。
 特許は出願したが、「どんな仕組みで効くのか」「ひとのがんに
も効くのか」など、研究は緒についたばかり。うまく行けば、トン
当たり4000円以上払って処理している産業廃棄物が、グラムい
くらの「資源」に変わる。
 <複合糖質> 生体で作られる高分子のうち、糖たんぱくや糖脂
質など、糖を含んだもの。多様な生理活性が注目され、「糖鎖工学
」という言葉も出てきた。
 
 
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* 150億光年 佐々木亜紀さん  (この人この夢) *
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          92.01.14  夕刊 科学面 写真付き
 
 宇宙探る技術支える<30歳>
 
 今見ている光は何万年前のものなのかなあ、と星を見ながらぼー
と考えているのが好きな「夢見る少女」だった。大学時代は理論天
文学を勉強、超新星爆発のメカニズムを研究した。そして今、国立
天文台がハワイに建設する世界最大の反射望遠鏡「すばる」の製作
に携わり、150億光年かなたの宇宙の果てに思いをはせる。
 「すばる」の主要部分を製作する三菱電機。兵庫県尼崎市の通信
機製作所にある9人のプロジェクトチームでただ1人の女性であり、
天文学科出身者だ。
 東京都府中市出身。高校時代は天文部。趣味がこうじて、大学、
大学院と専門に勉強した。大学院を卒業するとき「自ら手を動かす
ほうが向いている。世界一の望遠鏡を作りたい」と、研究者から望
遠鏡の製造現場に転身した。
 入社以来、「すばる」一筋。直径8メートルの鏡の厚さはわずか
20センチ。それを264本のロボットの手で支える。最初にした
仕事は、そんな方法で本当に鏡の精度が保てるかの検討だった。
 圧力検知のセンサーがなかなかうまくいかず、何度も作り直し、
テストを続けた。
その結果、1本の手で150キロを支え、かつ1円玉数枚の重さの
変化が検知できるようになった。「エレクトロニクスとロボット技
術の進歩がなければ不可能だったでしょう」
 メーカーの社員の立場を離れ、天文学の立場からチームにアドバ
イスすることも多いという。「それが私に与えられた一番大事な仕
事だと思っています」
 天体用の双眼鏡を手元に置いてはいるものの、仕事が忙しく、今
ではほとんど星を見る機会はない。でも「すばる」がとらえる宇宙
はどんなだろう、と考えるだけで少女に戻ったようにわくわくして
くるという。「それをこの目で確かめるまでこの仕事から絶対離れ
ません」
 <すばる> 1枚鏡では世界最大の反射望遠鏡。ハイテク技術を
集大成したロボット天文台。宇宙の果ての解明を目指す。総工費約
380億円。完成は98年。
 
 
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* 風船治療 井上寛治さん  (この人この夢) *
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          92.01.21  夕刊 科学面 写真付き
 
 応用分野拡大めざす<48歳>
 
 日本が独自開発し、世界中に広がっている医療技術は残念ながら
珍しい。心臓弁膜症の代表、僧帽弁狭さく症を手術せず治す道具で、
東レが製造し約50カ国に輸出している「イノウエ・バルーンカテ
ーテル」は例外中の例外だろう。20カ国以上を指導して回った「
ドクター・イノウエ」は日本でよりも外国でよく知られている。
 風変わりな心臓外科医だ。手術は患者の負担が大きいと、いつも
「手術せずにすむ方法」を考えてきた。高知市民病院時代に数年が
かりで開発したのが、この風船(バルーン)付きの管だった。
 X線で透視しながら管を足の静脈から心臓に入れ、そこで風船を
ふくらませて狭い弁の部分を広げる。「理屈は簡単だが、なかなか
目的の場所に届かず、広げるのに大きな力が必要。しかも、安全が
大事なので苦労しました」
 この管はユニークな特徴を持ち、首をもたげたコブラのように動
く。また、丈夫なメッシュ入り風船は、先端部だけがひょうたん形、
俵形と形を変えながらふくらむ。
熟練者なら約1時間で治療でき、患者は2、3日の入院ですむ。
 手先が器用で機械好き。1982年、風船は奥さんのパンストを
利用した完全手作り品で、患者に使って効果を確認した。しかし、
医療界はなかなか信用せず、東レの協力を得て製品化できたのは8
8年だった。
 日本では3000本が使われ、輸出が1万2000本。「開発途
上国では何百万人もが何の治療も受けず死んでいます。金持ち日本
が援助したら、確実に多くの人が助かるのに」。本来は使い捨てだ
が、何回か使ったとしても、約30万円(日本での価格)のカテー
テルは安くない。
 京都市在住。武田総合病院で週1日の勤務以外は、「他の病気の
カテーテル治療を目指して」京大で実験などの毎日だ。
 <心臓弁膜症> 心臓の弁が変形して、開閉が不完全になる病気。
多くは細菌によるリューマチ熱の後遺症。先進国では減少し、今は
アジア、アフリカなど発展途上国に多い。
 
 
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* 古環境の復元 大場忠道さん   (この人この夢) *
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          92.01.28  夕刊 科学面 写真付き
 
 海底に気候変動読む<51歳>
 
 海底の堆積物(たいせきぶつ)の中に眠る有孔虫の化石。大きさ
1ミリ以下のその殻に目を凝らし、殻が「記憶」する昔の地球環境
を読み取り続ける。それに威力を発揮するのが、原子番号は同じで
質量数が違う同位体の分析だ。殻を構成する炭酸カルシウムの酸素
や炭素の同位体比から、海水温や海水中の同位体比の変動、ひいて
は陸上の植物の盛衰まで分かるという。
 目下、古環境研究の最大のテーマは、気候変動と大気中の二酸化
炭素(CO2)濃度変化との関係だ。過去約16万年で、氷期はC
O2濃度が低く、間氷期はCO2濃度が高かったことが分かってい
る。最終氷期で最も寒かった1万8000年ほど前のCO2は20
0ppm、後氷期の1万1000年前以降は300ppm。なぜ、
こんなにCO2濃度が変わったのか。
 「氷期には海がCO2を吸収していたと考えられますが、その仕
組みが分からない。
私は有孔虫のデータを総合的に判断して、氷期には緯度による寒暖
の差が大きくなって強風が吹き、海水の循環が強まる。それで海洋
深層の栄養塩がわき上がり、表層の植物プランクトンの光合成が活
発化して、CO2を盛んに海に取り込んだのではないかと考えてい
ます。多重論法もいいところですが」
 祖父も地質学者。東京大海洋研究所から1981年に金沢大教養
部へ移り、現在教授。単身生活にも慣れて、大学近くの市場で新鮮
な魚を仕入れて、3枚におろすこともある。
 日本海の環境変遷の研究後、「よりグローバルな」太平洋に取り
かかった。今年から日本も正式参加する地球圏・生物圏国際協同研
究計画(IGBP)で、深海堆積物研究グループのまとめ役になり、
来月10日から太平洋赤道海域で標本採取する。「将来の地球環境
を予測するうえで、人為的影響が及ぶ前の海洋環境の変遷を明らか
にする意味は大きいと思います」
 <気候変動> 4万年周期の地軸の傾きの変化、10万年周期の
地球公転軌道の離心率の変化、2万数千年周期の歳差運動という地
球軌道要素の変化が有力な原因とみられている。


#0002 sci4402  9202140555

     この様な記事に期待しています。重要な用語について解説してあるのも親切で
    嬉しいところです。しかしいま一つ充分でないような気もします。
    例えば、<心臓弁膜症>については分かりました、ではもうひとつ、そのなかで
    も僧帽弁狭さく症とはどんな特長があってどんな症状を示すのでしょうか?更に
    カテーテルとは?..... 解説をしなくても分かる人は読まなくてもよいわけです
    から、欄外に注釈を設け更に図等を使って説明してもらえればこの上ありません。
    そうするとコストの高い記事になるのかな!でも読者としては、参考になる記事、
    ためになる記事は切り抜いて保存しますので、そんな記事が増えることを希望し
    ます。
 
    それからもう一つ、今までの経歴や社会的地位身分から当然のようにその人の研
    究が評価発表され、賞賛されるものだけを記事にするのではなく、田舎の片隅で
    こつこつと続けられているユニークで、面白い研究等もさがしだし、掘り出して
    きて記事にしてほしいと思います。そしてその研究を始めた動機や、工夫したア
    イディア、着眼点、わかったこと、まだ分からないで苦労していること等を紹介
    してほしいと思います。そうすることで研究している人にとっては、はげみにな
    り、より意欲が湧いてくるかもしれません。また別の研究をしている人に何かヒ
    ントをあたえるかもしれません。新聞にはそんな役目もあるのではないでしょう
    か?
    先日、人に近いコンピュータを作るために始まった『脳と心』の研究、という講
    演を聞きにいきました。この講演の中で脳は意欲を高めると、よく働くコンピュ
    ータなのです。頭の良い人を育てるには、その人の存在を喜んでやることが大切
    です。「人は存在を喜ばれることでいきいきと生きられる。」という話を聞いて
    感動しました。

    '92. 2.12.(WED) 『霞む都会の星空』 気まぐれ Watcher の Antares( sci4402 )


#0003 dando    9202141623

 カテーテルは血管に入れる「管」のことです。こんな専門用語で
読者をつまずかせることがあるんですね。

 記事の導入で、心臓の中に管を通して風船を入れて治療する方法
と、説明して入った方が良かったのかな。病名として、これほど細
かく表現するべきだったかどうか−−ということもあります・・・dan


#0004 sci4914  9202150053

つまんな〜い。

水戸黄門のドラマと同じで、

 ×××は一般に×××であるが、××さんらは××
×は××の可能性があるのではないかと注目し研究を
続けてきた。
 ×××の研究は×××の問題があるので困難をきわ
めたが、×××に×××という工夫をくわえることに
より×××を見いだすことができた。
 この結果はさらに×××の可能性を示しているので
新たに×××の要素も加えて×××していく予定であ
る。

というような基本パターンが繰り返されているだけだもの。
いくらなんでも文章にメリハリがなさすぎますね。科学以
前の問題ですね。
--
muchida


#0005 sci5111  9202160119

タトだとわかっちゃいるけど、、

カテーテルって、心臓にいれるの?私が鼻から胃に入れられたのは、
なんだったのだろう???
たんなるゴム管だと思っていた、、、

ものの名前って、気を付けなきゃならないののナンバー1ですね、
啓蒙的文章の場合。内容を知るために便利なことばであっても、
結局専門家以外の人間には後で必要がない言葉の場合、極力普通の
言葉で代用するように気を付けています、私の場合。

これに対して、概念の名前は、必要な場合は簡単な定義を付けて、
出しておくようにすると、興味を持った人が、その言葉をてがかりに
ほかの本や参考書を見る事ができるから、「そこでおしまい」にならず、
いいんじゃないか、と思います。

                      ゴマフアザラシ


#0006 dando    9202161842

  muchidaさんは、なかなか辛らつですね。ここは記者同士が
批判し合う場所ではないので、あまり書きませんが、ごもっと
も、と申し上げられる点もあるようです。何が企画の焦点なの
か、判然としません。

 でも、別の意見の方もあるでしょうし、続けておまちしまし
ょう。

 カテーテルそのものはもちろん、管だけのことですよ。鼻だっ
て同じ。こういうことがあるので、わたし個人はテクニカル・
タームを使わないよう心がけています。また、アルファベット
の略字も嫌いです。ストレートに読んで発音できないと、理解
の進行に邪魔になると、つまり腰を折られると考えるのです。


#0007 sci2176  9202230115

 この人この夢では、科学面をこれから読もうとする意識では文章にのめり込んでいけな
い感覚があります。2月18日のワオキツネザルを読みましたが、少し抵抗を感じました
。私も教員のはしくれですので、このような記事の大切さは分かりますが、この記事の場
合は、人が前面に出ていて、科学的側面が補助的に入っているので、私としては興味が薄
らいでしまいました。
 私が忘れ去っていたひてんが月の衛星になったことを知って大変うれしいです。

 作っている人は大変なのに勝手なことを言って済みません。


#0008 dando    9202261721

 要するに、冴えていない−−ということですか・・・・・・・・dando


#0009 sci1089  9202280248

この欄は、「科学する人」を対象としている点で、「科学、技術あるいはその成果」
の紹介が前面に出ている他の欄とちょっと変わっていて面白いですね。
 いろいろな場所に、いろいろな立場で科学・技術に携わっている人がいるものだと
今更ながら思い知らされる欄です。
 分野によって、立場によって、自然観も、研究への取り組み方も大きく異なるので
すから、そのことが表れてくるような人選を今後も期待します。また、せっかく人に
注目するのですから、その業績ではなく、その人の生きざまというか、科学への、研
究への取り組み方が垣間みられるような、研究成果はこのための材料として用いられ
ているような、そんな記事であってほしいですね。
                                マサ


#0010 sci6605  9202281422

 率直な意見をいわせて貰えれば、ひとが中心なのか、夢が中心なのか、はたまたそ
の人の研究成果が中心なのか焦点が絞られていないような気がします。
 「この人、この夢」という題なのですから、もっと人を前面に押し出してもいいと
思います。技術的な専門用語の解説は注釈に任せて、その人がその研究を始めた動機
や、アイディアを出すにあたっての過程、そして将来その人が何をやってみたいかな
どをもっと前面にだせば、今一つ冴えない(と私は感じている)この記事もより良く
なるのではと考えます。そういう意味で2月18日のワオキツネザルの記事は良かっ
たと私は思います。
 「今一つ冴えない」などと勝手なことを書きましたが私はこの記事は結構気にいっ
てまして、だからこそもっとこの人物についての記述が欲しいなととつい不満も出て
しまう訳ですのでご容赦のほどを。
                               Bears’


#0011 dando    9202282025

 皆さんの書き込みをまとめて読み直すと、かなり正反対の見方
が存在することが分かりました。「人・夢」をどう書けばよいの
か、なかなか難しい問題ですね。

 ただ、わたし個人の意見を言わせていただくと、「人」を書く
にしては、その人の情熱にかかる内面が足りないようだし、「夢」
とすると、知的なきらめきが足りない感じがします。

 問題の所在はそのあたりではないでしょうか。・・・・・dando


#0012 sci5367  9203012324

 結構私は人の履歴は興味あるほうでして

3面の人紹介欄は昔から、自分の人生に重ね合わせてみたり
もくひょうにしたり。
高校生とか学生に、人生の指標となるような、人物紹介の欄に
「人・夢」がなるように希望します。
高校生とかでしたら、まだ科学者になれる夢をもてるから。

                      のは