Wat00331 癌患者「安楽死」事件

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癌患者「安楽死」事件をどう思いますか?


#0001 sci6407  9105150540

5月15日付けの朝刊に、東海大学医学部付属病院に入院していた
末期癌の患者を医師が「安楽死」させたとの記事がありました。患
者は多発生骨髄腫で、すでに腎不全を併発し、全身的に痙攣が起き
て、余命いくばくもないという状態だったそうです。患者の家族は、
そのありさまをみかねて、「早く楽にさせてくれ」と医師に要請し
たそうです。担当の医師(助手 34 才)がそれを受けて、投与すれ
ば死ぬと知りながら塩化カリウムを静脈注射したということです。
この助手は懲戒免職になりました。今後、刑事事件になるかどうか
微妙なところだということだそうです。

・ 末期癌の患者で、回復する見込みがなく、すでに昏睡状態にな
    っていた。(何もしなくても一両日中には死亡したはずだ
    という)
・ 「安楽死」を望み、これを承認したのは家族だった。
・ 注入されたのがモルヒネなどではなく、より直接的に死をもた
    らす塩化カリウムだった。
・ 医師は、大学の倫理委員会に諮問するなどの手続きをとらず、
    独断で行った。

などが問題でしょうか。これは、「尊厳死」を含めて、わたしたち
に「生きる」とはなにか、「病院の医療とはなにか」を問いかける
事件だと思います。

みなさんは、どうお考えですか?

                                      Alopex


#0002 kepel    9105151938

なにかひつようなデータがあれば付け加えます.

いまのところ,このような積極的安楽死を肯定する医師は
いないようです.
最近では癌の末期でも麻薬をうまく使えばかなり痛みは取れます.
あんまり,安楽死の必要性が無いとも言えます.
ただし,この患者さんの場合は,けいれんがでてきたりして,見た目は
苦しそうだったと思います.(昏睡なので痛みは感じないでしょうけれど)

   KEPEL拝


#0003 sci6407  9105160923

新聞では、今回の医師は安楽死とか尊厳死への積極的な意見をもっ
ていなかったような印象ですが、実際はどんなものだったのでしょ
うか。聞く限りにおいて、この医師は、いささか認識不足だったと
いう印象はぬぐえません。

実際の終末医療の場では、KEPELさんもおっしゃるように、麻
薬で痛みをとることが一般的だとききます。しかし、すでに血圧が
低下し呼吸が困難になっている患者に、これらの機能を低下させる
麻薬を投与することは、また、命を縮めることにもつながります。
それと塩化カリウムのちがいは、倫理的には大きな問題かもしれま
せんが、生理的にはそれほどのちがいがないのです。

この「倫理」と「生理」にかかわる一線を、医師は常識として当然
認識しなければなりませんが、医師が決めることではありません。
一般的な社会的な合意が必要だと思います。それは、どのへんにあ
るのでしょうか。ぼくも医学教育にたずさわるものとして、これを
知りたいと思います。
                                  Alopex


#0004 kepel    9105160958

Alopexさん、どうも
実は解説で安楽死・尊厳死の話しをまとめなければならなくなりました。
そのへんのところ宜しく。

あの事件の解説を社会部のひとと書いていて
積極的安楽死
消極的安楽死
尊厳死
ターミナルケア(終末医療)
の4つのキーワードを説明しなければならないなあと思いました。
積極的安楽死は今回のように、治療(痛みの除去も含む)とは関わりなく
積極的に命を縮める作業のことだと思います。たとえば、崖に向かう坂道に
いる人の背中をどんとたたいてやるようなもの
これに対して、消極的安楽死は、命を縮めることを特別にしないが
治療になるようなことも特にしない。坂道のたとえなら、治療は背中に縄を
結び付けて引っ張る作業なら、消極的安楽死は、なにも結び付けず、かとい
って、後ろから押すこともしない、というところでしょうか。
尊厳死はリビングウイルという特別の概念が入るので少し違う。
ターミナルケアというのは、どうも消極的安楽死に近いような気がするのですが
どうでしょう。(いわゆる痛み、苦しみだけ取る努力をするのです)

人の死に立ち会うことが多い方々はどんなふうに見ておられるのでしょうか。

みなさん、ご意見宜しく

     kepel 拝


#0005 kepel    9105261928

始始始
東科学
解説面
来るか安楽死の時代(内村)★★


 死を待つばかりの患者の苦しみを除くため、死へ向けて手を貸すことは是か非
か。神奈川県伊勢原市の東海大学付属病院の医師@(三四)@が末期がん患者に
塩化カリウムを注射して死なせた事件は、古くて新しい問題、安楽死が今どうな
っているのかを考えさせる。(科学部・内村直之)

 「医師に頼んで早く死なせてもらいたい、という積極的安楽死についてどう思
いますか」というアンケートを、このほど日本尊厳死協会(東京・文京区、植松
正会長)が同協会にいざというとき尊厳死を求める宣言書(リビング・ウイル)
を登録している会員一万一千人に行なった。約八千二百の回答のうち、積極的安
楽死を支持するのは三八%で、支持しない人二九%を一〇%近くも上回っていた。
 今のところ治療法がなく苦しみながら死を待つしかない患者に対する安楽死に
は、二種類がある。第一の積極的安楽死は、心臓に毒性がある多量の塩化カリウ
ムを注射するなどで積極的に患者の命を短くするもの。今回の医師の行為はこれ
に当たる。それに対し第二の消極的安楽死は、患者の命を延ばす処置は取らない
が、痛み・苦しみを除く治療は最大限行ない、そのために多少命が短くなっても
やむをえないというものだ。

 同協会編の「尊厳死」(講談社発行)によると、積極的安楽死はに@まる1@
殺人あるいは自殺幇(ほう)助の罪に問われる@まる2@患者を「厄介払い」と
して殺すことに悪用されかねない|などの問題点がある。このため、同協会は一
九八一年に積極的安楽死不支持の方針を決め、本人の自発的意思による消極的安
楽死(尊厳死)の普及運動を進めてきた。それにも関わらず、アンケートのよう
に積極的安楽死を求める声がある。

 法律的には、積極的安楽死は自殺幇助、あるいは殺人に当たるとされる。しか
し、ある条件を満たせば処罰の対象にはならないという判例が一九六二年に名古
屋高裁で出されている。その中でもっとも重要な条件は、本人の積極的な希望が
あるかどうかだとされる。今回の事件でも、本人の意思とかかわりなく安楽死さ
せられたという点がもっとも問題だとされている。

 さらに、法律家の中には、患者本人の意思の有無にかかわらず、積極的安楽死
はドイツ・ナチスの「生存が無価値な生命の隠滅」的な考えにつながり、弱者へ
の脅威になるとして批判する声もある。

 医師たちはどう考えているか。八九年に報告を出した厚生省の「末期医療に関
するケアの在り方の検討会」のメンバーの一人、でがんの痛み治療を専門とする
埼玉県がんセンター病院の武田文和院長は「WHO(世界保健機関)の国際会議
などでも、まず体の痛みを除く治療を考えるべきとしている。麻薬の使い方など
痛みを取る方法は最近、格段の進歩をしており、積極的安楽死を考える必要性は
ないだろう」という。

 末期がんの苦しみは痛みだけではない。出血、呼吸困難、吐き気、けいれんな
どの体の状態、さらに死を前にした心の苦しみなどいろいろあり、これらにもき
め細かく対応して、苦しみは除いていくことが末期医療には欠かせない。死を間
近にみるホスピスでも「殺してくれ楽にしてくれと言われることはあるが、安楽
死を積極的に考えることはない」(福岡県亀山栄光病院の下稲葉康之医師)とい
うのが実状だ。

 欧米でも安楽死についての論議は活発だ。八七年、オランダで積極的安楽死を
認めるよう医療法を改正しようという動きがあったが、実現していない。また米
国では八九年に医師グループが医学専門誌に積極的安楽死を認めるよう訴えた論
文を載せ、議論を巻き起こしている。さらに九〇年には、自動的に心臓マヒを起
こす薬を患者に注射するよう元医師の手で作られた「自殺装置」が実際に使われ
問題となった。これだけの議論がありながら今回のような積極的安楽死を認めて
いるところはやはりまだない。

   止
終終終

解説面に書いたものです。ご参考に

      kepel