Wat00326 大学と民間研究所

#0000 sci6660  9104011316

 3月31日付東京本社発行の社会面コラム「青鉛筆」に東大応微研
のおふたりの中堅教授が民間研究所に転出される記事がありました。
 
 いまの大学にはなにが欠けているのかご意見を伺いたいと思います。


#0001 sci6660  9104011318

 ヒロです。
 最近IDをとったばかりでどこに書き込んでいいのかよく理解していないの
ですが、この手の話題はここでいいのでしょうか?
 
 昨年4月から地方の国立大学で、講師として教育、研究に従事しています。
 それまでは民間の研究所におりました。
 大学に移って一番困ったことは大学から支給される研究費が実質的に殆どな
いということでしたが、まあ地方の大学だから最初はしようがないと思ってい
ました。それだけに、基調で書きました記事は私にとっていささかショックで
した。
 
 東京大学応用微生物学研究所といえば、世界のトップレベルにあると伺って
いますし、なにより付置研究所ですのでかなりの時間を研究についやすことが
できる恵まれた環境にあると思います。にもかかわらず、ご定年までおひとり
は8年、もうひとかたは13年も残して民間研究所に移られるとは・・・・。
 
 このおふたりのケースはごく希なことかもしれません。しかし、このところ
学会にいくたびに話題になる「大学院博士過程への進学率の悪さ」、「科学研
究費の少なさ」を考え併せると、これは大学における人材の育成や将来の科学
研究のありかたをゆさぶるゆゆしき問題ではないかという気さえしてきます。
 
 日本の大学の教育、研究システムの不備が指摘されて久しいのですが、その
改善は遅々として進んでおりません。ここで皆さんの忌たんのないご意見をお
聞かせいただけたらと思います。 


#0002 kepel    9104011925


筆者のKEPEL(内村)です。
大学の魅力以上に企業の研究環境、(と厚生条件)が
良いということなのでしょうか。

応微研のお二人にはまあ、個人的事情もあることはあります。
たとえば、東亜の研究所長になられる鈴木先生は、
その講座に教授として癌研から自分の後輩が来てしまったのですね。
(かれはそのとき助教授だった)
つまり、講座内からの昇進ができなかったのです。
そこで、あと7年しか(定年まで)ない大学よりも
あと10数年できる企業の研究所の道を選ばれました。

宇野先生にも事情はあります。それはここでは書きません。

しかし、そういう事情を抜きにしても、大学の「権威」は
ややおち気味といえるでしょう。
東大医学部の教授には、そういう言葉をはっきり吐く方も少なくありません。

もしそういう例がトレンドとしてあるなら、もう少し突っ込んで取材して
みたいと思っています

        東京科学部 内村直之


#0003 kepel    9104012126

もう少し書いてみます

 「応微研2教授の転職」の記事を書いたものです.

 この出来事は大学の研究者にとってはかなりショックなのですね.

 助手であとのポストがにっちもさっちもいかなくて,企業へ出るケースと言
うのは知っていますが,たしかに,現役の東大教授が外へ出るというのはあま
り聞きませんね.

 宇野先生は,以前から存じており,5年ほどまえ酵母のras遺伝子(あれ
は大文字で書くのでしたっけ)のお話を聞きに研究室までうかがったったこと
があります.その後の,情報伝達を担う遺伝子の研究の発展を見ていると,い
いところを突かれていたんだなあ,と思います.
 今回の転職については「まえからインダストリイには興味があったんだ」と
おっしゃっていますが,これまで全くの基礎をおやりになっていことからみて
も,研究が出来ることだけが転職のファクターでは無いことが察せられます.

 鈴木先生には今回初めてお目に掛かりました.「ここではあと数年しかでき
ないでしょ.東亜合成の研究所にいけば,10数年はできる.転職のチャンス
は前からうかがっていました」とおっしゃっていました.鈴木さんの講座には,
先日,癌研から大学の後輩の鶴尾先生が教授としてみえました.このへんのこ
ともあって,転職を考えられたのだと察します.

 さて,こういうケースが続けば,やはり大学をめぐる一つの社会的現象と捉
えられます.大学の地盤沈下,企業の金を惜しまない基礎研究への投資などな
どを示すものなのでしょうか.大学人としては確かに震え上がるほど不安にな
る事件なのでしょう.

 そこで,こういう例についてのご意見,大学の内情,あるいは不満など,も
う少し詳しく知りたいと思います.
 この,コーナーに書かれるのも結構ですし,私あてのメールでもかまいませ
ん

                東京科学部 内村直之
                       (サイエンスネット kepel
                        Nifty PAF01237)

 なお,書かれたことは記事として掲載される可能性がありますのでよろしく.


#0004 kepel    9104012127

niftyのfbioにも同じものをアップしました.


#0005 kepel    9104021727

「記事にしますよ」なんていうと、発言が減るんだろうなあ。
するとは限らないからだいじょうぶですよっ。

    仕事がらみだとマジメになってしまうkepel


#0006 sci6660  9104021924

 もう少し待ってみましょうか >kepelさん

 基調書き込みの場所が悪かったのかナー・・・?

                 ヒロ


#0007 sci1082  9104030956


<いまの大学にはなにが欠けているのか>

 学生かなぁ。楽生ならいっぱいいるけど。
 教授かなぁ。狭授ならたくさんいるけど。

と、書き込もうとして、レベルの違う問題提起であることに気がつ
いて、やめていました。

 メジャー大学と、うちのようなマイナーとでは、ずいぶん事情が
違うように思います。「後輩が教授になっちゃった」ので転職でき
るというのは、マイナーではなかなかできないことです。数年前に、
大学院(修士課程)ができたとき、教授資格審査を受けられなかっ
た、既に教授になっていた人達がいますが、資格の無いままポスト
を借りて居座っています。

 わが身を振り返ってみても、転職先があるだろうか?先輩が「民
間研究所」をやってるけど、実態はコンサルタント会社だし。転職
先があるというだけで尊敬してしまうなぁ。

Notus


#0008 sci6660  9104031913

 ちょっとご意見がでるまでの間、つなぎのコメントを。
 
 私自身は、大学で仕事をするようになってわずか1年ですので、大学の内情、
実状についてはよく把握しておりません。むしろ、いろいろと教えていただき
たい立場にあるのですが。
 一年間やってみて個人的に感じた問題点をかいてみたいと思います。もっと
もこれらはこれまでに何度も言い古されていることでしょうが・・・。
 
1)研究室運営費、講座費
 大学から支給されるお金のことです。機関によってシステムが違うでしょう
が、多くの場合このほとんどが光熱費、水道、電話代などで消えていきます。
エレベーター使用料なんていうのもとられるようです。とても研究費にまわす
余裕はありません。最悪の場合、学生の教育費にしわ寄せがいく可能性があり
ます。
 学会参加などの公用出張費は別建てですが、だいたい5万円/一人/年でせ
いぜい一回が限度です。
 
2)文部省科学研究費、民間財団助成
 研究費は科研費が頼りです。ありがたいことにここ数年科研費額は毎年30
ー40億円ずつ増えています(昨年は558億円)。一課題(一人あたりでは
ない)あたりの平均配分額は250万円になります。この額が多いか少ないか
は議論があるでしょうが、物価の上昇をかんがえると実情はかなり厳しいと言
えます。また、この額では消耗品だけで手いっぱいで、機械などの設備投資に
まわす余裕がありません。
 もうひとつ科研費の問題点は、人件費に使えないことです(アルバイトは可
能)。研究もかなり機械化されてきてはいますが、まだまだマンパワーに頼ら
ざるを得ない部分もかなりあります。科学研究もいまや情報化社会ですから、
「天上天下唯我独尊、我関せず」てなことを言っていたのでは完全に取り残さ
れてしまいます。研究競争に勝つためには、アイデアはもとよりスピードも要
求されます。アメリカのように経験を積んだポストドクを何人も使えるグルー
プと互角に戦うためにはやはりそれなりのマンパワーが必要です。
 
 結局、足らない部分は民間財団の助成金に頼るわけですが、これがかなりの
激戦で・・・・。増えたとはいえ、まだまだ絶対数が少ないですし、スポンサ
ーの意向もあってか、いわゆる「トレンディー」な研究に偏る傾向があって、
基礎研究全体に広く配分されているわけではありません。とはいえ、申請を出
さない限り、確率は0ですから、脈のありそうなものをみつけてはせっせと書
く。まあ一年の1/3は書類書きですね。最近はワープロのおかげで楽になり
ましたが。
 
3)大学院の問題(これは聞いた話)
 欧米のポスドク制に相当するものが日本にないために、頼りは大学院博士課
程の学生さんですが、これがかなり減っているとか。企業の求人難で優秀なひ
とが修士課程修了で会社にいかれるようです。中には学部の時点で3年先の就
職口が決まっていて、奨学金付でマスターへいく方もいるそうな。
 まあ、学生さんにしてみれば、7万なにがしかの育英奨学金もらってあとは
アルバイトと親のすねをかじって苦労しても大学のポジションは補償されてい
るわけではなし、それならはやめに会社に入って、学位とらせてもらって、海
外留学させてもらって・・・・、という気持になるのは無理もないでしょう。
 そのうえ(4)のような現状も知っているでしょうから。
 ただ、気になるのは、(これも聞いた話でみんながみんなそうではないので
しょうが)「就職が決っているのでマスターでの研究を手抜きする、端的なの
は1年8ヶ月全くデータがでなかったのに秋になると突然出始める」ことがし
ばしば起こるようになった、とある先生がおっしゃっていました。
 もしこれが本当だとするとちょっと問題ですね。(よく知らないんですが、
就職協定というのは大学院生には適用されないんですかね?)
 
4)給料の問題
 これは税金をいただいている身分としては大きな声ではいえないんですが。
やっぱり官民格差は大きいですネ。私の場合、民間時代の2/3にダウンしま
した(;!;)。おまけに奨学金まで返済しなければならない!(これも不合理な
制度だとおもいますが プリプリ)。田舎にいるからなんとかなっていますが、
大都市だと大変ですヨ。実際、私、知っている地方から東京に移られた先生は
ご家族を残したままの単身赴任です(逆単というやつです)。
 給料の話は大学ではなるべくしないようにしているんですが、つい教官同士
が集まるとなんとなくクラーイ話題になってしまって。

 なんか最後のほうはグチになってしまって・・・。
 いえいえ、大学にもいいことはたくさんあるんですよ>学生の皆さん
 なんといってもacademic freedomは大学が一番。
 えっ、企業でも基礎研究はやっているじゃないかって?
 まあ それはいってみないとなんともいえませんね。

 おっと、タイムアップです。この後の話は機会があればいづれ・・・・。


#0009 sci6407  9104041032


いざ研究をバリバリとこなしていこうとする人にとって、いまの大
学の研究体制には、いろいろ問題があると思います。

ぼくは、あまり有名でない私立大学の教員です。出身大学は、いち
おう「権威ある」大学です。研究分野が特殊で、いまだに出身大学
とつながりがあります。「記事にします」といわれなくても、ぼく
のプロフィールをみればだれのことか推測がつくから、さしさわり
がない範囲でしか具体例はあげられません。

一般論としての大学研究のぼくの見解は・・・
1.大学の「権威」は、大学の内部と外部の共同作業で作り上げる
虚構である。
 権威は、研究業績で決まるものではありません。これに「利用価
値」を認めるものがつくりだすものです。だから、もし大学の権威
が低下しているとしたら、それはその相互作用の弱体化ということ
でしょう。
2.大学は「権力」の階層構造を形成している。
 これもまた、研究業績によって決まるものではなく、研究を阻害
する要因です。
3.文部省の科学研究費や各種専門委員の選定には、そのたぐいの
「権威」と「権力」が大きく関与している。

大学の研究体制の問題には、研究者の研究の位置づけ、社会の研究
の位置づけがかかわってきます。

                                      Alopex


#0010 sci6407  9104041033


大学の権威とはなにかを理解するには、だれがこれを利用し維持し
ているのかを考える必要があるでしょう。

1.大学の研究者

 研究者のなかには、「偉く」なるために研究をしている人が多い。
これも、その権力指向が優秀な研究業績をあげるのに役立つなら、
いちがいに悪いとはいえない。ただ、こうした権力指向の人のなか
には、ねつ造、二重投稿といった不正行為もいとわないものもいる。
頂点である「教授」などのポストについたとき、  さまざまな雑用
(文部省や学会や大学の委員、雑誌の編集、雑文の執筆など)にか
まけて、研究活動がにぶる傾向にある。これをみると、もともと研
究は好きでやっていたのではないようだ。こうして研究業績がない
とき、自分の「偉さ」を強調するためには、過去の業績と「権威」
にすがりつくほか道はない。

2.行政

 これは、国、都道府県、市町村のさまざまなレベルで大学の権威
が利用される。たとえば、なにかの反対が予想される事業をすると
き、大学に調査を依頼したといえばかっこうがつく。文部省の管轄
の委員会も、社会的な問題が起こる場合にはつくられるようだ。そ
れを扱う研究者は、大学の格と研究者の肩書きによって選ばれるよ
うだ。

3.マスコミ

 マスコミも、便利に大学の権威を利用する。一方で、その権威が
格好の批判の対象にもなったりする。おもしろい構造だと思う。
 科学記者といっても、深い専門知識があるわけではない。広く浅
くが宿命だから、それはしかたのないことでもある。ただ、取材を
「権威ある大学」でする傾向にあるときく。「権威ある大学の権威
者」は、その機会を自分の権威の主張に利用し、記者は権威者の肩
書きつきで自分の記事の妥当性を主張する。(ちょっとバックナン
バーをくってみても出てきませんが、科学朝日の記事で、毎日新聞
の特ダネとして東京大学教授の「発見」が報じられたが、じつは数
年前に(マスコミには)無名の日本人の発見だった、というのがあ
りました。こんなのは、文献検索でちょっと調べれば、すぐにわか
ることです)。

科学朝日の1990年5月号に、「学長より研究」という辻篤子さ
んの記事がありました。MITで新学長に選ばれた人が、研究のた
めに辞退したというのです。日本でもこうした人はいるでしょうが、
ブツブツ文句をいうわりには、実際に実行する人は少ないのではな
いかと思います。

大学の権威と権力(他人を操作する力)は結びついており、権力は
必然的に研究外の雑用を増やします。それは、研究するうえではじ
ゃまな負担だといっていいでしょう。研究したいとき、そして研究
業績で自分が評価されるという自負をもつとき、「権威ある」ポス
トをすてることは、不思議なことではないと思います。(ぼくには
その能力がない。そうできる人はうらやましいかぎりだ)。

                                    Alopex


#0011 sci6407  9104041033


権威ある大学の権威ある教授から聞いた話です。この人は、その分
野の研究では世界的な第一人者です。ただ、一般的な著作が少なく、
著名度にかけています。彼の教え子のひとりが、学界では末席です
がマスコミに売れていて「権威」なのです。「俺は、テレビの人間
には、あいつの先生だということで偉いと思われてるんだ」と彼は
いっていました。実際の権威の所在は、そんなところにあるのかも
しれません。

科学記者のひとは、学会の発表の予稿に目をとおすようで、ぼくの
所属する学会のある口演の紹介がのっていました。人以外の動物で
は性行動は子孫を残すために行われているとされているが、そうで
ない実例が見つかった、というような内容でした。そのコメントは
権威ある大学の教授がしていましたが、いわば仲間うちです。だか
ら、おおいに評価する、というようなことでした。

科学的に実証するのは大切で、その研究成果を過小評価するわけで
はありません。しかし、ここ10数年ばかりで、動物の性行動とい
えども子孫を残すためだけのものではないことについて、多くの研
究が積み重ねられてきています。だから、このことはいわば「常識」
だと思っていたのです。だから、こうした情報が伝わっていないこ
とで、ぼくはショックを受けました。

大学の先生は、江戸川乱歩の探偵小説にでてくる、蔦の絡まった洋
館に住む得体の知れない恐ろしげなことをしている人だ、というイ
メージから、いまなおでていないのかも知れません。こうした知識
の独占ということも、ひとつの「権威づけ」の機構なのでしょう。

                                      Alopex


#0012 sci6660  9104042150

 
 大学の権威(権威とはなにか?これも議論の余地があるでしょうが)が失墜
しつつあるのかどうかはわかりませんが、すくなくとも、KEPELさんいわく、
全体的な地盤沈下(特に人材面での)が 起こっていることは事実だと思いま
す。
 
 その原因がAlopexさんのおっしゃるような、政治も含めた複合的なものであ
ることも確かです。
 それらをいちいち取り上げているととりとめもないというか、散漫な議論に
なってしまいます。そこで、ここでは「研究」という問題一本に絞りましょう。
権力がほしがために研究をしている方々のことを取り上げてもあまり生産的で
はないと思うのです。
 すなわち、現実の問題点をある程度直視しながら(いきなり科研費を2倍に
しろとか、教員の定員を3倍にしろとかいっても夢物語ですので)、その範囲
でどうしたら(研究面での)大学の地盤沈下が防げるのか、そのためには教員
はなにをしたらよいのか、が知りたいのです。
 個々の研究者の立場は、その器がメジャーであってもマイナーであってもか
わりがないと思うのですが >Notusさん。
 
 このネットには自然科学系の大学(大学院)の学生さんも大勢いらっしゃる
と思います。
 若い方々からみて大学のどこに魅力がないのか、大学研究に関する不満、要
望をアップしていただけるととても参考になるのですが・・・・・・・。
 
                             hiro


#0013 sci2993  9104050153


わたしは、研究が好きなら「大学」だと思います。

というのは、企業の研究所という物は、いつ何時その企業の業績
によって大きく方針が変化してもおかしくないからです。
それと、確かに基礎研究も行なわれていますが、やはり企業の研究
は「生産」に結びつかないと不遇です。(会社によって大差ありますけど)

とはいえ、お金はたしかに企業の方が潤沢に出ますね。私は事例に
あがっている応用微生物関連の仕事をしていますが、大学に出られた
人の話と比較すると、設備費、消耗品費、さらには研究者の給与など
など、企業の方が多かったですね。

MAT


#0014 sci6407  9104050944


==== 大学教員の給料について ====

Professional  としての大学の教員(研究者)の社会的な評価を考
える上で、給料は見逃せない視点だと思います。

SCI6660 さんが書いておられましたが、国立大学の教官の給料は少
ないとのグチをよく聞きます。ぼくは私立大学の教員ですが、ほぼ
同年令の同じ肩書きをもつ国立大学の某研究所の先生がグチをこぼ
すから、 年収を比べてみたことがあります。 そうすると、年収で
200万円ほどぼくのほうが多かったようです。彼の研究所は田舎
にあり、都市手当などがないせいもあるかもしれません。

私立大学の教員の給料は、べつに協定があるわけではないので、そ
れこそ千差万別のようです。同年令の夫婦で別の私立大学の教員を
している人に聞くと、奥さんの月給が10万円くらい多いそうです。

うちの教室の教員(30才くらい)が、やはりこぼしていました。
幼なじみで同い年の人が、市立保育園の保母をしているそうですが、
その人の給料より自分の給料は月給で2万円くらい少ないというの
です。それぞれの立場で給料の少なさを嘆いているわけです。

年収というのは、事故死の際の補償をみても、その人に対するひと
つの社会的な評価です。わが国は資本主義の国ですから、社会通念
として、収入の多い人が社会的な優位者です。それを考えると、大
学教師は、いなくても困るが、たいして役にたたないというのが、
社会政策上の評価ではないかと思います。

                                         Alopex


#0015 sci6407  9104050945


==== 大学の研究管理体制の不備について ====

ぼくの知識は、基礎的な自然科学で応用がきかない分野のせまい領
域に限られています。だから、一般論ともいえませんが、しかし特
定の個人を想定するものでもありません。仮定の話として、ある有
名国立大学の話だとしておきましょう。

昇進の機会がないまま、50をすぎてもずっと助手のままでいる人
がいます。それはなぜかと考えてみました。

デメリット
1.給料が少ない(助手ですから昇給はばが小さく年齢の割にはひ
どくすくない)
2.肩書きがひくい(助手より教授の方が・・・)

メリット
3.「権威ある」大学にいることで、文部省や民間の依頼があり、
「権力」が得られる。
4.学会の役員などがまわりにいて情報が集中する。
5.講演の依頼なども大学経由であり、副収入も多い。
6.科研費もプロジェクトの一員として手に入りやすい。
7.論文を書かなくても、もんくをいわれない。気楽で自由だ。

教官人事で公募があってもこうした人はなかなか応募しません。お
そらく給料の少なさを補ってあまりある利益があると考えているの
でしょう。

公務員ですから、もちろん給料は税金からでています。ほんらい、
社会に対しての貢献を評価してのもののはずです。しかし、実際に
は若い人の就職の場を奪い、研究費を使いながら論文なり著作を出
さないという浪費をしいています。

こうした人は少ないかも知れません。また、助手の例をあげました
が、助手にかぎったことではありません。しかし、ここでの問題点
は、(教官公募という建て前をとりながら)大学が保守的であるこ
とと、問題のある人がいることに対して打つ手のない大学の研究管
理体制にあります。

                                     Alopex


#0016 sci6407  9104051007


> #12 hiro さん、

そのとおりですね。でも、↑↑ この前ふたつ、せっかく書いたの
だからとアップしてしまいました。ちょっと議論の主題からずれて
しまいましたね。すいません。

ぼくの研究のように、応用のまったくきかない分野でも、地盤沈下
の問題は切実です。(大学院生は増えていますけれど)。それには、
人の資質の問題ばかりではなく、 professional としての科学者の
立場の変化もあるように思います。

ま、いずれにしても、きたんのない意見を聞くためには、若い人の
自ア黽フ研究にまつわる問題が提起されるのがいいですね。

                                 Alopex


#0017 sci6660  9104052227

 いえいえ、構いませんよ >Alopexさん、
 #14, #15とも大学に人材を引き留められない=大学研究の地盤沈下につなが
る直接的原因ですから。

 特に#15で指摘された問題は困ったことです。
 ポジションが空かなければ残りたくても残れないのですから。

 大学はれっきとした教育機関ですから、教員は研究者としての資質だけでな
く教育者としての能力も問われます。
 ダメ研究者でも優れた教育者であれば、堂々と大学に居座れるという論理は
成立します。ぎゃくに学界の世界的権威でも、講義はからっきしヘタな先生も
多々いらっしゃいます。日本は、教育か研究かのどちらかがOKであれば立派
な大学人として認められるのが現状のようです。(両方だめな方もいますがね)

 アメリカのシステムにも長短両面がありますが、わたしは米国のtenure制度
は客観的に言って良いシステムだと思います。御存知ない方のためにつけ加え
ると、fucultyとして大学に採用された後、5ー6年以内に研究、教育の両面
で評価を受ける。合格すれば終身雇用になり、落ちれば出ていかなくてはなら
ない、仕組みです。

 日本の国立の場合、教官の地位は教育公務員法とかで手厚く保護されていて、
いっさいの査定なし。これが諸悪の根元ではないかという気がするんですが。
公務員の仕事ぶりはとかく批判の対象になりますが、それでも事務系の方は転
勤とか、持ち場の移動とかがあるわけでしょう(評価の結果かどうかは知りま
せんが)。
 教育職もそろそろ考え直す時期なんじゃないかなー。おっと、こんなことを
書くと他の教職の方から袋叩きにあうかナ。

 やめようといった張本人が自ら政治向きの話をしてしまいました。
 軌道修正、
 現実をみつめながら、改善策を議論しましょう。

 >#13 MATさん、大学の話がひと段落ついたら、企業研究所の方の問題点も
探ってみたいと思います。そのときはまた宜しく。

                       Hiro


#0018 sci6660  9104052229

 #2kepelさん、

 ログを読んでいて気がついたんですが

>しかし、そういう事情を抜きにしても、大学の「権威」は
>ややおち気味といえるでしょう。
>東大医学部の教授には、そういう言葉をはっきり吐く方も少なくありません。

 の医学部のセンセは「大学の権威」=「教授の権威」とすり替えて使ってい
らっしゃるのとちがいますかね?
 
そうだとすると、ここの議論とは次元が違う問題だと思いますが・・・・。
 
ちょっと、皮肉がきつかったかな? (^_`)


#0019 sci1089  9104060213

 2教授の件については、応微研が現在抱えている事情(研究所の再編のような
もの)が、背景にあるかも知れません。
 これ以上は、憶測になりますが、これまで一般論として書かれている「大学の
地盤沈下」のようなことも、確かに背景にはあるでしょうが、上述したような
特有の事情の可能性を抜きにして、一般論だけで推し量るのには、時として
深読みの危険が伴う恐れがあることを、ちょっと書いておきたかったので。
              匿名希望(応微研関係者ではありませんが...)

 大学の地盤沈下」といえば、「大学が破産する日」だったか「東大が崩壊する
日」だったか、そのようなやや衝撃的なタイトルの記事が、昨年12月の日経
ビジネスだったかに、掲載されているそうです。

(どこかにコピーがあったはずですが....)


#0020 kepel    9104060954

#18へ
どうもどうも
例数がそう多くはないのですが、地盤沈下の実態は教授の権威落ちだけ
ではなくて、研究、治療(とくに治療技術の低下)についての権威落ち
も大きな要素だと聞いています。(あそこにいったら殺されるぞー、など
という噂ですよ)

たしかに他の大学では結構優秀な技術を持ったお医者様もおられますし
ちょっとタトかなとも思います。

気にせずに本質論をお続けください

        kepel拝


#0021 sci6660  9104061409


 応微研のお二人の先生のケースについては、個人的および研究所の事情が絡
んでいるらしいということを、その後、オフライン経由で聞きました。

 #19さんのおっしゃるように、あの基調は特殊なケースをたたき台にして
いるので、適切ではなかったと思っています。

 何度もいうように、私自身は一年前まで民間にいて、その時には「大学の問
題」など考えたこともなかったですし、また、移ったあとも   所属セクション
が特殊ですので(あまりいうとバレてしまいますが)学部生や院生と話す機会
もほとんどなく、それほど「地盤沈下」を意識したことはありませんでした。

 あの記事が出る前にたまたまあった学会で、2ー3の先生と「大学はどうで
すか?」というような話をしていて、これまで聞こえてこなかった「大学院の
こと」とか「研究費の問題」について伺い、ちょっとショックを受けていたと
ころでした。そこへあの記事が出たものですから、「学生どころか先生まで逃
げ出すようになってはこれは大変だ」と思い、基調に至った次第でした。

 ここから先は、あの基調文を無視していただいて、一般論でのご意見を伺え
たらと思います。
 「なに大騒ぎしてんの? 大学はちゃんとやっているじゃない」というご意
見も出して頂きたいと存じます。

 ちなみに、私自身は大学のもつ自由な研究環境に非常に満足しております。

Hiro


#0022 sci6609  9104260150


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#0023 sci2993  9104260851


さすがに「自宅の電話、ファックス代」は落ちないのが普通だと
思います。奥さんの旅費も。
私の知っている例では、大学に行って予算が少ないのでいくらか
自分の持ち出しをしていましたけど..
企業から大学にいくという例を、個人的に2例知ってますから
結構たくさん行われていて、その人により大差はあると思います。

Mat


#0024 sci1004  9104261131

えーと関連#22の方,申訳ないですが,アーティクル
読めません.漢字の設定はs−jisになってますでし
ょうか?

できれば再アップなどお願いしたいのですが・・・
てむぽ


#0025 sci6609  9104261632


 ここでの話題と反対の、「民間から大学」へ移る人の話です。もちろん全員
ではありませんが、一般にこういう人達は「経費」についての考え方がいわゆ
る「大学人」とまるっきり違うとか。彼らはなんでもかんでも「経費」で落ち
ると思っているのです。たとえば、助手と称して自分の奥さんの旅費や、自宅
のファックス機代、電話代まで経費で落とそうとした人の話を聞きました。
 まあ、それだけ企業はお金持ち、ということなんでしょうけど、こんな無茶
がふつうの企業では通用するのですか?私は企業につとめたことがないので、
よくわかりませんが、どうなんでしょう。

 日本の大学の研究環境が劣悪だ、ということは内部からももちろん強い声が
あがっていますが、最近はややマスコミが、はやしたて過ぎているような気が
します。「受験戦争の歪」などという報道をしながら「読者のニーズに応える
ために、東大合格者氏名を公表」したりするところや、東大をやめる人を英雄
のようにほめたたえるような報道に、なにか屈折したものを感じるのは考えす
ぎでしょうか?

 日本の大学がダメなのはわかっていますが、一部には完全に外国と同等、ま
たはそれ以上の分野もあることはありますし、企業などに比べて非常に健全な
ところもあると思います(これは「好きだからやっている」という面がかなり
効いているのでしょう)。私のところは、部屋が少ないのは事実ですが(^^;)
助教授クラスが相部屋なんて、先進国(いやひょっとすると日本)でも数少な
いでしょうね。
                                                     GRG

再アップです


#0026 sci2754  9104270120


  GRGさん
  経費ですが、小さな企業ですと公私の境なく経費で落とす場合は
あるようです。有名企業となるとあまり話は聞きません。表にでな
いのかやっていないのかはわかりません。

                                                      長谷川


#0027 sci6660  9104301245

 しばらく覗かないあいだに、書き込みをしてくださってありがとうございま
す。
 
 #22(#25)のGRGさんが御指摘のケースは非常に希だと思います。
 私の前職は大手企業の子会社でしたが、経費は徹底的に管理されていました。
一応、管理職の肩書でしたが。とてもとても、自宅の電話代を経費で落とすな
んて不可能ですし、またやる方の常識もうたがわれます。その方は重役さんか
なにかで、いわゆる「使途不明金」の枠をお持ちだったんでしょうね。
 普通、企業では研究職の経費はきっちり細目化されていてなかなか融通がき
きません。
 その意味では、大学の「委任経理金」のほうがまだ融通がききますね。
 
  マスコミの過度な報道については私も同感です。
 読んでないんですが最近のSPAには「研究する分野の違いで、スーツに差
が現れてしまう脳業界の構造」とかいう記事がでているそうな。
 日経サイエンスのアンケート記事も教官群の母集団(n=11)が小さいですね。
まあ、傾向としては国大協のアンケートと大差はなかったですが。
  大学にも民間研究所より優れた面があることは、企業から大学に移られる方
のほうが多い(と思いますが、この種のデータはありますか?)、とにかく、
そういう方もいる以上、確かだとおもいます。大学のよい面もとりあげてもら
わないと、ますます人材の不足に拍車がかかるでしょう。
 
#23 MATさんのコメントに関して
 確かに、持ち出しがふえました。例えばコピー代、これは私物になるので、
自費です。
 まあ、おかげで無駄な複写をしなくなりましたが。
 それから、出張費。校費では年一回がせいぜいなので、委任経理金の研究費
からねん出していますが、自分の研究費が減るのもバカバカしいので3分の1
ぐらいは還元しています。住宅手当とか、細かいことをいいだしたらきりがな
いですが・・・・。
 
HIRO


#0028 sci1157  9105021715

 ROMばかりで気がひけるので、一言書かせてもらいます。以下では、もっぱら
理工系の研究者に関してコメントします。

 大学と企業の間の人事的な交流は、米国では双方向に極めて盛んなようですね。
大学での経験を生かして企業へ、また企業での経験を生かして大学へという移動は
日本でももっと盛んになって良いのではないでしょうか?
  一方的に移動を移動前の環境が移動後の環境に比べて劣っているからだとか、あ
るいは個人的な事情に帰してしまうのは、結果的にはこのような人事的な流動性を
阻害する社会的なプレッシャーになりかねません。移動すると世間で何かと悪い噂
をたてられるのでは動きずらくなるは
  ようは、嫁さん選びと違って(!?)、研究のキャリアを始めるのにベストと思
って選んだ職場環境が、キャリアの展開にとってベストかどうかはいちがいにいえ
ないので、ベターなポストが見つかったら移れば良いのではないでしょうか?

 それにしても、現在の大学の研究環境が劣悪なことは深刻な問題です。予算の絶
対規模が小さいことも原因でしょうが、人事や研究への投資に際して厳しい評価と
選択がなされていない、つまり悪平等であることも重要な要素であると私には思わ
れます。

 優秀な実力に見合った環境が得られないと不満を持つ大学の先生がもっと企業に
移れば文部省も危機感を持ってくれるのではないでしょうか?
 十分な実力のある先生なら企業は喜んで受け入れるでしょう。
企業の世界では、会社にもよりますが、実力があれば年が若くても上に立つ可能性
がどんどんふえています。
 自分より後輩が教授になったことが転職の真の理由であれば企業の環境も耐えが
たくなるでしょう。

 ちなみに、エレクトロニクスなど講座や学生数の伸びの急速な分野では官公庁や
企業の研究所から大学への人の移動は現在でも活発です。
 50歳前後の「肩たたき」に伴う移動が多いようですが、30〜40歳の働き盛
りを大学が目を付けて引き抜くケースも少なくありません。
 大学から企業への移動は、上のポストが空きそうもない、もらえそうもないとい
う比較的若年層のケースと、定年後の再就職に大別できます。
 最近は大学の環境にあきたらない実力のある助手レベルないしそれより若い研究
者の企業への移動希望も増えてきているようです。
                              (単純の)単


#0029 sci6609  9105121727

 #22及び#25の書き込みのGRGです。

 その後の調査で、件の元企業人はかなりの問題人物であると判明しました。
よって、企業人の「経費についての異常な考え方」は一般化できないかもしれ
ません。

 ところで湾岸戦争のあおりで、科研費の大幅カットがなされたようですが、
困ったものですね。


#0030 sci4317  9105190235

>>企業人の「経費についての異常な考え方」は一般化できない

普通の*まともな*会社なら、経理部の方でそんな経費は全部チェック
されますよ。どーーにかごまかして通したとしても、万が一税務所の
抜きうち監査があって、その時見つかったら、とんでもないことに
なりますよ。

鬼より怖い経理部ってのはサラリーマンの常識ですからねぇ。

すずき