Wat00183 4月17日付科学面への意見

#0000 sci1089  8905022327

4月17日付科学欄について
「米、日本の研究開放要求」は、短期的には企業秘密の公開を迫る虫のいい要求で
あり、同時に長期的には日本企業の自主研究開発努力をそぐことを目的とする要求
であると思われ、到底聞き入れるべきものではないと考えます。

 たとえば、米国の言い分とされている「米国は先端技術の基盤となるところを大
学や研究所がやっていて、日本の研究者が自由に参加し、情報を入手できる。これ
に対して、日本はそこを企業がやっていて外に出さないので、アンフェア」です。

 第1。米国の大学等がやっている”先端技術の基盤となるところ”は、米国の企
業も日本企業同様に利用できるはずです。
 第2。日本企業よりはるかに基礎研究の伝統が古く基盤のしっかりした米国企
業が、日本企業がやっている程度の”先端技術の基盤”の研究をやっていないはず
がない。そして、これらはすべて、「企業秘密」として絶対に公開されないはずで
す。
 第3。日本企業の研究努力のほとんどが、製品開発に関わる方向に割かれている
ことを、情報収集能力の優れた米国が知らないはずがありません。

 これらのことを考えれば、日本企業の行っている程度の”先端技術の基盤”研究
に、米国が深い関心を寄せるとは考えられません。米国が日本での技術研究の公開
を要求するとすれば、どのような呼び方をしようともその真意は、日本企業が重点
を置いている”製品開発に関わる研究”の成果の公開にあると考えるべきでしょう。
 どのような理屈をつけようとも、他国の企業の”製品開発に関わる研究”の成果
の公開を迫るのは、虫のいい要求としか言い様がありません。

 また、「大学が優秀なセンターになっていない」というのが仮に事実だとしても、
だからといって、日本の企業がその研究に割ける力を大学での”先端技術の基盤”
研究の援助に振り向けなくてはならない理由にはなりません。企業は、短期および
長期的視野に立って、最善と考えられる分野に、その力を振り向けるのがあるべき
姿であり、米国の企業も皆これを行っているはずだからです。
 必要以上に企業外の研究の援助にその力を振り向けることは、長期的には、日本
企業の自主的な研究能力を低下させ、ひいては競争力を低下させることにつながる
恐れがあります。米国の要求の真の狙いは、ここにもある可能性があります。
 企業が”先端技術の基盤”研究に関心を持つことが重要であることに異論はあり
ませんが、これにどの程度力を振り向けるかは、企業の研究戦略の問題であり、経
営戦略に準拠して決定されるべきものです。これを誤るならば、米国企業の轍を踏
むことにもつながり兼ねません。
 「大学が優秀なセンターになっていない」という批判に付いては、大学と政府と
が自力で対処すべき問題であり、そのツケを企業に回すとしたら、それは筋違いと
いうものでしょう。

 それにしても、あの強力な研究基盤を持つはずの米国が、このような要求を突き
つけて来なくてはならなくなっているとは、どうしたことでしょうか?
米国企業の製品開発研究のレベルは、日本から盗まなければ太刀打ちできないとこ
ろまで立ち後れているのでしょうか?
 もしそうだとすれば、これは米国企業の研究戦略の問題であり、日本に対してど
んな要求をしたところで、日本の足を引っ張る以上の本質的な解決にはならないは
ずです。それにもかかわらず、足を引っ張ろうとするということは、...
 それだけ、米国がダメになっているということでしょう。ダメな国の言うことを
聞いていると、きっと日本までダメな国になってしまうことでしょう。
          マサ

 もう1つ考慮しなくてはならないのは、日本側でこの問題に付いて発言している
人のほとんどが「大学」関係者であり、
「大学の研究レベル向上」を念頭に置いて発言しているはずだということです。
 まちがい
「大学の研究環境改善」(研究レベルは現在でも、劣悪な環境にもかかわらず高い)
 「大学の研究環境改善」は焦眉の急を要する課題ですが、これは、「政府が」
すべきことであり、「企業の足を引っ張る」形で行われてはならないと考えます。

#0001 magam    8905030246

残念ながら手元に4月17日の新聞がありません。

マサさんの書かれたことで、ちょっと気になったことを・・・
アメリカの研究公開の要求は不当であるから断固拒否すべし、とおっしゃりたい
のですね。
結論はともかく、その論法、言葉の勢いに、私は少しあぶなっかしいものを感じ
てしまいました。 それはマサさんが、向こうの言い分を「そんなはずはない」
といとも簡単に(ごめんなさい。そのように見えてしまうのです)しりぞけてし
まっていることです。
そう、アメリカの言っていることは、ほんとに根拠に乏しいことでしょうか。
大学、企業における研究の彼我の態様の違い、これが日米の”技術較差”に無視
できない影響を及ぼしているってことはいえませんか。
少なくとも、アメリカ側がそのようにとらえているということは、一応きちんと
受け止めておいた方がよいと思います。それは言い掛かりに過ぎない、というの
でしたら、もっと事実関係を明らかにする努力をしなければいけないと思います。
「はずはない」という従来の常識がそのまま正しいのかどうか。日本やNIES
が変わってきたのと同じように、アメリカも変わってきているのですから。

時間がないので途中をちょっと飛ばしてしまいますが、「ダメな国のいうことを聞
いていたら日本もダメな国になってしまう」というような言い方は感心できません。
立場を異にする当事者間に、解決を要する問題がある(少なくとも一方の当事者
に)。感情的な決めつけで、理性的な討議の道をふさいではいけないと思います。

要するに、偏見を極力排除して、相手の言うことに耳を傾けて、理解し、そのう
えで、反論すべきところがあれば、実証的に論理だてて反論するというル−ルを
守っていくべきではないか、ということです。

ところで、軍事技術研究(次期戦闘機FSXの技術提供問題)への言及があって
もよかったのでは・・・・・
                          管理人  馬上

#0002 sci1089  8905032046

 馬上さん、どうもやや過激な発言で迷惑をおかけしたようですね。

 私の真意は、「米国の真意(本音)をはっきりさせたうえでしかるべき対応を
取るべきではないか?」ということです。同日の記事にもありますように、これ
までも、米国の真意を十分に理解しないで、「基礎研究の従事者の都合のいいよ
うに」解釈して、米国の要求に従っているかのように振舞ってきたらしいことが
うかがわれます。
 今回の要求にしても、米国の真意を十分理解した上で、しかるべく対処する
必要があるでしょう。

 それに際して、私が提示したような「疑い」も、米国側の真意が明らかでない
以上、考慮した上で、交渉にあたるのが、外交というものではないかと思うので
す。

 そして、疑いが十分に晴れない限りは、従うべきではないと思うのです。

 私の疑いは根拠のないものですが、私が米国の立場なら、この程度の下心を
持っていなければ、今回のような主張はしないと思うからです。そして、この
主張にしても、「そのまま通れば儲けもの」であって、取引の材料として使う
ためのものとして、位置づけて、交渉に臨むでしょう。

 確かに、このような議論は、事実を重視する「新聞社」とは相容れないもの
かもしれません。このボードが「報道」を目的とするのではなく、意見の交換を
目的とするのだと思っていますので、敢えて極論を展開しましたが、あまり
不適切というなら、他に書き込まれた方もありませんし、削除されて結構です。
 マサ

#0003 sci1089  8905032055

 すみません、うっかり長い文を「基調」に書いてしまいました。
「基調」は簡単に」の原則を踏み外したことをお詫びします。

 マサ

馬上さま
 軍事技術研究については、「記事」には一言も触れていませんので、意見でも
言及していません。

 どんなことがあっても、「軍事技術研究」の成果は、「軍事的に意味がある限り」
公開するはずがないでしょうし、利用できないのは、日本の企業も米国の企業も
同じでしょうから、今回の議論とは、別の問題のように思えます。

#0004 kepel    8905042320

こういう議論はとても面白いです。皆さん続けてください。
誰か、アメリカの企業に留学した方はいらっしゃいませんか。
IBM Watsonの研究所、ベル研究所なんて大学よりずっとすごいはずです。
現にノーベル賞が次々ち出ているではありませんか
kepel

#0005 magam    8905050256

マサさん

削除などとんでもありません.私たちの間同士のコミュニケーション,あるいは
外国と日本とのコミュニケーションについて,考えていることがあったので,
気になることを書いてみたのです.  マサさんの文章が特別に過激であったとか,
ましてや削除の対象になる,などというものではありません.

私のレスポンスの方が挑発的だったかなと少し後悔していたところでしたので,
お答えから,冷静に受け取っていただけたことを知り,安心しました.

米国との間にはいままた報復関税の問題が出て,粉糾がエスカレートしそうです.
相手の立場を知る(一方的に譲歩することとは違います)こと,コミュニケート
することのむずかしさ,偏狭な愛国主義への陥りやすさ...をわきまえながら
長期的な視野でものごとを解決していくことが一層大切になってきたのではない
かと思います.
いま旅先ですので,とりあえず
                  管理人 馬上

#0006 sci1089  8905070006

 それにしても、技術開発の成果までが「外交戦術」の道具として利用される
ようになるとは、時代を感じます。

 道具と言っても、戦争の道具と違って、直接人を殺したり、ものを壊したり
するわけではないですからまだいいですが、
 熱心に研究に打ち込んでいる人は、何か割り切れないものがあるのではないで
しょうか?

 まるで他人事のようなMartha