Wat00155 院生浪人さまへ

#0000 kimot    8903062155

 院生浪人さま 御返事が遅れて申し訳ございません。

 3月号でお問い合わせの件ですが、まず火星での操縦性能について。
湯浅先生は、燃焼がご専門なので、くわしくお返事できないとのことでした。
ただ、地球の高々度の空を飛行する飛行機のテクノロジーは、すでにあるの
で、そこから考えれば決して操縦は不可能ではないはず、とのことでした。
このCO2 ブリージングエンジンは、NASAなどが関心をもっており、今
夏米国で発表される予定なので、来年以降、米国からも野心的な設計案が出
てくるかもしれません。
 また、エアロスペースプレーンの燃料重量の件ですが、鎮西先生が多忙で
連絡がとれてません。手持ち資料での回答になりますが、これはエンジンの
開発がまだのために設計案の値、というものとなりますが、例えば英国のH
OTOLの仕様では、全備重量230トンに対し、ペイロードと着陸重量は計
54トンとなっています。西独の2段式機SANGERUの仕様では、ターボ
ラムで飛ぶ初段の全備重量295トンに対し、燃料重量は150トンとされてい
ます。実際のところ、まだまだ未知の部分が多そうです。
                        科学朝日 木元・拝

#0001 kimot    8903071800

 本日、鎮西先生より手紙が届きました。以下に再録します。

 スペースプレーンにはロケット打ち上げ機と同様に単段式と多段式が
考えられています。たとえば米国のNASPや英国のHOTOLは前者
に属し、西独のSangerは2段式で後者になります。離陸時総重量
に対する燃料の割合はこの形式により異なり、一般に多段式では飛行・
上昇中に不要となった部分を切り離し、身軽となるため燃料消費も少な
くて済みます。しかし、複数の機体を開発しなければならない点、切り
離しに伴う技術的困難、切り離した部分の回収など種々の問題がありま
す。
 どちらが望ましいかは今後の研究結果を待って判断されるべきですが、
ここでは米国のNASP関連で行われた概算結果を紹介します。単段の
場合、最適なエンジン組合せおよび燃料を選んだとして、衛星軌道に達
するのに必要な燃料割合は離陸時の56%以上という結果が得られてい
ます。この値は従来の航空機に比べると非常に大きなものですが、先進
技術の開発により不可能な数字ではないとしています。

   以上でした。今後ともよろしくお願いいたします。
                     科学朝日 木元・拝

#0002 sci1004  8903080314

 感想書きを途中で休憩してしまって申し訳なく思っているところに,ご丁寧な
お答えをいただきまして恐縮しております.

 操縦性能については,大気が希薄なら,大気に依存するような方向舵とかの機
能も地球上の飛行機とはかなり違ったものになるのかなあとか思ったのですが,
お答えによりますと,地球の飛行機のテクノロジーの延長上で考えれば良さそう
ですね.わかりました. ところで,この火星上を飛ぶ飛行機のイラストですが,
たいへん説得力のあるイラストで感心しました.「2001年宇宙の旅」のディ
スカバリー号に匹敵しますね.この説得力.

 単段と多段があるのですか.イラストからだと単段だけみたいな印象があった
のですが.(どうもイラストに引っ張られますねえ) 56%ですか.思った程
大きな数字でもないですね.でも効率がいいわけでは当然なさそうだから,これ
だけでも,運賃は安くはなさそうですね.後は技術開発と実用化技術ですね.く
れぐれも,ファインマンさんを草葉の陰で泣かせるような事だけにはなってほし
くないものです.

 こちらは気楽に質問してしまっているのに,随分とお手間をとらせるような事
になってしまったようで,まことに恐縮です.だけど,科学面や科学朝日への疑
問をこのネットで答えていただけるなんて,これこそサイエンスネットの真骨頂
だと思いませんか? みなさん! 

 というわけでありがとうございました.院生浪人(近々ハンドルをかえます)