Wat00116 89/1/25科学面=原発蒸気発生器にあいた穴ほか

#0000 yaman    8901271752

1/25の科学面記事です。関連発言の1から3に入れてあります。

#0001 yaman    8901271755

◆原発蒸気発生器の細管にあいた穴 どこまで栓できる?
          89.01.25  夕刊 7頁 みんなの科学 写図有 (全2382字)
 
  あいまいな国の安全施栓率 トラブル続出に住民らは不安
 日本の原子力発電所の約半数を占める加圧水型原子炉では、原子炉で発生し
た熱を蒸気に変える蒸気発生器の細い管に小さな穴があき、放射性ガスが大気
中に放出される事故が続いている。この放射能漏れを防ぐため、各電力会社で
は、穴やひびができた細管の根元に栓をしている。ところが、栓をした細管は
増える一方。細管にどこまで栓をしても大丈夫かについては、国の審査を受け
た「安全解析施栓率」という数字があるが、栓をした細管が増えれば、この数
字も上がる一方だ。「住民からすれば、現状に追随したご都合主義とも感じら
れる」(福井県原子力安全対策課)との声も出る。安全解析施栓率とは何か、
なぜ簡単に変えられるのだろうか。(山之内寛隆記者)
 加圧水型原子炉では、炉心で310度前後に熱せられた1次冷却水が、蒸気
発生器のU字形の細管を通る間に外側の2次冷却水に熱を伝え、蒸気をつくる。
細管は、直径22ミリほどで肉厚は約1ミリ、1基の蒸気発生器当たり、四千
数百本から三千数百本ある。もし穴が開くと放射能を含んだ1次冷却水が2次
冷却水と混ざってしまう。
 原子炉の安全審査では、さまざまな故障などを想定し、電算機による模擬計
算で安全性を確認する。関西電力原子力管理部の高松洋課長によると、施栓率
が最も問題になるのは、原子炉の太い配管が切れて、1次冷却水が短時間に炉
心から流れ出す冷却材喪失事故の場合。ほっておくと炉心が空だきになり、燃
料棒が溶ける炉心溶融事故へと発展する。
 これを防ぐため、緊急炉心冷却システム(ECCS)が働いて冷却水を炉心
に注ぐ。
過熱した炉心に注がれた冷却水の一部は、蒸気になって1次冷却水の流路を流
れ、配管の破れから抜ける。もし、蒸気がうまく抜けないと、炉心の圧力が高
くなってECCSの冷却水がなかなか入らず、空だきが続く。
 原子炉の設置許可申請時の安全審査では、冷却材喪失事故時に蒸気がうまく
流れるかも計算されている。蒸気発生器の細管のうち、栓をしたものが増える
と、通り道が少ないため抵抗が増え、蒸気は当初の安全審査通りには流れなく
なる。
 このため、細管に栓をする場合には、安全解析をやり直して国の審査を受け
ることになる。このとき、計算の条件として仮定した施栓率が安全解析施栓率
だ。少なくとも、そこまでは栓をしても、計算上安全が確かめられているとい
うことで、それを超すと直ちに危険になるということではない、という。
 変更の審査には半年から1年かかるため、電力会社では安全解析施栓率と実
際の施栓率の差が小さくなると、定期検査前に施栓率を上げた計算をやり直し、
審査を受けておく。例えば大飯1号機の場合、施栓率が増えるにつれて安全解
析施栓率も6、8、12、18%と徐々に上がっている。
 それなら、最初から高い施栓率で審査を受けておけばよさそうにも見える。
しかし、資源エネルギー庁原子力発電安全審査課では「施栓をしないのが本来
の姿。最初から栓をすることを前提に考えるのは好ましくない」という。では
最高どこまで施栓率は上げられるのか。この数字は「計算していない」という。
安全解析施栓率は冷却水の流量など運転条件を変えても変わるのに、いったん
数字を出すと、これが絶対的な限界と受け取られるとの心配もある。
 施栓への不安の声もあって、関西電力では86年から大飯1号機、高浜2号
機、美浜1号機で、いったん施栓した細管の内部にスリーブという内ざやを当
て、金でろうづけして再使用、施栓率を下げる工夫もしている。また、新しい
原発では、ひび割れそのものを少なくしようと、蒸気発生器の材質や加工方法
を改善している。
 昨年8月と10月、相次いで細管からの放射能漏れを起こした高浜2号機、
大飯1号機はともに施栓率の高い原発だった。「偶然の一致」と関電ではいう
が、「やはり無理をして使っているのでは」と心配する声も地元にはある。1
2基の原発を抱える福井県では、これ以上施栓率を大きく上げないよう、細管
損傷の原因解明などを関電や国に申し入れた。
 大阪大理学部の久米三四郎講師は「蒸気発生器にトラブルが続いているのは、
設計時に全く予想ができないほど材質的に弱っているからだ。それなのに安全
解析では、運転時に複数の蒸気発生器細管が破断したり、他の事故に細管破断
が重なるなどのケースは想定されていない。また、安全審査をパスしたといっ
ても実際の原子炉を使った実験で確かめていないので、計算に使ったコンピュ
ーターのプログラムが完全である保証はない」と話している。
 ◆ 蒸気発生器の現状 (1月24日現在、各電力会社調べ)
 <関西電力> 細管本数 施栓本数(施栓率)安全解析施栓率
 美浜1号機  8852 2180(24.6%) 28%
  美浜2号機  6520  392 (6.0%) 20%
 美浜3号機 10164  167 (1.6%) 15%
 大飯1号機 13552 2126(15.7%) 18%
 大飯2号機 13552  124 (0.9%) 18%
 高浜1号機 10164  545 (5.4%) 18%
 高浜2号機 10164 1634(16.1%) 18%
 高浜3号機 10146    1   (0%)
 高浜4号機 10146    0   (0%)
 <四国電力>
 伊方1号機  6776  191 (2.8%) 10%
 伊方2号機  6764    0   (0%)
 <九州電力>
 玄海1号機  6776  763(11.3%) 15%
 玄海2号機  6764    1   (0%) 10%
 川内1号機 10146    0   (0%)
 川内2号機 10146    0   (0%)
 <日本原電>
 敦賀2号機 13528    0   (0%)

#0002 yaman    8901271756

◆001 回転ジャンプの踏み切り足、三半規管が影響
          89.01.25  夕刊 7頁 みんなの科学 写図有 (全1118字)
 
  フィギュアスケートの選手が左回転ジャンプをする時、きき足とは関係なく、
左足で氷面をけって跳び上がり、右足で着地することが多いのは、なぜだろう。
久留米大医学部耳鼻咽喉科の伊藤信輔講師は、耳の三半規管と足の筋肉の間に、
これまで知られていなかった反射が存在することを発見、スケートのジャンプ
と踏み切り足の関係も、この反射で説明できるのでは――と日本平衡神経科学
会で発表した。
 伊藤さんは、耳をけがした患者の平衡感覚の異常を見つけるため、半径1メ
ートルの円周上を歩かせる検査法を開発。検査を続けるうちに左回りに歩くと
左足、右回りだと右足のふくらはぎの緊張が高まることを見つけた。
 平衡感覚をつかさどる三半規管は、内耳にあって、3つの半環状の管(半規
管)がお互いに直角に配列。管の中のリンパ液の動きが、感覚細胞に伝えられ
る仕組みになっている。伊藤さんは、ふくらはぎの緊張は三半規管の働きと関
係があるのではと思い、患者を仰向けに寝かし耳に冷水を入れ、水平方向の動
きを感じる水平半規管内のリンパ液に回転を与えてから歩かせてみた。すると、
右耳に冷水を入れて右回りに歩かせると、右足の緊張は余り高まらないうえ歩
きにくかった。逆に左耳に冷水を入れ、右回りに歩かせると、右足の緊張は強
くなるが、比較的歩きやすいことが分かった。
 これは、仰向けに寝ている状態で右耳を冷やすと、重くなったリンパ液は時
計回りに回転を始め、右回りに歩く際に生まれる反時計回りのリンパ液の流れ
を打ち消す方向に働くため。逆に左耳を冷やすと、右耳を冷やした時より歩き
やすいのは、右回りに歩く際に生まれるリンパ液の流れを強める方向に流れが
起こるためだ。
 人間は右回りの運動をする時は、主に右足で体重を支えるが、この時起こる
反時計回りのリンパ液の流れが右足の緊張を呼び、体重を支えやすくしている
らしい。
 スケートのジャンプも同じで、左回転ではまずリンパ液が時計回りに動き始
め、左足に緊張が起こるため左足で踏み切る。しかし、着地の際には体の回転
にブレーキがかかり、リンパ液は逆の回転を始めるため、緊張は右足へ移り、
右足を使って着地することになる。
 伊藤さんは「テレビでカルガリー五輪の中継を見ているうちに、この関係に
気づいた。水平半規管と足の緊張の関係を利用して平衡感覚の検査をすると、
他の検査では分からない異常も見つけられる」と話している。
 日本スケート連盟スポーツドクターで筑波大体育科学系の浅野勝己教授の話
 あんなに回転してもスケート選手の目が回らないのはなぜか、といった素朴
な疑問をはじめ、スポーツ医学的にスケートはまだ分からないことだらけだ。
大変面白い説で、ぜひ私も研究してみたい。

#0003 yaman    8901271757

◆001 大腸菌の全遺伝子を解読へ 京大ら、470万文字を3年がかり
          89.01.25  夕刊 7頁 みんなの科学 写図無 (全904字)
 
  大腸菌のすべての遺伝子を3年がかりで解読する計画が新年度からスタート
する。
大腸菌の持っている遺伝暗号は文字数にして470万にのぼり、大英百科事典
1冊分に相当する。解読できれば、生物を遺伝子レベルで理解するうえで、重
要な発見につながるものと注目されている。これまで、独立して生活する生物
の全遺伝子が解読された例はなく、人間の全遺伝子解読という巨大プロジェク
ト推進にも弾みをつけそうだ。
 この計画の中心になっているのは、京大ウイルス研究所の由良隆教授(遺伝
学)や神戸大理学部の磯野克己教授(同)ら。東大、京大、阪大、名古屋大、
神戸大、国立遺伝学研究所などの分子生物学関係の約20研究室が協力、解析
に当たる。
 遺伝子は、構成要素である4種類の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、
チミン)がつながったもので、その配列によって、特定のたんぱく質の合成を
指令している。
大腸菌の遺伝子は最もよく調べられているが、約470万の塩基配列のうち分
かっているのは15%程度。遺伝子数では、推定3000―4000のうち5
00ほどの配列が分かっているだけだ。
 この計画が具体化した背景には、磯野さんや名古屋大理学部分子生物学科の
小原雄治助手らが、大腸菌の遺伝子を500分の1の断片にして、それぞれを
再び大腸菌に入れ、同じ断片を大量に増やせるようにしたからだ。これを使う
と、大腸菌の全遺伝子が塩基数約1万の断片に分けられたことになり、これを
手分けして調べられる。磯野さんの試算では、全配列を決めるのには、薬品代
だけでも2億円以上かかるという。
 これまで、大腸菌の遺伝子を調べることで、特定のたんぱく質を指定する配
列や、生産をコントロールしている配列などが分かり、遺伝子の仕組みを理解
するのに大きな役割を果たした。全遺伝子配列が解読できれば、異なった遺伝
子間の相互作用がどうなっているか、などの解明につながる。また、塩基配列
を比較することで、他の生物の遺伝子の役割を推定することが可能になるとい
う。
 一方、人間の全遺伝子配列を解読しようという機運が盛り上がっているが、
大腸菌の全遺伝子を決定する中で得られた方法の多くは、人間でも使える。