Wat00109 89/1/18科学面=移植医療、米でも深刻ほか

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 サイエンスネットについての議論をしていて、皆さんに科学面そのものを
議論の材料として見ていただく必要を感じました。
 
 実験的に夕刊の水曜科学(朝刊だけの地域は木曜です)をアップロードし
てみます。関連発言の1番に目次があります。
                         大阪科学部・団藤

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89/1/18 科学面目次=以下の関連発言に掲載
 
関連2◆移植医療、米でも深刻 神戸の医師らが視察報告
           89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図有 (全1978字)
 
   ◆米国、研究所から学位授与権はく奪 「天地創造説に偏りすぎ」
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図無 (全0字)
       【現在著作権交渉中の為、本文は表示できません】
 
関連3◆合成高分子で植物細胞固定 京大工学部で成功
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図有 (全408字)
 
関連4◆パリケール、デット著『贈られたいのち』(ほん)
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図無 (全345字)
 
関連5◆結晶基板の上に他の結晶育てる 東大理学部
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図無 (全421字)
 
      ◆氷解け(変わる北極像)
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図無 (全0字)

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◆移植医療、米でも深刻 神戸の医師らが視察報告
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図有 (全1978字)
 
  臓器不足や施設の乱立 ドナーカード制度も機能せず
 
 患者の立場から見た臓器移植の問題点を探るため、昨年11月から約1カ月
間、米国の移植関連施設を視察してきた神戸市西区のみどり病院(額田勲院長
)の内科医、浅香隆久さん(35)と稲波宏さん(36)が、28日に神戸市
で開かれる「神戸生命倫理研究会」で視察結果を報告する。
 
 臓器移植や脳死が社会に認められている米国でも、提供臓器の不足や移植施
設の乱立など多くの問題があることが分かり、日本でも臓器移植再開の前に検
討しておくべき課題がたくさん残されているという。
 
 みどり病院は、87年夏に「神戸生命倫理研究会」をつくり、神戸朝日病院
(金守良院長)と一緒に生命倫理について独自の勉強会を続けてきた。「移植
先進国」とされる米国の臓器移植の実態を探るため、米国心臓病学会をはじめ、
スタンフォード大やカリフォルニア大、国際生命倫理研究所など、移植にかか
わりの深い11施設へ浅香さんら2人を派遣した。
 
 <臓器不足> 米国も、慢性的な臓器不足に悩んでいる。臓器提供を増やす
ため、脳死患者の家族に臓器提供の話をすることを病院に義務付ける法律が、
約40州で施行されている。しかし、この法律の制定後、原因ははっきりしな
いが、かえって臓器提供者は減ってしまった。スタンフォード大の移植コーデ
ィネーターは「87年には全米で約9000個の腎臓(じんぞう)提供があっ
たのに、88年は7000個ほどに減りそうだ」と打ち明けた。
 
 脳死段階での自分の臓器の提供に同意するドナーカード制度も、うまくは働
いていない。米国民の約2割がドナーカードを持っているといわれるが、臓器
提供者で実際にドナーカードを持っていたのは2、3%に過ぎず、ドナーカー
ドの普及が臓器提供に結びついていない。
 
 浅香さんは「法律ができさえすれば、臓器の提供がかなり増えるに違いない
という当初の見込みが甘かったことは確か」と見ている。
 
 <乱立> 全米の心臓移植施設はすでに130施設を超え、その過熱ぶりは
「現代のゴールドラッシュ」と呼ばれている。浅香さんは「心臓移植をしない
と、一流の病院に見られないという雰囲気が乱立を招いている」と指摘する。
こう乱立すると、移植成績の良い施設で手術を受けたいと思うのは人情だが、
全米の移植ネットワーク組織・UNOSは、各施設別の移植成績などを一般に
公表するのを拒否している。
 
 米国のテレビ局CNNは昨年12月、臓器移植に潜在する多くの問題点を指
摘する「奇跡の管理」という一時間の特別番組を放映した。CNNが123の
心臓移植施設に行ったアンケートでは、1年生存率が9割を超える施設もあっ
た半面、1年生存率が5割にしか達しないオーガスタ大学病院や、3年間に6
人の移植を行い、全員が1年以内に死んでしまったコロラド大などの例も見つ
かった。移植施設を制限すべきだという声も米国内で上がり始めている。
 
 <再移植> 移植した心臓は、永久に働き続けてくれるわけではない。浅香
さんらが参加した全米心臓病学会では、移植後5年間で半数の移植心に冠動脈
狭さくが発生、再移植の対象となる、という発表があった。
 
 冠動脈狭さくは、まだ簡便な発見方法がなく、このためにオレゴン健康科学
大では、最近3年間に2人の移植患者が死亡、移植経験の最も長いスタンフォ
ード大でも、約1割が再移植を受けている。再移植患者は今後増加すると見ら
れ、臓器不足に拍車をかけることが心配されている。
 
 また同学会では、従来なら移植しなければ助からないほど悪化したとされる
患者でも、積極的な内科治療をすれば、1年生存率7割と、心臓移植とさほど
劣らない成績が出せた、という発表もあった。
 
 心臓移植を受けた患者は、ほぼ正常人の生活に戻れるといわれてはいるが、
スタンフォード大の経験では、実際は移植後も感染症などを起こして、年平均
17日の入院生活を強いられている。同大では、ハアハアいっているような幼
児でも、外来で利尿剤などを渡すだけで家に帰らせており「日本の常識ではI
CU(集中治療室)行きのケース。移植患者の入院は、日本では年に1カ月を
超えるのでは」という。
 
 調査を終えた浅香さんらは「移植医療は、多くの医療関係者の協力が必要な
システムの医療だが、日本はこれが弱い。ほかにも高額な移植費用や臓器配分
の公平の確保など、移植医療の問題点は多い。向こうの医者から、移植という
治療法に過大な期待を持つのは危険だと強くいわれた」と、話している。
 
 「神戸生命倫理研究会」は、28日午後2時半から、神戸市中央区雲井通5
丁目の神戸市勤労会館で。徳島大医学部の斎藤隆雄教授の講演「生命倫理と合
意形成」もある。参加料500円。問い合わせは、みどり病院(078−92
8−1700)か、神戸朝日病院(078−612−5151)まで。

#0003 dando    8901241815

◆合成高分子で植物細胞固定 京大工学部で成功
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図有 (全408字)
 
  植物細胞を化学工場代わりに使い、普通の化学合成では作りにくい物質を生
産させる際には、培養する細胞が流れ出さないように固定化できると便利だが、
京大工学部の園元謙二助手らは、合成高分子のポリビニルアルコールの一種を
使ってラベンダーの細胞を寒天状のゲルの中に固定化して培養、15回(30
週)以上繰り返して青色色素を生産させるのに成功した。
 
 培養する細胞を固定化しておくと、細胞と培養液を一緒にタンクに入れ、一
定時間後に培養細胞の生産物の溶け出した液を取り出し、新しい液を入れると
生産を続けられるので、効率的だ。これまで固定化には、寒天など天然の物質
が使われ、合成高分子は毒性のために細胞を傷めるため、敬遠されていた。し
かし、合成高分子には化学構造を変えてやれば、培養液や生産物の通りやすさ
を変えやすいなどの利点がある。
園元さんらは、前もってある程度まで重合させてから細胞を混ぜて、重合させ
ることで細胞への影響を減らした。

#0004 dando    8901241816

◆パリケール、デット著『贈られたいのち』(ほん)
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図無 (全345字)
 
『贈られたいのち』 パリケール・ヨントーブ、テッド・シュワルツ著。吹田
市民病院の北嘉昭・医師監訳。メディカ出版(電話06―385―6911)
刊、2000円。
 
 12歳のとき、銅が体から排出できなくなるウィルソン病に侵され死の宣告
を受けたデビッド少年が、米ピッツバーグ大のスターツル教授の肝臓移植手術
を受け、社会復帰するまでを、主に母親の目を通して描いたノンフィクション。
信念をもって臓器移植を推し進めたスターツル教授と、わが子を救おうとする
母親の献身的な祈りが命を救った。この訳本の出版記念に、臓器移植をはじめ
とする医療分野の出版や講演会開催などを目的とする「ザ・ギフト・オブ・ラ
イフ基金」(北嘉昭代表、電話06−991−6416)が設立された。この
本の印税はこの基金の活動費にあてられる。

#0005 dando    8901241817

◆結晶基板の上に他の結晶育てる 東大理学部
          89.01.18  夕刊 5頁 みんなの科学 写図無 (全421字)
 
  結晶基板の上に、構造の異なる他の結晶を成長させる新しい方法を、東大理
学部の小間(こま)篤教授らが開発に成功した。新しい構造の超伝導物質や超
高密度の集積回路などの開発につながると期待される。
 
 結晶成長には、超高真空の容器中で金属などを加熱、蒸発させ原子の霧を基
板上に付着させる「分子線エピタキシー」と呼ぶ方法が注目されているが、小
間教授らはこの改良法を研究。分子線エピタキシーは、基板表面の化学結合の
手に、他の結晶の原子が結び付いて成長する。これは鉄骨をつないでビルの上
階を重ねていくような方法で、結晶同士の構造が違うと、成長結晶に大きなゆ
がみが出るなどの欠点があった。
 
 改良法は、化学結合によらずに、分子と分子が引き合う弱い力(ファンデル
ワールス力)によって2つの結晶を結び付ける。特殊な処理をした半導体結晶
のガリウム・ヒ素の基板上に、1000分の数ミリのごく薄い結晶を積み重ね
た形で、結合の手がない2セレン化ニオブの層状結晶を成長させた。