Wat00080 幻の米

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  「 幻 の コ メ 」   (道新夕刊 S63.7.5 今日の話題より)
 「道産米はまずい」。こんな思い込みの裏側で、ササニシキ(宮城)、コシヒカリ
(新潟)はうまいコメ、だから「高くても仕方ない」と考えている人たちが存外多い。
 東京都内の「ササ・コシ」出回り量は約27万トン。全体の39%だが、主婦連の
調査によると、64%の奥さんが「うちはササ・コシを食べている」と回答したそう
だ。差し引き25%の人は、高いコメの暗示に引っかかっていたことになる。
 一般にコメの味はタンパク質と粘りを左右するアミロース、アミログラムで決まる
といわれる。しかし、最後の決め手はやはり舌。その舌もはなはだ心もとない訳だが
昨秋、その道のプロを集めた試食会で、ほぼ満票を集めた道産米があった。
 道立中央農試(空知管内長沼町)同上川農試(旭川)が共同開発した「上育397」
来年から普及にはいるが、日本のコメの味の標準といわれる滋賀県湖南産の「日本晴」
をしのぐ、というのだから心強い。
 安かろう、まずかろう−という道産米の”汚名”を晴らす時代が来たことになる。
心配は冷害。味を改良すると、どうしても低温障害を受けやすくなる。
 豊凶の差が激しいところから、道産米には「平年作がない」とも言われた。
が、耐冷性の研究も着々進んでいる。注目されているのは中国雲南省から持ち込んだ
品種。7−8月の平均気温が19度台で栽培されていたコメと、道産米を掛け合わせた
改良が上川農試で行われている。あと5年ほどで実用化される期待が高い。
 苗を育てたり、田植えは省略という直はん品種も出始めた。田んぼにいきなりタネを
まく。これが安定した収量をおさめ始めると、コメづくりの労働時間はいまの年間36
時間(10アール当たり、61年)から約22時間に短縮される。
 時まさに米価の季節−。本道稲作は押されっ放しだったが、うまくて、安い「幻の
コメ」をヘリコプターでまく時代が迫ってきた。府県ばかりがコメどころではなくなる。
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