Wat00030 あぶないエントロピー

#0000 ultra    8809022127


 フリートークにしては、内容が真面目すぎるし、原発コーナーは、顔を出
すのがおっかないしで、ウオッチに書かせて戴きます。元は、フリートーク
の人気番組(?)「お邪魔虫コーナー」の侍ニッポンさんとTOTO氏の会
話からヒントを得たものですので、そちらもご覧下さい。

 エントロピーという、あらゆる分野で勝手に使われ過ぎて、(ある宗教家
など、完全にエントロピー=エネルギーと思って使っているのを読んだこと
がある)何を指しているんだか、今やまるで分からなくなってしまった謎の
量についての論争の話です。

 エントロピーを、真面目に使ってもこのようにわけが分からなくなるので、
メタファーで使う時は、かなり気を付けないと必ず間違えます。では、本
論はレスポンスでのウルトラ久保田であった。




#0001 ultra    8809022128


 一時ほどではないですが、エントロピーという言葉を、自分の都合がいい
ように勝手に解釈して使った文章を今だ、時々見ます。

 「カオス」とか「無秩序」とか、よく分からぬメタファー(比喩)として
ではなくて、純粋科学的なエントロピー概念を武器に、社会や環境問題を取
り扱おうとしている好著に、槌田敦の「資源物理学入門」(NHKブックス)
と杉本大一郎の「エントロピー入門」(中公新書)が、あげられます。

 どちらも、物理学を基盤に同じ問題にアプローチしているのですが、この
二著、生命を生み出したこの地球の低エントロピー性がどこからくるか、と
いう根源の所で、実は言ってることが180度違うのです。

 簡単にいうと槌田氏は「水」根源説、杉本氏は「太陽」根源説で、それぞ
れの主張をそのまま引用すると、

 杉本:「化石燃料は過去の太陽エネルギーの、食糧は現在の太陽エネルギ
ーの低エントロピー性が固定されたものなのである」(p161)「光合成
において、木の葉から水が蒸散し、気化熱を奪うことが、原料に比べてエン
トロピーの低い製品を作ることの本質だと主張する人があるが、それは間違
っている」(p86)

 槌田:「太陽光は熱汚染源であって、クリーンというのは太陽崇拝という
宗教的誤解から生じたものである」(p133)「結局、地表であまり汚染
を意識しなくて済んだのは、この水の循環と対流が地表のエントロピーの掃
除を引き受けていたからである」(p164)

 という具合にまったく逆です。また、情報にエントロピー概念を導入する
ことについても、槌田氏は意味がないと否定しているのに比べ、杉本氏は「
情報化による社会全体としてのエントロピー的損得も、厳しく見積もって行
かねばならない」と述べ、肯定派です。

 ちゃんとフォローしてないので、もしかしたら、もうこの論争、終止符が
打たれているかも知れません。結果をご存じの方がおられたら教えて下さい。

 エントロピーなんてものは純粋に物理概念なので、計算すれば結果がすぐ
分かりそうなものですが、物理として厳密に使ってもこれだけの混乱が起き
得る概念なのです。

 ただ、イメージとしての「エントロピー」と言う言葉を使うと、「太陽」
も「水」も、クリーンぽくて「どちらも母なる低エントロピーの基」などと
いって話が進んでしまいそうです。やはり、物理の言葉を単にイメージだけ
を先走りさせて、日常語として使うことには、危険性が伴うのではと思い、
書いてみました。(なんとなく、すぐ反論が来そうだが・・・)

 by ウルトラ久保田であった。




#0002 sci1017  8809022317


 熱力学でも、情報理論でもエントロピー、
私も得体の知れないエントロピーという言葉を使う
のに躊躇します。ウルトラさんのお薦めに従って
これから勉強したいと思います。

                  こっぺい



#0003 sci1082  8809031111


 ウルトラ久保田さんは,脳死をやったり,グルメになったり本当に多才な方ですね.
今度はエントロピーですか.

 私の大学時代の先生で,「人類はいつかは滅亡する.なぜならエントロピー増大の
法則があるからだ.」とおっしゃっていた方がいましたけど.あの先生は簡単に単位
がでる,というので「エネルギー・円吐露比論」というのを受けたこともありました.
試験問題が「エントロピーを日本語で説明せよ.(円吐露比はダメ)」と,いうよう
な問題だったと思います.

 地球の低エントロピー性というのは,一言で言えば,「孤立した系ではない」とい
うことにあるのですから,「太陽」説に軍配が上がりそうですが,他の惑星に生命が
ないことを考えれば,「水」だって大事なんじゃないですか.そもそも,低エントロ
ピーという言葉で何を言いたいのかが問題ですよね.

 ちょっと話題がずれますが,「ビールジョッキの中の雲」の中には,「表面張力」
と「表面エネルギー」のどちらを使うかという話題があって,BOHREN先生は,
「分子同士の間で働いている力がもとになっているのだから,エネルギーよりは力の
ほうが分かりやすい」と,書いていました.環境問題を扱うのにエントロピーの概念
がどうしても必要なのでしょうか.なんとなく,難しそうな話をして,相手をねじ伏
せようというような姿勢が見えるのですが,このへんは問題の書を読んでいないので,
言い過ぎかな.

 同じ本(ビール)のなかに,「海はなぜ青いのか」というのがあって,レイリー卿
が,「空の青さを映しているのだ」と,言ったことがあったそうで,それに対してい
ろいろな角度から海の色を検討して「十分な説明は簡単には得られない」と書いてい
ますが,環境問題も社会問題も,簡単には説明できない種類の問題じゃないでしょう
か.

 情報のエントロピーというのは,考えていくうちに,たまたま物理のエントロピー
と同じ概念に至ったというんじゃなかったっけ.と考えながら,本を開いたら
「MAXWELL の魔物についてのWIENERの解釈」なんてのが出てきた.これも,「エネル
ギー・エントロピー論」に出てきたっけ.

大学で物理を教えているといっても熱力学は苦手なのよね.

                           菊地時夫




#0004 reader   8809050000


エントロピーという言葉を良く使う奴は余り信用できない。
出来れば使わない法がいいと思いますよ。
余り難しくない事を難しくいうのは止めてほしい。
本当に難しい事はなおさら簡単にいってほしい。
私は分りやすい方が好きだ。
じゃ!
今日はノイズが多いなー




#0005 reader   8809050919


「エントロピー」という単語のアクセントは「エン」にあって、
つまり「うんとこしょ」というかけ声と同じイントネーションで
言うべきなのに、わたしはいつもアクセント無しで、というか、
「どっこいしょ」のイントネーションで発音してしまい、しまった
しまったと反省するのであります。
科学記事に出て来るいろいろなカタカナ言葉も、アクセントまで
表記してもらえると、間違った発音をしてはずかしい思いをしなくて
すむんですがねえ。