Pol00217 湾岸戦争の背景を考える

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湾岸戦争はどうやら終ったみたいですね。とりあえず良かったと思いますが、アメ
リカが正義の味方だという顔をしているのには、どうもうさんくささを感じます。
湾岸戦争の背景や意味について、色んな情報が入っていますので、ご参考までにu
pします。いずれも長文なので、ご注意を!
                             アマナクニ


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 先日いきなりアメリカから送られてきたFAXを紹介します。発信したのは、昔
の友人で、現在ノースカロライナで味噌づくりをしている武井鏡憲さん。折返し電
話して聞いてみると、マスコミに載らないことだから仕方ないが、日本ではあまり
にもこういったことが知られていないようで、歯がゆく感じるということでした。
 アメリカの中からのこういった情報は貴重だと思うので、ここにも転載します。
                         <転載責任:アマナクニ>

           アメリカとイラクの戦争、そして
            日 本 の 皆 さ ま へ 
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               武 井 鏡 憲
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 アメリカ軍の戦略兵器によって、破壊されてゆくイラクを見るにつけ、第二次世
界大戦中の日本を思い出し、胸が締め付けられる思いがします。
 今回のアメリカ政府の狙いは、軍隊をサウジアラビアに常駐させ、イラクにかい
らい政権を置き、そうすることにより中東の石油の生産と価格の決定権を握り、冷
戦後の世界経済戦争のライバルである、かつての敗戦国、日本とドイツに対して優
位に立とうという戦略から出たものであり、本来、日本にとっては、ワナにはめら
れたと言っても過言ではありません。
 それなのに日本政府は、ごきげんとりヨロシク二つ返事で引き受けて、自衛隊派
遣だの軍事費を払うなどと、自分の金で自分の首を締めるとは、いったいどういう
つもりなのでしょう。
 今やアメリカ内部では、S&Lは崩壊し、大手銀行は倒産寸前、そしてリセッシ
ョンとトリプルパンチで、どうにも手のつけられないほどの崖っぷちだというのに
ブッシュ大統領は何も打つ手がなく、その無能ぶりを隠し国民の不満を外にそらす
ためにサダム・フセインを利用し、又そのツケを日本にも払わせるという手の込ん
だ演出ぶりです。
 アメリカ国民の世論は、相次ぐマスコミの戦争サポートキャンペーンで、完璧に
あおられて感情的になってきており、政府はこれを利用して、その不満を全てサダ
ム・フセイン、そして中東の石油を一番多く輸入している日本へとぶつけていって
います。
 90億ドルを払って、それだけで済むはずがありません。アメリカの世論を背景
に、これからどんどん請求書を送り続けるはずです。
 自由と民主主義という、たてまえのツギハギだらけのプロパガンダをうのみにし
アメリカ政府の裏にかくされた本音の部分を見ないと、気が付いた時には手遅れと
なります。
 アメリカには、本当の自由などというものはありませんし、民主主義もありませ
ん。全ては、裏で巧妙にコントロールされています。あるのは、個人主義というオ
ブラートで包まれたエゴイズムだけです。日本の方が、ある意味ではまだ民主的で
はないでしょうか?
 アメリカに住み、その国籍を持ちながら、それを利用し、政府と軍隊をコントロ
ール下に置き、国民の利益など気にもかけず、自分たちの利権と権力を拡張するこ
としか頭にない多国籍企業や国際金融資本といった一部の人々によって、富は独占
され、国民はすっかり骨抜きになり、奴隷化されていると言ってもいいでしょう。
 まさに、これこそエコノミック・ファシズムです。
 日本は、このままいくとアメリカの二の舞を踏み、マスコミを使ったプロパガン
ダにより、国民は自分の頭で考える能力を根こそぎ奪われ、ドラッグ漬けにされ、
主な大企業はバラ色のM&Aによってバラ売りにされて、その果てには捨てられて
ついには経済的植民地となり果てるだけです。これが未来のシナリオなのです。 
 今こそ日本は、自分の足で立ち、はっきりと世界に向かってアメリカからの独立
宣言を発するべき時です。そして独自の道を行くべきです。
 アメリカとの関係を断ち切ってでも、という強い覚悟が必要なのです。
 不必要にアメリカの国債を買わされることを拒否し、この国を本当のリセッショ
ンの渦の中にたたきこみ、アメリカ人民を目覚めさせ、真にこの国を愛する人達が
もう一度アメリカを自分たちの手に取り戻す手助けをせねばなりません。
 日本が腹を決めることが、世界を平和に導くことになるのです。
 いったい何故、こんなぜいたくな、浪費を極めた、借金漬けのアメリカン・ライ
フスタイルを守るという名目で、多くの将来ある若者とアラブ人の血が、流されな
くてはならないのでしょう。
 勇気をもってこれを拒否し、本当の幸せとは何かということを追求する時です。
 自分が生かされているということへの感謝を忘れてしまった人々の末路が、今の
アメリカに如実に現われています。これを良いお手本として、日本は学び、勇気を
もって正しい道へと足を進めるべきです。日本が長い歴史の中で培ってきた東洋の
和の心を、世界の良心に訴える時です。
 西洋人の侵略の歴史のフィナーレは、核戦争しかありません。彼らの哲学が、宗
教が、それを証明しています。
 日本人は白人ではなく、東洋の一島国の人間であることに、気づかねばなりませ
ん。そして誇りをもって、祖先が共有し伝え続けてきた日本の心に還るべきです。
たとえ貧しくとも、正しい心と感謝をもって生きることが、人類を恒久の平和へと
導く唯一の道であることは、今や明白です。
 歴史が生んだ、日本民族最大最後のカルマを、ここで消滅させようではありませ
んか!
 どうか、一日も早く、目を覚ましてください!
 自分たちが、無意識のうちに共有し、活用しているすばらしいものに気づいて下
さい!
 アメリカは、もはや死にました。亡霊を追いかけても、何も得られません。ただ
その死の中から、不死鳥のように蘇ってくるもののみが、この混乱した国を、本来
の使命へと導いていくことが出来るでしょう。
 日本の人々の本当の使命が、全うされますように!
 世界に真の平和が訪れますように!
                  (たけいあきのり:在ノースカロライナ)

--------------------<名前のない新聞3月号掲載予定>----------------------


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  以下、『名前のない新聞』3月号<特集「湾岸戦争と私をリンケージする」>
 に載せるインタビュー記事を、一足先にupします。長いので2つに分けます。
  宮嶋さんは長年、石油産業で働いておられた方で、現在は定年退職した後、大
 学講師などをされており、エネルギー評論家として『大量浪費社会』などの著書
 があります。また「たんぽぽ舎」の顧問でもあります。           

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              宮嶋信夫インタビュー
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           湾岸戦争の背景と大量浪費社会<1>
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           アメリカのワナにはまったイラク!?

  アメリカは湾岸戦争を、クウェートに侵攻したイラクを撤退させるためのもの
 で、いかにも正義の味方であるかのように主張し、日本のマスコミの論調もそう
 なっているわけですが、経過をよく見ると必ずしもそうではないことが分かりま
 す。まず昨年8月2日のクウェート侵攻の少し前に次のような事実があります。
  一つは、(クウェートがイラクの)ルメイラ油田の石油を盗掘したので金をよ
 こせと、イラクが要求してきたことが、7月18日のクウェート閣議で報告され
 ています。そしてこれは紛争の始まりであって、イラクはきっと攻め込んでくる
 だろうとクウェートは判断し、湾岸協力会議やアラブ連盟に調整を頼むと同時に
 アメリカに通告し、アメリカはクウェートを守ると内諾を与えています。また7
 月20日頃に、サダム・フセインがイラク軍に対して、クウェート侵攻の命令を
 下しましたが、それをつかんだアメリカの国防情報局は、大統領と国防総省に報
 告しているんです。
  ところがアメリカ政府は、そういう情報があるのにもかかわらず、7月31日
 の下院の外交委員会で中東担当国務次官補のケリーという人が、たとえイラクが
 クウェートに攻め込んでも、アメリカはクウェートへの防衛上の責任は負わない
 から軍事力を行使しないと、はっきり証言しているんです。そのニュースはその
 日のうちにBBCに載り、またフィナンシャル・タイムスが報道しました。これ
 に関して、8月の段階でカックバーンという評論家は「このケリー証言は、サダ
 ム・フセインに対して、クウェート侵攻にGOサインを出した」と言っているの
 です。
  本来ならば、フセイン政権がクウェートに侵攻しようという危険が高まった時
 には、軍事介入をほのめかして警告し、事前に食い止めるのがアメリカの取るべ
 き措置だったわけです。しかし逆にアメリカは、侵攻を黙認するようなことをし
 た上で、侵攻したとたんにチェイニー国防長官が、元々米軍が来ることに反対の
 空気が強かったサウジアラビアへ行き、イラクは次にはサウジに侵攻してくるぞ
 と説得し、軍を派遣したのです。
  その時点で、イラクがサウジに侵攻してくる可能性がどれくらいあったかとい
 うと、アメリカはクウェート占領後にイラク軍がサウジとの国境地帯に軍を展開
 したことを根拠にしていますが、国境にそって軍を置くのはある意味では当然の
 ことです。また元々アメリカは軍事的にサウジを防衛するという密約を持ってい
 て、フセイン政権はしばしばそれを非難しているんです。と考えると、結局アメ
 リカがイラクのクウェート侵攻を誘導し、それを口実にして米軍をサウジに派兵
 したといってもいいことになります。
  しかもその段階での派兵は、サウジへの侵攻がアメリカとの戦争につながるこ
 とを示す程度の象徴的な規模の軍隊派遣でもよかったのに、最初から十何万もの
 兵力を動員しています。
  また11月末から12月初めに、アメリカ議会で大変な論争がありました。そ
 れはクローという前任の統合参謀本部議長が、‥‥その前任のジョーンズもそう
 ですが、もしイラクを撤退させようと思うなら、経済制裁だけに限るべきで、但
 しそれは数カ月ではなく最低1年以上はやるべきだ。そうすれば必ず平和的に撤
 退させられると主張しました。その理由は、食糧とかだけではなく、航空機やミ
 サイルのパーツや航空潤滑油が不足するからだというのです。それに対してチェ
 イニーやベーカー国務長官は、長期間のクウェート占領が続けば、クウェートに
 住んでいる人が苦しむし、同盟国や第三世界が経済的に参ってしまう。更に重要
 なことは、それだけの時間をかけると、戦争が起きた時に米軍の犠牲者が増える
 と、頑強に戦争するべしと主張したんです。つまり、ブッシュ政権の中の軍事専
 門家にすら反対意見があったといういきさつがあるのに、いくつかの選択を迫ら
 れる節目では、常に戦争につながるような道ばかりを選んできているわけです。

            背景にあるアメリカの中東政策

  その背景には、イラン・イラク戦争でアメリカがイラクを支持してきたのと同
 じ狙いがあります。つまりイラン革命では、当時もっとも親米的だったパーレビ
 政権が倒され、石油資源の温存政策を取りました。またイスラム革命を他のアラ
 ブ世界に呼びかけるという、まさにアメリカの意図に反した政権がイランに出来
 たわけで、それに対しアメリカは、サダム・フセイン政権に軍事援助をし、イラ
 ンに対しては世界的な禁輸同盟を結びました。それが今度はクウェート侵攻によ
 って、アメリカの石油権益を侵す行動をとったイラクに対して、やはりフセイン
 政権を支える軍事力をつぶすことがアメリカの狙いになったのです。
  カーター政権の特別補佐官だったブレジンスキーがはっきり言っているのは、
 オイルフロー(石油の流れ)を確保するのが、アメリカの中東政策の基本的な目
 的だということです。それもアメリカが望む通りの安い価格で、思うままに潤沢
 な供給構造を維持するというのが狙いなのです。
  その前提となるのは、第1次・第2次オイルショックで、石油価格が大幅に上
 がり、アメリカはもちろん先進諸国・第三世界がたいへんなダメージを受けたと
 いうことと、価格暴騰により西側の同盟に亀裂が入り、アメリカの指導権が失わ
 れていったことがあります。ヨーロッパも日本も、アメリカとは関係なく独自に
 産油国にアプローチして買うという、アメリカの中東政策が瓦解するような構造
 ができてしまい、それを通じてアメリカの世界的な政治上・経済上のへゲモニー
 が崩壊する状況となったのです。
  アメリカは、そういうことを二度と繰り返させないために、アメリカのイニシ
 アティブで石油価格を安く抑えるようと努めてきました。アメリカの国務省はク
 ウェートに深い関係を作って、OPECの決議を越えて石油を増産させ、原油価
 格を引き下げるということをずっとやって来たんです。元々クウェートは海外資
 産だけで一千億ドルも持っていて、投資収入が石油収入を越えるほどの金持ち国
 なので、石油を増産しなければならないような理由は何一つないにもかかわらず
 です。
  その結果、1986年頃に原油価格が大幅に下がり、日本の輸入価格もピーク
 の頃の3分の1以下にまで下がりました。それは世界的な需給関係が緩和しただ
 けでなく、OPECが決めた生産枠をクウェートとアラブ首長国連邦が常に破る
 ということによるもので、それはアメリカのイニシアティブの下で行なわれてき
 たんです。                          <つづく>


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              宮嶋信夫インタビュー
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           湾岸戦争の背景と大量浪費社会<2>
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         力で石油資源を奪い取るのがアメリカの戦略

  それだけではなく、第2次オイルショック以降、アメリカの世界戦略は大きく
 転換しました。それは何かというと、1980年にできたカータードクトリンで
 すが、中東で石油供給の不安を引き起こすような状況になったら、アメリカは軍
 事力で介入するというのが核心になっているのです。そしてそのドクトリンに基
 づいてRDという緊急展開軍が作られ、その後名前は変わりましたが、いずれに
 せよ中東を対象とした軍事介入のための軍事力増強体制が出来上がった。今回の
 派兵はそれをデザイン通りに具体化したものだと、8月20日にブレジンスキー
 が米誌で指摘しています。
  つまりアメリカは安い石油を大量に供給させるため、アメリカに敵対的な政権
 の存在を許さない。そういう政権は軍事力によってつぶしていくという戦略を、
 1980年以降ずっと持っていたわけです。
  今回の軍事力行使に反対したクローとか、あるいはシュレジンジャーなどは、
 軍事的には勝つことはできるが、長期的に見ると中東はより不安定になり政治的
 混迷が深まるだろうと、こぞって主張しています。それに対してブッシュ政権は
 サウジに戦争後も長期的に軍隊を置き、その軍事力を通して中東全域を支配する
 ことができるという見通しを持っているんです。
  もう一つ大きな要素は、ソ連が後退してしまったということです。今度の軍事
 介入を認める国連決議を見ても、ソ連は30億ドルで賛成票を売り、中国も1億
 数千万ドルのIMF借款と天安門事件以来の国際的な孤立回復の見返りに棄権に
 回りました。ソ連が西側の援助なしには国内経済が持たない状況の下では、アメ
 リカに正面から反対する国は存在しなくなり、国連は本来の機能を失って、アメ
 リカの政策を追認する機構(トゥール)に変わってしまったのが現状です。  
  一方ブッシュ政権は、今年だけで3千億ドルという膨大な財政赤字の下で軍事
 行動をやっています。そのために、サウジやクウェートや日本に金を出させるこ
 とで戦争を続けようとしており、日本に対しては、アメリカ以上に中東の石油に
 依存しているのだから、日本は金を出すべきだと、アマコスト駐日大使が小沢(
 自民党幹事長)を脅かしています。しかし今回の出兵は、中東の石油権益をアメ
 リカの指導下に置き、石油の安定供給をアメリカの軍事力によって確保しようと
 いう狙いなのです。従って日本が取るべき道は、アメリカの言いなりになるので
 はなく、相互依存の関係によって平和的に石油を輸入するということで、軍事力
 によって石油資源をいわば奪い取ってくることに対しては批判的な視点が必要で
 す。

          地球の許容能力を超えた浪費社会のツケ

  現在のアメリカやヨーロッパ、日本のエネルギー需給構造は、非常にいびつに
 なっています。第2次大戦までは基本的に各国はエネルギーを自給しており、不
 足しているごく一部、1〜2割を海外から輸入していたんです。アメリカでも戦
 前は石油を輸出していたのに、今では50%を輸入に依存している。これは先進
 国のエネルギー消費がものすごく増えてきた結果で、例えば日本の今のエネルギ
 ー消費量は石油換算で1年間に約5億klですが、これは1900年当時に全世
 界が消費した量なんです。中東の側から言うと50年,100年後には枯渇する
 かもしらない石油の資源を、無理矢理に奪い取って来なければまかない切れない
 ような構造に、先進国の経済がなってしまっているんです。
  では、それほどまでの大量消費構造が何によってできたかといえば、1960
 〜1970年代の消費財から生産財を含む大量生産の構造、そしてモータリゼー
 ションに一番の原因があります。それをえぐり、地球環境の許容能力を超える程
 になっているエネルギーの浪費のシステムを改めていくことが、中東への依存度
 を減らし、また侵略的な方法によって石油を奪い取ってくるような構造を改める
 契機になるでしょう。
 −−−これほどまでの浪費社会になってきたのは、石油という要素が大きいんで
 しょうか?
 宮嶋■ というより、石油の値段が安かったからです。中東の石油を安く使うシ
 ステムが作られたから。石油の値段が上がった第2次オイルショック以降は、石
 油の消費量が大幅に下がりました。ピークに比べると3分の2くらいに減りまし
 たが、それでも別に国民生活に支障はなかったし、むしろ空気はきれいになり、
 ゴミも減ったんです。そういうことを私たちは体験しているわけです。ところが
 1986年以降、石油が安くなると、石油の消費だけでなく電力も増えてきたん
 です。
 −−−石油の値段しだいで世の中が変わってきたわけですね。ところで日本人一
 人あたり1万円づつを米軍にカンパするという政府の方針があるわけですが、僕
 達に何ができるとお考えですか?
 宮嶋■ まず今の浪費構造を改めるために、生活のあり方から産業構造から改め
 るということと、産油国と協議の上で友好的な関係の中で石油を大切に使うとい
 うことでしょうね。
 −−−しかし日本の企業を見ていると、とにかく安ければいくらでも使うという
 儲け第一主義ですから、戦争で石油の値段が上がることを期待するしかないよう
 な気もします。
 宮嶋■ それは、軍事的に支配することによって石油を安くするという発想と表
 裏の関係だと思いますね。確かにプライスメカニズムはそういう影響を持ちます
 が、やはりビジョンとしては地球が許容できないほどのエネルギーの使い方を根
 本的に改めるような方向をめざしていかなければならないでしょう。

                    (みやじまのぶお/聞き手:浜田光)

 ----------------------<名前のない新聞3月号より>----------------------


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     在米日本人グループ「バークレイKAI」からの緊急報告文集
             『Peace Now!』
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  カリフォルニアのバークレイ周辺に住む日本人たちの集まり「バークレイKA
 I」が作った文集『Peace Now!』を紹介します。

  1月16日、アメリカのイラクへの攻撃に強いショックを受けた日本人のグル
 ープで、戦争への思いを分かち合い、深めあい、行動していくための集まりとし
 て「KAI」というグループがつくられました。「アメリカ人の80%以上が戦
 争支持」という報道ばかりが流れる日本に、全米でもっともリベラルなベイエリ
 アの様子を、生の声で伝えたいという気持ちから、KAIでは緊急報告文集を作
 成。このほど日本に送られてきたので、その中からいくつかを紹介していきたい
 と思います。

  なおKAIでは、文集作成のほかに、次の3つのプロジェクトをスタートして
 いるということです。

 「アラブ研究会」=イラクの立場、アラブの歴史、イスラエル問題など、中近東
   のことは知らないことばかり。アメリカ側の情報だけでは決して真実が見え
   てこないので、湾岸危機の背景やアラブ世界についての勉強会を始める。
 「地球仏教会」=内なる平和とソトなる平和のつながりについて学ぶため、欧米
   で「行動する仏教」のリーダーとして名高い、ベトナム出身のグローバルな
   仏教家、ティク・ナット・ハーンの著作を中心に勉強する。
 「ビデオ制作」=サンフランシスコやバークレイの反戦運動、平和運動の様子を
   ビデオでまとめる。日本でプロテストを考える人々への刺激になって参考に
   して頂けたら。

  このビデオは、すでに完成し、近々送られてくる予定です。上映会を開く予定
 名のでお楽しみに!

  文集『Peace Now!』およびビデオについての問い合わせは、メール
 でアマナクニまで。

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 おっと、サイエンスネットではメールがつかえませんね。
 電話でどうぞ。0423−24−4534:アマナクニ、です。


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    『Peace Now!』=バークレイKAIの緊急報告文集より
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            アメリカがイラクと戦う理由
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  ブッシュ政権の言い分を要約すると、下記のようになる。

  「領土の主権に関して、イラクは国際法を破っている。フセインは人間の尊厳
 など顧みない乱暴で冷酷な軍事独裁者であり、政治的にも軍事的にも大きな影響
 を持ち、その野望は国際間の秩序と安定を脅かすものであり、まさに現代のヒッ
 トラーである。ほうっておけば、より多くの領土を占領する恐れがあり、無条件
 の即時撤退以外は認められない。」

  しかしこの理由は、多くの矛盾をはらんでいる。

 (1)国際法や国連の決議がそれほど重要ならば、イスラエルのウエストバンク
 (西岸)侵略に関しては、なぜ目をつぶるのか。またサンデニスタ政権との戦争
 時に、ニカラグアの港に機雷を敷設した事実が国際裁判によって不法であるとさ
 れたにも関わらず、アメリカはそれを無視した。またCIAに雇われていたパナ
 マのノリエガ将軍は、その政策がブッシュ政権を苛立たせたために(たった一人
 のこの男を逮捕するために)、合法的に軍をパナマに送り、しっかり侵略してし
 まった。パナマはれっきとした独立国であるにも関わらずである。
                                     
 (2)凶暴な独裁者とは話もできないのなら、例えばシリアのハファーズ、アサ
 ドはどうだ。彼はレバノンを軍事力で占領し、その人権侵害の記録は恐らくフセ
 インのそれよりもひどいものだとも言われている。またフセインのような独裁者
 を認めないのなら、中国の天安門事件での残酷な独裁政治を、どうして黙認でき
 るのか。(制裁などほとんどなしである。人口の多い中国は、将来アメリカのよ
 い貿易相手となりえるから、あまり強く言えない。)

 (3)イラン−イラクの8年戦争で、アメリカは兵器をイラクに売っていたので
 ある。その事実をアメリカ政府は黙認していた。(当時はイランと不仲だったア
 メリカも、あの時だけはイランを倒すのにフセインの味方をしていたわけだ。)

 (4)イラクがクウェートを侵略した時に、アメリカは制裁を加えたが、その効
 果が出る以前に、突然地上部隊の数を倍にし、あっというまに攻撃体制に入って
 しまった。

  ブッシュ政権は、このような質問に答えていない。彼の手の込んだプロパガン
 ダなどで真の動機をつかむのは難しい。

  北米、日本、ヨーロッパは、中近東からの安くて豊富なオイルによってもたら
 された経済の恩恵を受けている。いずれにしても安いオイルを一番たよりにして
 いるのは、非能率的にオイルを消耗しているアメリカなのである。日本やヨーロ
 ッパは、ペルシャ湾からずっと大量のオイルを購入しているが、税制その他を通
 してエネルギー資源の値段はずっと高く、従って比較的能率よく使われている。

  現在アメリカの経済は後退気味、要するに不況である。
  もしここでオイルの値段が上がり、ヨーロッパや日本が不況に突入したら、こ
 れらの国々はアメリカの製品を輸入することができなくなるので、一番ダメージ
 を受けるのは、ただでさえ経済状態の悪いアメリカである。さらにここで非常に
 重要なのは、莫大なオイルダラー(産油国が保有しているドル)がアメリカに投
 資されている事実である。外国からの投資は、アメリカの経済を支えるのに重大
 な役割を果している。だからこそフセインに中近東の実権を握られることは、ア
 メリカの悪夢なのである。
  イラン−イラク戦争で(アメリカの武器などで)とてつもない軍事力を持って
 しまったイラクの存在は、イスラエルにとってもまた脅威であるから、早いとこ
 ろやってしまえというところであろう。

  書き出したらきりがないほど複雑なのだが、イラクがクウェートを侵攻する前
 エイプリル・グラスピという米大使が、極秘にイラクの代表たちと会談した。そ
 の会談でグラスピは、ワシントンからの直言として、もしイラクがクウェートに
 侵攻しても、それはアラブ諸国同士の問題としてとらえる、アメリカは干渉しな
 いと伝えたのである。
  これはイラク側の記録として発表され、各国のジャーナリズムやまたアメリカ
 の国会などでも取り上げられたが、ブッシュ政権からは何の回答もない。
  しかしこれは、ワシントンがイラクに暗黙のゴーサインを出したと解釈できな
 いだろうか?

  私はこの話を聞いた時、まさに真珠湾を思い出した。軍事的に大きくなりすぎ
 たイラクを倒すには、大衆が納得する理由が必要である。しかもアメリカがイラ
 クに勝てば、アメリカ軍をアラブに駐屯させることができる。アメリカの軍事力
 におののいて、アラブ諸国もしばらくは戦争をしなくなるだろう。イスラエルも
 安泰だ。オイルだってコントロールできる。しかし何と言ってもこんなにソ連に
 近いところに軍隊を置いておけば便利。今は弱体化しているソ連。すきあらばと
 アメリカが考えても不思議はないだろう。アメリカの意図が読めてきたソ連は、
 だから急速に和平交渉を進めているのではないだろうか?

  世界一の負債国が世界を軍事力でコントロールし、日本とヨーロッパに(守っ
 てあげているからという理由で)請求書を送る。これではまるで「あんたの店を
 守ってやるから、毎月金を納めてもらおうじゃないか、えっ?」というヤクザと
 一緒ではないか。納めなければいつでも軍隊で脅かすことができる!? しかし日
 本もヨーロッパも、結局はアメリカへの輸出で儲けた国である。そのあがりをア
 メリカに納めるようなものか!?

  話は元に戻るが、アラブの国境というのは、オスマントルコ帝国によるアラブ
 統治の崩壊後、英国の都合で勝手に線を引かれたようなものである。1920年
 代の石油発見がアラブにもたらしたものは、石油が発見された土地のごく少数の
 人達が巨万の富を所持するようになったことである。1950年代のスエズ戦争
 以降イギリスが退いて、結局アメリカが世界一の産油国であるサウジアラビアと
 組んでオイルの値段と市場供給のコントロールをするようになった。石油産油国
 が生んだ富はほとんど西側諸国に投資され、残りのわずかな余剰が石油に恵まれ
 ないエジプト、シリアへ投資された。今回の湾岸戦争でイラクを支持する人々は
 上記のような長年の植民地政策に反対するものである。

 --------------------<転載:アマナクニ/転載奨励>----------------------