Pol00206 公務員の不法行為と損害賠償の責任について

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 公務員の職務上の不法行為に対する損害の賠償責任について

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公務員の損害賠償責任について・・・・・・・・・・・・・・・・αマトン  

 日本では、公務員が職務上不法行為を働いた場合、国または地方公共団体が損
害賠償の責任を負い、その公務員は損害賠償責任を負わないことになっています
【国家賠償法第1条】。民間の会社員が職務上不法行為を働いた場合は、本人と
会社が連帯して損害賠償責任を負います【民法715条、709条】。

 イギリスでは、昔は公務員の不法行為についてはその公務員のみが損害賠償責
任を負うことになっていましたが、大陸法系(イギリスなどの島国を除いたヨー
ロッパ大陸)では公務員の不法行為については公務員も国も損害賠償責任を負わ
ないことになっていました。日本は、ほぼ大陸法系ですが、公権力の行使に当た
らない行為についての公務員の不法行為については、国または地方公共団体が損
害賠償の責任を負うことになっていました。それが戦後、公権力の行使に当たる
行為についての公務員の不法行為についても、国家賠償法により国または地方公
共団体が損害賠償の責任を負うことになったのです。

 旧制度の思想的な背景としては、たぶん、“公権力の行使には時には過ちもあ
るだろうけれど、国民のためにすることだからそれくらいは我慢してほしい”と
か、“お上のすることに間違いなどない”とか、“必要がある場合のみ国の慈悲
で賠償をすればよく、権利として認める必要はない”といったものがあったのだ
ろうと思います。制度的には、司法裁判所が公権力の行使についての審査権を持
たなかったため、訴訟で賠償を求めることができませんでした【旧憲法61条】。
公権力の行使について審査するため行政裁判所がありましたが、賠償については
裁判権がありませんでした【旧行政裁判所法16条】。

 現制度の思想的な背景は、“国が賠償するから十分救済される”とか、“公務
員個人に賠償責任を負わせると、萎縮して、十分な公権力の行使ができなくなる
おそれがある”とか、“賠償額が巨額になることがある”とかいったものがある
と思います。

 私は、公権力の乱用を抑止するためには、公務員の不法行為について本人に損
害賠償の責任を負わせることが有効だと思います。不法行為の損害賠償責任とい
うものは、直接には被害者を救済することが目的ですが、不法行為の抑止効果も
無視することは出来ないと思います。悪いことをしても責任を負わなくてよいと
なれば、つい悪いことをしたくなるのが人間ですから。