nat00065 会議>琵琶湖きれいかきたないか

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 話はだいぶ前に戻りやすが、今年の3月8日、「琵琶湖が汚れたのは
琵琶湖総合開発のせい」とする「琵琶湖環境権訴訟」の判決が出ました。

 結果は原告側住民の全面敗訴でした。
 裁判所側の意見は、簡単に言えば、なんと「琵琶湖はきれいだ」ということ
でした。

 アオコ、淡水赤潮に加えて時には悪臭さえ出る湖が「きれい」なんですねえ!
法律の世界では・・・

 皆様いかがお考えで?
                          阿波六吉

#0001 sci1060  8906150229

そもそものことの起こりは・・・・・

 琵琶湖もヨシアシってえはなし

 その昔、日本てえお国は「葦原の中津国」とかってえ名前があったくらい、
ヨシ(アシ)がいっぱい生えてたんだそうです。

 このヨシってえのはとってもありがてえ植物でして、人間様にはヨシズを作らし
てくれますし、その根元では水流が和らぐし、隠れ家にもなるってんで、いろいろ
な小動物や、魚の稚魚・卵なんてえのが集まるってことになるんだそうで。特に
その根元の泥んこの中はプランクトンだのいろいろな土壌生物がたくさんいて、
水をかなり浄化してくれるんでやす。また湖辺の侵食も防いでくれやす。

 ヨシを含めて水草が繁ってる地域ってえのは、その水質浄化能力はすさまじいも
んで、ヨシに覆われた川では、上流に生活排水を流すと、下流ではリン、窒素が激
減してしまうんですねえ。
 その研究は日本でも外国でも行われ広く知られているんだそうで。
 西ドイツのベルリンてえ都なんざあ、ヨシは大事だってんで、「ヨシ群落保護法」
なんてえのが出来て、許可なく切ったり折ったりはいけねえのは勿論、近くに船を
近付けてもいけねえってえ、もう下にもおかねえ扱いてえやつで。

 このようにヨシは、他の水草や泥んこと共に複合体を作り、琵琶湖の浄化に寄与
してきました。

 ところが1972年から国土庁、水資源開発公団、滋賀県なんてえ連中が、こう
した琵琶湖の湖辺、流入河川、内湖(琵琶湖沿岸の湖沼)を対象に琵琶湖総合開発
計画ってえのを始めたんでやすねえ。
 これが琵琶湖は湖辺をコンクリの堤防で固め、河川は三面コンクリート張り、
内湖は埋め立てるというやり方で、ヨシを始め、水草と泥の複合帯を次々となく
してしまいました。

 当然、窒素とリンが多くなり、琵琶湖は富栄養化して汚れてしまいました。
ところが、時の知事、武村正義(現代議士)はこの現象を、「住民の生活排水の
せい」として、「無燐洗剤条例」を作り、行政の事業の責任は完全に握りつぶし
てしまったのですねえ、これが。
 ちなみにこの「無燐洗剤条例」は各方面から絶賛を受け、「環境の武村」を売り
物にして代議士になった武村氏の名声を確固たる物にしました。

 さて「環境の武村」さんですから、さぞや心を痛めて、琵琶湖総合開発計画を
止めるかと思えばさにあらず。しかし一方では、武村氏はヨシの浄化能力は認め
ました。
 そこで武村氏は「琵琶湖総合開発計画は環境にも配慮して行うから、ヨシは
かえってより一層増えるようにしてみせる。」と宣言しました。

 さて!武村知事のとったヨシ倍増計画とは・・・・・!
 待て!次号!
                            阿波六吉

#0002 sci1060  8906160624

 武村県政が行ったヨシの保護対策の第一弾として、なんとコンクリートの堤防の
上にヨシの鉢植えを並べたのでした。
 先述のように、ヨシの浄水作用は、ヨシ−泥複合体となってこそ初めて可能なも
のなのです。
 当然文句はでました。
 すると次々と汲めども尽きぬアイデアよろしく、堤防に穴を明け、穴の中にヨシ
を点々と植えたり、プラスチックのザルのような物を浮かべて、ヨシの水栽培をし
たりと、本気かと思えるようなことを大の大人が「ヨシ原保護のアイデア」として
やるんですよね!

 かくて琵琶湖のヨシは激減しました。特に南湖(琵琶湖大橋の南側)は水深が浅く、
また早くから開発が進んでおり、富栄養化に悪臭、アオコ、赤潮などが発生してしま
うようになりました。

 しかし、滋賀県は琵琶湖の燐・窒素の測定値がどちらかといえば横ばいか、やや
下がっているようにも見える(折れ線グラフにありがちなこと)ため、「琵琶湖は
県の努力によって、きれいになった」と主張します。以前見られなかったアオコや
赤潮の発生は、汚染のせいだという証拠が無い・・・というのです。

 その後、滋賀県知事になった稲葉氏は、総合開発の推進派ではありますが、琵琶
湖の状況にさすがに危機感を感じ、琵琶湖はきれいだという環境室の職員に対し
「今の琵琶湖をよく見てみい。アオコが出てるのに水質が横ばいとは、なにゆうと
んのや。水質は数字だけではないだろう。」としかりつけたそうです。

 しかし裁判書は、「琵琶湖は危機的状況にない」として、この滋賀県知事にしかり
つけられた担当者と同じ判断を下しました。

 また裁判所は、水草の浄化効果について「明らかに理由が無い」として、ヨシの
浄水能力を否定する独自の「学説」までだしてくれました。

 なんせ「プランクトン発生のメカニズムが立証されなくてはならない」てえんだ
から話になりません。こんなもの学者さんが集まったって分からないもんなんです
から。

 こんな琵琶湖の状況ですが、最近、琵琶湖のあまりの惨状に、稲葉知事の発言に
もあるように、滋賀県の態度が若干変わってきました。現在はどちらかといえば
琵琶湖をネタにやりたい放題やってる国や水資源開発公団に、ついて行けなくなっ
ている状況のようです。

 まあ、なんの役にもたたねえ工事でも、儲けにゃなるってんだからこまったもん
でやす。
    ここらでひと休みしますんで、琵琶湖についてのご意見、情報をどーぞ!
                            阿波六吉

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 既に述べたように壊滅的状況を迎えつつある琵琶湖の水質でござるが、
ここは何とかいたさねばなるまいと、以下のような計画が登場してきまし
たれば、隊員諸閣下にご報告の程を。

 「かいつぶりプラン」というパンフレットからの抜粋にござる。

 これ転載奨励品

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   パンフレット
   <<琵琶湖復活プロジェクト・かいつぶりプラン>>
                                                より

    「琵琶湖復活プロジェクト全国懇談会」の目的、
    及び「琵琶湖救済基金」について

 1987年、琵琶湖南湖の全域に有害プランクトン(アオコ)の大発生が
あり、毎年発生するようになりました。また以前からの赤潮の発生もあり、
臭いにおいも続いています。さらに有害物質その他の流入、アユを殺す細菌
の発生など、湖の危機は深刻化しています。であるにもかかわらず、その対
策が根本からたてられないまま、今日に至っています。それどころか、琵琶
湖の危機を政治的に利用したり、アオコ発生の原因・責任を家庭下水・住民
にしたりする愚かしい動きもあります。これらによって、いっそう根本から
の対策が遅れ、水質悪化を早めてしまいました。つまり、有害な土木工事・
沿岸隊の人工かがどんどんすすみ、湖の自浄力の破壊は、その極に達してし
まいました。
 だからといって、アオコその他を、「それみたことか」といっているだけ
でよいのでしょうか。琵琶湖は私達の生命源なのですから、湖を破壊された
としても、その復活への努力をすべきだと思います。開発の巨大な力と開発
行政が琵琶湖をきれいにするといって、結局はつぶしてしまったので、あと
は住民・専門家が泣き泣きでも尻ぬぐいをするしかないでしょう。
 私たちは、湖の生態系を復元して浄化力を高め、魚などの生き物を蘇らせ、
水の育む文化と、湖の経済的価値を高めたいと願っています。そのためには、
分水嶺から琵琶湖までの一切、諸流入物の処理問題、複雑な生態系になって
いる沿岸帯の一つ一つの流域の特殊性、湖底の危機、これら一切の修復・再
生を考えて、「琵琶湖の復活案」を作成します。つまり復活案の「青写真」
をつくって、各界各方面流域住民にみてもらって、根本からの復活への理解
を求めようと思っています。そのことが十数年来、琵琶湖と取り組み、警告
を発しつづけてきた私達の義務でしょう。
 今、一刻を争うほどに湖はせっぱ詰まっています。どうか全国的な協力を
お願いします。なお、「復活案」の作成には、精密な調査・研究・実験が必
要であり、多くの有志の努力もいります。皆様のアドヴァイスも欲しい。さ
らに多額の資金がいります。どうか全国の皆様による「琵琶湖救済基金」へ
の御参加をお願いします。

           1989年12月
                  琵琶湖復活プロジェクト全国懇談会

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                     以上転載・阿波六吉

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 お次は上述の琵琶湖復活プロジェクトの募金のお願いにござる。

 同じく転載奨励品

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     千円(一口)で琵琶湖を救って下さい
   <琵琶湖救済事業の青写真づくりにご協力を>

 「かいつぶりプラン」にみる通り、一千三百万人の命の湖、そして水産
業も湖の文化も末期症状です。まったく駄目になってから大騒ぎになる、
とサジを投げている向きもあります。でもなんとか救う方法はないものか。
この湖を政治や利己的に利用する動きがあり、日本経済とのからみ、開発
行政の体質、開発文明観、科学万能論他、を解決しないことには琵琶湖は
根本から救えませんが、とにかく急がれることは、住民・研究者でできる
ところから取りかかることです。それは先に提起した「琵琶湖復活」プラ
ンの青写真作りです。一年の下調査で、その感触を得ました。しかし本格
的作成には、精密な調査、実験研究が必要です。(「かいつぶりプラン」
参照)研究者のポケットマネーではおっつきません。まとまった基金がい
ります。
 皆さんから、千円(一口)琵琶湖基金運動を広げていただけないでしょ
うか。友人へ頼んで下さい。青写真作成の進行状況はその度に知らせます。
又、全国の湖沼河川に自浄力を復活さす法律づくり運動も準備中です。
 なお、アオコ国際会議に皆さんから数百万円が寄せられて、会議は成功
し、アオコ・汚染の解決の手がかりを得ました。ありがとうございました。

                  1989年12月
     琵琶湖復活プロジェクト全国懇談会 
                    事務局 辻田啓志、鈴木紀雄

 送金先:  郵便振込 大阪9−107994 琵琶湖復活全国懇
 連絡先:  高槻市富田町1−11−1 辻田啓志

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                     転載・阿波六吉