nat00190 会議:交通>船舶の部屋

#0000 sci3487  9005030540

 環境保護のための、船舶に関する討論を行う会議室です。
                                    NH3

#0001 sci3487  9005030541

 船とは、水に支持されつつ、その上を走る乗り物です。この性格のゆえ、概して速度
が遅いものの、巨大なペイロードを一度に輸送することができ、経済的です。また陸上
や空中を走る乗り物と比べてトルクが少なくて済むため、燃料効率が素晴らしく高く、
したがって大気汚染の度合いが少ないのも特長です。
 ところが、環境に対して一見フレンドリーに見える船舶にも重大な欠点があります。
海洋汚染です。生命の宝庫である海洋の環境破壊は、絶対に避けなければなりません。
 数々のメリットを持つ船舶。今や必要不可欠の輸送手段となっていますが、もう少し
改良の余地がありそうです。海にやさしい船の実現に向けて、ちょっと考えてみません
か?
                                    NH3

#0002 sci3487  9005030541

 5月2日の日本経済新聞によると、現在、二重底タンカーの建造がブームになってい
るそうです。
 昨年3月のアラスカ湾原油流出事故への反省から、同11月米下院はタンカーの二重
底化を義務づける決議を行ないました。日本での二重底ブームは、造船の発注者がこれ
に刺激されたのが原因のようですが、一方の造船業界は、「製造効率が悪い」(石川島
播磨)、「人手が足りない」(三井造船)などと、あまり乗り気ではありません。また
二重底化の意義そのものを疑問視する声もあります。(二重底船は単底船に比べ、船体
重量が大幅にアップしますが、2枚のボディの間の空間により浮力もアップするため、
普段はこれで問題ありません。しかし、万一外ボディが損傷し、空間に海水が侵入した
場合、この浮力は失われますから、最悪の場合、沈没の可能性があります。)米上院も
義務化には慎重です。

 私も、タンカーを二重底にして原油の流出を防止しようという消極的な考えには、賛
成できません。不都合が多い上に、流出を防げるという確証もないのですから、ほとん
ど無意味だと思います。
                                    NH3

#0003 sci3487  9005030542

 皆さん、19世紀初め頃の船と、20世紀も末の現在の多くの船とを比べても、基本
的にほとんど変化がないと思いませんか? 船尾付近に設けられたスクリューと、たっ
た1枚のラダー(舵)。船体の巨大化と重量の増大、また船舶の絶対数の大幅な増加に
もかかわらず、運動性はほとんど向上していないわけです。走行中の大型船は事故を回
避するために船体を迅速に制御するすべを持たないのです。これは恐ろしいことだと思
いませんか? (交通量の多い道路を、重量オーバーのダンプが猛スピードで走ってい
る場面を想像してみてください。)
 そこで提案です。(以前の私の書き込みと重複しますが。)主に戦闘機の運動性向上
のために開発されたCCV技術を、船舶にも積極的に転用すべきではないでしょうか。
具体的には、例えば、複数のラダーや水中ブースタを船体各所に取付け、これをコンピ
ュータによって統括的に細かく制御することで、船体の運動性を向上させるといったも
のです。操船の負担が軽減するため、乗組員は安全管理に専念することが出来るように
なります。障害物との衝突を未然に防ぐことも容易になり、船舶の安全性は格段に高ま
るはずです。環境に致命的な被害をもたらす可能性も著しく低減するでしょう。
 造船業界にさえ意欲があれば、すぐにも実現できると思うのですが、皆さんはどうお
考えでしょうか。
                                    NH3

#0004 kimot    9005030635

CCV、という概念とちょっと外れるかもしれませんが、
東大海洋研の研究船「白鳳丸」は、似た雰囲気をもって
います。
定点を維持する必要があるため、メインの推進機関のほ
かに、船尾、船首のスラスタがついており(何基か忘れ
ました)、それらをコンピュータが制御します。操縦は、
ジョイスティックで行います。
これは、もともと石油掘削船のために開発された技術だ
そうです。 木元・拝

#0005 sci5272  9005090403

 話がなかなか専門的で、よく分からない点もあるので質問させてください。  

 まず初歩的な質問。CCVというのは、「運動性の向上」が目的のようですが、
ということは障害物を探知するレーダーのようなものとは違うんですね? CCV
って何の略ですか?

 もうひとつ。二重底化のデメリットがよく分かりません。外ボディが損傷した場
合に沈没の可能性もあるということですが、今までの例でいえば浅瀬で座礁すると
いうケースが考えられますよね。ということは、完全に海底に沈んでしまうことは
ありえないのでは? そしてそんな場合でも、二重底化により原油などの流出は防
げる確率が高いような気がしますが、どうなんでしょう?           
 確かに発想としては消極策だというのは分かりますが、今までのような海洋汚染
事故を二度と繰り返さないためにも、二重底化はやってほしいもんだと思っていた
ので、NH3さんの問題提起を見て、ちょっと混乱しています。ご教授願います。
                        実は金づちの アマナクニ 

#0006 sci3487  9005090553

 白鳳丸ですか。私も読んだことがあります。そのスラスタも、たしか、エンジンの動
力を使わずに電気モーターを使うことで、繊細な制御が出来るようになっているんでし
たよね?
 出自が違っているとは言え、ほぼ同様のことを目指しているわけですね。
 10万トン級の大型船にも、是非ともこういったシステムを搭載して欲しいものだと
思います。
                                    NH3

#0007 sci3395  9005092152

CCV=(control-configured vehicle)形態変換航空機。
基本は、機首を正面に向けたまま移動(操舵)しようとするシステ
ム。この逆に、仰俯角を持ったまま直進もできる。具体的には、主
翼、尾翼のほかに補助翼を多数追加し、このすべてをコンピュータ
ーで制御し、先の目的を実現する。高等格闘、戦術機の能力向上の
ために開発、研究されている。
 すでに航空機では、実験機がなん機も存在し、実用機へのフィー
ドバックも行なわれている技術です。自衛隊が採用予定(今はどう
なったかしらないけど)のF16改も、このフィードバック型です。
※MUTA※

#0008 sci3487  9005110551

アマナクニ殿

 CCVとは Control Configured Vehicle の略です。
これは、障害物を探知するのではなく、障害物を発見した場合に迅速に回避するための
手段と言えるでしょうね。
 おっしゃるとおり、座礁の場合には沈没の心配はあまりありませんが、他の船舶など
浮揚障害物への衝突の場合には危険です。私は、「船体を強化する」ために二重底にす
ること自体には反対ではありません。ただ、実用船に導入する場合には、内外のボディ
のどちらか、もしくはその両方に軽量な素材を使用するなど、安全には十分に配慮する
必要があると思います。
                                    NH3

#0009 kimot    9005111845

NH3閣下>>>
 白鳳のデータが出てきましたのでお知らせします。
スラスタは3基(船首に2、船尾に1)で、いずれも
電気推進です。主エンジンはディゼル機関が4基です
が、メインプロペラ2基はこれと直結モードのほか、
やはり電気推進もできます。電気が多用されるのは、
観測時の騒音の低減のためでもあります。細かい制御
を実現しているものとしては、メインプロペラのピッ
チが可変であること、またコンピュータがプロペラの
舵も含めてコントロールしていることがあります。
木元・拝

#0010 sci5272  9005112042

 レス有り難うございました。

            アマナクニ(うっかり改行キーを押し続けてしまった)

#0011 sci3487  9005160543

木元殿
 詳しいデータを提供いただき、有難うございます。
 あらためて思いますが、この動力系統、まさにCCVそのものですね。デリック支持
のために開発された技術が、海洋調査船に応用されたわけですが、造船業界には、ここ
まででストップさせてしまうことなく、もう一歩進んで、一般船舶への応用も、是非と
も実現していただきたいですね。
 ところで現在、東大海洋研の白鳳丸以外には、同様のコンセプトに基づいた船はない
のでしょうか。もしあるならば、そのスペックも知りたいと思うのですが。
                                    NH3

#0012 sci3487  9006060535

 アサヒパソコン誌の6月15日号に、大型クルーザーの記事が出ていました。
 このクルーザー、排水量532トン、全長45m、全幅8mで、最新のナビゲーショ
ン・システムが各種搭載されています。時価30億円ということです。所有者は、不動
産会社のオーナーで、自らの所有する造船所で、1986年に建造したのだそうです。
 ちょっと興味を引かれたのは、船底のスタビライザーです。船体の横揺れを検知する
と、自動的に作動して、それを抑制するようになっているそうで、通常ならば7回ロー
ルするケースでも、3回のロールに抑えられるのだそうです。
                                    NH3

#0013 sci3487  9006150542

 6月14日付けの日本経済新聞によると、三菱重工が、原油流出を防止するタンカー
を考案したそうです。
 このタンカー、液面を喫水線以下に保つことにより、船体が破損しても、海水の圧力
で原油を閉じ込められるようにしようというものです(下図参照)。

        従来             新型
   I          I   I          I
   I**********I   I****原油****I
−−−I****原油****I−−−I===仕==切===I−−−水面
   I**********I   I****原油****I
    ==========    I**********I
                   ==========

 同社は、ワシントンで開かれたAPI(米国石油協会)主催の原油流出防止国際学会
で、この研究成果を報告したということです。

 誰でも気がつきそうで、意外に気付かない手段ですね。
 これは決定的な解決策になるかも知れません。
 少なくとも、船体の単純な二重構造化などよりは、かなり賢明な対策と言えるのでは
ないでしょうか。
                                    NH3

#0014 sci3395  9006150949

お! これはたしかに盲点。完璧ではないだろうけど、
革命的なアイディアのような気がする。※MUTA※

#0015 sci3487  9202080521

 2月5日の日経によると、三井造船は、LNGディーゼルエンジンを開発したそう
です。ガスと微量の重油を同時に、高圧にしたシリンダ内に噴霧する仕組みです。
出力は3~10MWです。現在コージェネレーション用エンジンの主流となっているガス
タービンよりも、コストが安いことから、当面はその代替として納入されるようで
すが、同社では、将来このエンジンをLNGタンカーの動力として利用することを計
画しているそうです。LNGは低温かつ高圧のため、タンカーで輸送すると途中の行
程で一部が気化してしまうことが避けられず、効率が悪くなっていましたが、タン
カー自体の燃料としてLNGが使用できるようになれば、タンク内で気化してしまっ
たLNGを有効に活用できるため、効率の向上が期待できるのだということです。

 このようなエンジンの場合、NOxの排出はどうなるのでしょう。ちょっと心配で
す。
 ただ、燃料輸送の効率化には大いに期待したいですね。これからはLNGの海上輸
送も増えるでしょうし。このアイディアは、水素タンカーにも応用できるかも知れ
ませんね。

                               NH3


#0016 sci3487  9203100538

 3月7日の日経によると、国際海事機関海洋環境保護委員会は、原油流出防止の
ため、93年7月以降に建造契約する大型タンカーの船体を二重構造とすることを
義務づけるそうです。また、既に就航しているタンカーについても、船齢が25年
となった時点で二重船体に改造することとしています。なお、以前にご紹介した中
間甲板方式も、二重船体として認められています。

 中間甲板方式が承認されたのは良かったですね。完全二重船体方式ほどコストが
かさみませんし、タンク容積を犠牲にしないので輸送エネルギー効率も落ちません
。アメリカなどは強硬に反対していたようですが。

                               NH3


#0017 sci3487  9203130535

 3月12日の日経によると、三菱重工は、例の「中間甲板方式」の特許を無料開
放するそうです。当初から特許料は1%以下に抑える計画でしたが、普及促進のた
めに今回の無償化に踏み切ったとのことです。

 これはまた画期的なことですね。しかし、無償でとなると、三菱側には一体どの
ような利益があるのでしょうか。

                               NH3


#0018 sci3487  9205160535

 5月14日の日経によると、国際海事機関が船舶に対し排出規制を課す方針を決
めたそうです。船舶ディーゼルからの排出は、NOx総排出量の7%、SOx総排出量の
4%を占めるにもかかわらず、これまで事実上野放しとなっていました。この規制
により、エンジンの改良や浄化装置の設置が義務づけられるため、これが輸送コス
トを押し上げる可能性があるほか、高硫黄重油の使用制限で石油業界にも影響が出
そうです。しかし一方、船舶の改修需要で造船業界が潤うことも考えられます。

 歓迎したいことですが、一方、なぜ今までこれほど大きな排出源が規制されるこ
となく放置されてきたのか、不思議です。もちろん、自動車など国内利用が主であ
る場合と比べ、公海上を航行する船舶では規制が難しいのは確かですが。

                               NH3