nat00182 日本環境教育学会設立

#0000 natur    9004160129

5月20日、日本環境教育学会が創立されます。
この学会に関連した話題を、報告するコーナー
です。

#0001 sci4831  9005012302

環境教育は学校で行なわれるのですか?

#0002 sci2714  9005161817

  もう幾つ寝ると5月20日〜〜〜〜。                      kita-4

#0003 kimot    9005190303

 >>>>日本環境教育学会創立大会レポートvol.1<<<<

 えー、「環境教育の創造と実践」をテーマにした、日本環境
教育学会の創立大会が、18日から東京学芸大学(小金井市)
にて始まり、小生も行ってめえりやした。
 創立総会そのものは、最終日の20日です。初日の18日は、
この学会の発足の母体のひとつともいえ、1986年から続け
られている「野外教育シンポジウム」の第5回が午後いっぱい
を使って開催されました。

 以下、この学会のアウトラインについて、自分なりの理解で
申し訳ないのですが、ちょっと触れておきたいと思います。
 そもそも、環境教育というものがテーマとされる理由は何か。

 自然・環境問題に関心をもち、どんな形でもよいですから具
体的な行動を始めてみると、ときに無力感にさいなまれること
は、きっと少なくないのではないか、と思います。
 たとえば、山へいってニホンザルに出会った。と、近くの家
族連れが無邪気な顔でサルにスナック菓子を投げ与える。そん
なことをすると、かえってサルは自分でエサをとらずにヒトに
頼るようになって、野生を失ってしまうのですよ、と注意して
も、けげんな顔が帰ってくるばかり。
 あるいは、ゴルフ場が破壊する山々や水系について、多くの
言葉が費やされても、一方で新設は続き、それを底支えするよ
うな、ゴルフブームをあおる馬鹿げた記事や漫画や番組は後を
たちません。
 結局、これは、教育の問題ではないのか。
 自然とどう接するか、という規範を失ったわれわれは、自分
たちも自然・環境について学び、子供たちにもそれを意識的に
教える必要があるのではないか。
 そうでないと、結局、人間の行動は変わらず、次々と新しい
環境問題がでてくるだけではないのか。
 ストックホルムで1972年に開かれた国連人間環境会議で
も、この環境教育の重要性は指摘され、その実践について、多
くの論議が蓄積されてきているそうです。

 今回の、日本環境教育学会は、そうした環境教育の方法と哲
学について、知識を交流しあおう、そして切磋琢磨しよう(事
務局の木俣美樹男・東京学芸大野外教育実習施設助教授)とい
う主旨で設立されるものです。
 実行委員の肩書をみていると、小学校や、大学の教育学部で、
自然との接し方を野外教育(山へいって鳥をみる。キャンプを
して、子供をひとりきりで一晩自然の中で過ごさせる。間伐材
で家をつくるetc.)の場で教える、「教育者&ナチュラリスト」
といった立場の人々が多いようです(18日のシンポジウムも、
社会教育、学校教育の双方からの、このような立場の方々の発
表と討論が中心でした)。
 ただし、設立趣意書では以下のように、分野を限定しないと
しています。
「環境教育の分野・領域については特に限定することは考えて
いません。環境は自然科学のみならず人文・社会科学も関係し
ています。環境汚染や公害問題、自然保護はもとより、歴史環
境、衣食住にかかわる生活環境、地域やコミュニティも環境教
育が扱う範囲でしょう」

 以上、本日はすいません、これくらいにして、また改めてレ
ポートを続けます。

木元・拝

#0004 sci2714  9005190326

  はーい。続きをまってまぁーす。
  kita-4

#0005 sci2714  9005211640

  ちょっと質問(本論とは関係ないのですが)。
  今回の創立大会の場で、環境教育に関する資料などの販売はあったでしょうか?
  もしあったのであれば、どんなものだったのか知りたいのですが。

  kita-4

#0006 kimot    9005211931

すいません、レポートは追って書きます。
資料販売は、ささやかなコーナーがあり
ましたが、内容はよく覚えていません。
不忍の池の観察ガイドとかあったような
気がします。
木元・拝

#0007 kimot    9005220114

 >>>>日本環境教育学会創立大会レポートvol.2<<<<

 まず、初日は「野外教育シンポジウム」の第5回。「野外で
行う環境教育」をテーマに、東京農大の進子五十八、信州大学
の渡辺隆一の両氏の司会で進行しました。
 発表者は、飯田稔さん(筑波大学)、川嶋直さん(財団法人
キープ協会)、中込卓男さん(東京都五日市町立戸倉小学校)、
羽場睦美さん(財団法人野外教育センター)の4人。
 小生が出席できたのは後半だけでしたが、それぞれ、宮城、
山梨、長野など、豊かな自然に恵まれた場所でのキャンプ活動
や、小学校とその周辺での愛鳥活動の実践報告でした。
 つまり、おもに児童を対象にして、自然の姿を体験を通じて
知り、一方自然とのふれあいを媒介として人間形成をする。ざ
っとこのようなものが、「野外での環境教育」のイメージであ
るようです。

 事例報告のあとの討論では、「都市部での野外教育は可能か」
「教育プログラムの有効性を計る手法がなくてはならない」「
社会・経済的側面、つまり開発の問題をどう教えるか」「キャ
ンプが非日常的なおまつりで終わってはいけない」「野外教育
のやり方がマニュアル化するとこわい」などの話題で、フロア
とのやりとりが続きました。都市部での、という点では、川嶋
さんが、「時間の移動、すなわち夕暮れや明け方を観察するこ
とで、ずいぶん多様な生物の姿をみることができる」という提
案をしていました。プログラムの有効性評価に関しては、飯田
さんが、米国での事例として、自由語の連想によるイメージの
分析という方法について触れましたが、短い紹介だったので、
具体的な方法まではちょっと小生にはわかりませんでした。

 最大の問題のひとつとしてクローズアップされたのは、「人
材の確保」です。野外教育はほとんど制度化されておらず、つ
まり野外教育ではなかなか「食えない」。いきおいボランティ
アだのみになりがちだが、そうすると教育者の質の問題がでて
くる。これと関連して、費用と制度の問題が話題となりました。
 要するに、現在の野外での環境教育は、小数の熱心な人・集
団に支えられている段階である、という現状の再確認ともいえ
た感じでした。

木元・拝

#0008 kimot    9005220114

次は100行以上あります。ご注意!!

#0009 kimot    9005220115

 >>>>日本環境教育学会創立大会レポートvol.3<<<<

 2日めの5月19日は、午前中にシンポジウム「今、求めら
れている環境教育とは」、午後に事例報告の一般講演が十数題
ありました。

 シンポジウムの演題と発表者は、次の通りです。
「都市の市民からの視点」(科学ジャーナリスト・川口啓明氏)
「冒険から生まれる体験教育」(日本OBS協会・木谷尚史氏)
「大自然の中で地球の詩を歌おう−北の大地で通年の月例自然
 教育を実践して」(旭川市聖園中学校・三浦国彦氏)
「社会科における環境教育」(品川区立第2延山小学校・山下
 宏文氏)
 乱暴にわけると、前2者が社会教育的、後2者が学校教育的
な視座からの発言だったといえましょう。

 それぞれのミソをかいつまむと、川口さんはマスコミ情報が
たぶんにセンセーショナルで、環境問題の構造的な全体像を伝
えるのに不十分なこと、また市民団体の学習会などもときに意
識操作的になる危険を指摘しました。また、都市部の生協活動
に注目し、とくに男性が、地域社会の場で、改めて働く意味を
考える「男性運動」があってもいい、と述べていました。
 また、運動団体相互に意見の対立があると攻撃的になりがち
であり、濃密なコミュニケーションが必要だとクギもさしてい
ました。
 木谷さんの「OBS」とは「アウトワード・バウンド・スク
ール」の略で、さきの大戦中に英国で生まれた、若者を野外の
自然環境の中で鍛える体験教育の活動団体です。これは、自然
の中で、たとえば3−4日単独行をすることの意義などについ
ての話でした。
 三浦さんは、旭川大学でも教える理科の先生ですが、「大雪
と石狩の自然を守る会」という自然保護団体の活動を母胎に、
旭川市内の小中学生(現在220人)を対象に、月1回日曜日、
川遊びなどの自然教室を開いています。その実践をふまえなが
ら、「ナニナニを取ってはいけない、といった道徳的な自然保
護教育は破綻します」「ヒステリックな自然保護運動では、草
木一本とってはいけないとなるが、いろいろなものを取ること
で、どこまで自然に踏み込んでよいかがわかってくる」「子ど
もに自然保護教育はしたくない。きちっとした自然教育をすれ
ば、自然への見方を自分ではぐくんでいくからだ」と、結構ド
キっとする発言がありました。
 山下さんは、自然農法のキャベツを市販のものと「手触り」
「におい」「味」などがどう違うか体験させ、農業における土
の大切さと農薬の問題点を教える授業(小5向け)や、江戸時
代のゴミ処理の方法を学ぶ(小6向け)などの実践から、社会
科での環境教育の課題を次のように指摘しました。
 教育課程での環境教育の位置づけが不明確。社会科教師の環
境教育に対する切実感が希薄。環境教育において、地理的な視
点はあるが歴史的視点が弱い。断片的な実践の繰り返しになっ
てしまう。

 このシンポは、環境教育とは何か、という本質的な議論につ
ながるものでした。もちろん、ただそのアウトライン(現状)
が報告されて、それに対するフロアとの討論があったというこ
とであり、環境教育の定義をここでおこなったわけではありま
せん。
 しかし、発表後の討論では、教育関係者、環境団体関係者、
また「学校のすぐそばにゴルフ場ができる。それをPTAでと
りあげようとしたら、学校側に握りつぶされた。学校教育の場
での頑張りに期待する」という金沢市の女性など、本当に幅の
広い発言がありました。
 とくに印象に残ったものでは、「幼児向け、あるいは初等教
育では、成果が出るのはそれらの人がリーダーになる50年後。
これでは、環境問題は手遅れ。行政や、難しいが企業のトップ
への環境教育が必要だ」「環境教育の使命とは、環境問題にと
りくめる人をどれだけ増やせるかだ」「環境問題は、多くが絶
望的な結論をもっており、これは一人では何もできない、とい
うことから刹那的な行動へとつながりやすい。環境教育では、
まず最初に、絶望しなくていい、という姿勢を教えるべきだ」
などの発言がありました。

 19日の午後と、翌20日の午前中、事例報告の一般講演が
ありました。小生はこれは欠席しましたので、以下に、「発表
要旨集録」に記載された演題のみをアップします。

「障害児学校における環境教育−盲学校を例に」(これは当日
 欠席)
「英語科『教科書の中の{環境}の扱いについて』の一考察」
「『地学教育』の中での環境教育−都会校においての取り組み」
「環境科学に基づく環境教育の提唱」
「水辺の環境問題を考える」
「心とからだの環境教育」
「都市における幼児の野外教育」
「文化としての散歩教育」
「練馬区における環境教育啓発事業」
「ユネップの環境教育」
「GREEN(河川が結ぶ地球規模の環境教育ネットワーク)
 の理念と活動」
「環境教育の目標段階と自然解説施設の展開に関する計画論的
 考察」
「年間会員制の野外教育プログラムにおける環境教育の導入に
 関する実践研究−国際自然大学校NOTSの年間プログラム
 を中心として」
「環境教育の方法論とその実践に関する研究1.−野外教育プ
 ログラムと冒険学校」
「大学における環境教育カリキュラムの開発」
「北海道における環境教育の傾向(その1)−学校教育におけ
 る環境教育」
「北海道における環境教育の傾向(その2)−生涯教育と自然
 保護」
「アメリカの環境教育について」
「中学校社会科における熱帯雨林の教材化」
「子どもの問題意識を生かした地域環境学習」
「実行動を育てる環境教育」
「日本における自然保護教育運動の歴史的検討」

木元・拝

#0010 kimot    9005220213

 >>>>日本環境教育学会創立大会レポートvol.4<<<<

 最終日は、午前中に一般講演の続きと、記念講演で上野動物
園の中川志郎園長の「野生動物と環境−21世紀をともに生き
るために」と題する話がありました。

 午後が、日本環境教育学会の創立総会にあてられました。

 総会では、創立大会実行委員会委員長の佐島群己・東京学芸
大教授が、大会参加者が全国から373人、内訳として大学関
係が56、幼・小・中・高の関係55、一般53、行政42、
自然保護・市民グループ34、学生38、などの数字が披露さ
れました。

 また、役員として、会長に沼田眞・千葉大学名誉教授(千葉
県立中央博物館長、日本自然保護協会会長)を選び、運営委員
20人、および事務局長として木俣美樹男・東京学芸大助教授
を選びました。

 学会規約については、「入退会、総会成立などの規定が不十
分」という声が出て、しばしもめましたが、とりあえず学会の
発足を第一に考えよう、ということで事務局原案を採択してそ
れを今回出された意見をもとに改善することで収拾。
 関西支部として大阪教育大学を指名し、次回大会をそこが中
心となって開くこととなりました。

 会長となった沼田氏は、就任挨拶の中で、「環境教育を文部
省がとりあげていない」「日本の環境教育は、公害教育という
分野から出発した特殊なもの」という指摘をしていました。そ
して、生涯教育、社会教育、学校教育というそれぞれの現場で
の一層の活躍を期待しています、としめくくりました。


 以下は、不完全ながら3日間のぞいた感想ですが、この学会
には基本的なベクトルがいくつか存在しています。ひとつのベ
クトルは、「自然を媒介として人間形成をする」という方向で
す。もうひとつは、「自然・環境の重要さを教える」という方
向です。さらに、一般市民にも開かれた学会をうたっている結
果、学術団体の交流の場と同時に、運動団体の意見表明の場と
もなりうる気配があります。
 事務局としては、あくまで中立な、実践の知識を交流し磨き
会う学術団体としてこの学会をとらえていますが、一方で、「
環境」というホットな現場をもっているこの学会が、そのよう
なピュアな運営をするためには、なかなか手綱さばきが難しい
というような気がいたしました。学術団体としての学会が、運
動論や意見の対立、ひいては政争の場と化した例は、過去にな
いわけではありません。
 一方で、その一部分で学術的に高いレベルを保ちつつ、また
一般の意見が自由に表明される場がある学会、というものが実
現されれば、これはある理想形といえるでしょう。
 小生は、この学会が、環境問題への取り組みのキーステーシ
ョンのひとつとなりうると予感しています。

 以上で、レポートを終わります

木元・拝

P.S.日本環境教育学会の事務局は、次のとおりです。

    郵便番号184 小金井市貫井北町4-1-1
    東京学芸大学野外教育実習施設内
    電話0423-25-2111 内線2925,2926

    年会費は、学生3000円、一般5000円です。

#0011 sci2714  9005221221

  「発表要旨録」は当日500部用意したのが足りなくなった。
  増刷に関してはどうしようかと悩んでいるところ。

  また、学会としての入会案内も、事務局が承認されたばかり
  でもあり、まだ印刷物として出来てないので、一ヶ月程待っ
  てもらいたい。

  ......とのことです。

  発表要旨集が入手できないのが残念だぁ。          kita-4

#0012 natur    9005222054

木元閣下、御苦労様でやんした!         金の字