Gen00541 入門・放射能学 総集編上「放射能は養子に出る為」

#0000 sci1985  8908181635

  「科学技術ニュース&トーク」の時代からの読者の皆さんは知っていると思い
ますが、やむにやまれぬ事情で、引っ越してきた講座です。ここでも宜しく。
この題名で続きものになっています。講座は、第6回の書き込みは8/20頃、
その後は、一週毎に講座は進みます。質問は、関連発言の最後にどうぞ。回答も
そこで行ないます。今回は、今までの総集編をやります。第五回だけは内容が
別なので、次回の総集編に含め、ここでは別に書き込みます。今までの原文は、
科学技術ニュース&トークにあります。
 現代最大の問題に、一石を投じることが出来るような知識はつきますよ。
最後まで、頑張って下さい。とても簡単な講座です。
 
      入門・放射能学 総集編上「放射能は養子にでるため」
 
               講師は、中学3年の「某中学生徒会長」です。

#0001 sci1985  8908181637

  物はどうやって作られるのでしょう。原子が集まって分子を、分子が集まって
物を作ります。分子で、そのものの性質が決定します。水や、酸素の違いはここ
から生まれます。重ねていいますが、原子が集まって分子を作るのです。水も
二酸化炭素も、塩酸も、原子が集まって出来ているのです。くれぐれも、分子と
原子を勘違いしないように!!

 さて、分子は原子で出来ていると言いましたが、当然の事ながら、一種の原子
だけで作られているわけではありません。水素原子、塩素原子、炭素原子その他
の実に103もの種類があるのです。そうすると、当然の事ながら違いがありま
す。原子は、次の3つの粒で作られています。

 陽子は、+の電気を持っています。核の中にあります。
 中性子は、電気を持っていません。核の中にあります。
 電子は、−の電気を持っています。核の周囲を回っています。

  では、一つ一つの性質を見てみましょう。陽子は、原子の種類を決めます。
人間で言えば、名字です。それは、元素番号と同じです。つまり、元素番号の
数だけ陽子があれば、他の粒が幾つであっても、原子の種類は変わりません。
これは、分子が作り出す性質のもとになっていますから、この数が変わると、
大変です。錬金術と言うのは、この陽子の数を変えられれば、成功した訳です
が、あの時代では所詮無理でした。

#0002 sci1985  8908181650

 一つ飛ばして、電子について説明しましょう。陽子と電子は普通は同数ありま
す。陽子は+の電気、電子は−の電気を持っているので、原子が電気的に中性で
いるためには、欠かせないことです。しかしながら、電子でいつでも陽子と同数
あるとは限りません。電子が増えたり、電子が減ったりすることもあります。
すると電気を帯びてしまいます。しかし、この電気を帯びることは、化学反応に
とってとても重要なことです。

  +の電気と−の電気が一緒になると、中性になります。原子の中に、電子と
陽子があるのに、電子が飛んで言ってしまわないのは、+の陽子と−の電子で
中性になっているからです。同じように、化合物と言うのも、+、つまり電子の
数の足りない原子と、−、つまり電子の数の多い原子が、電子の多い方から少な
い方が電子をもらい、その電子で二つ以上の原子がつながっているのです。
つまり、その電子がふっとんだりすれば、あっという間に化合物は分解します。
詳しくは、後逸します。

 しかし、そうすると、普通はどの原子がどれだけ電子が多い・少ないと言うこ
とは決まっていますから、酸素や水素など、一つの物でできている分子は存在
できないことになります。そういうのは、電子の数が正常な状態でいるときに、
電子を共有し、結合しています。

#0003 sci1985  8908181650

 「原子」には名前がついていて、陽子の数が名字、中性子の数が名前を表しま
す。人間の世界では、例えば「一郎」と言う名前だと跡継ぎになれ、「義則」だ
となれない、等と言うことはありません。しかし、原子の世界では、跡継ぎは
名前で決めます。例えば、下図を見て下さい。

      名字(原子番号=陽子数)  本名(原子量)  名前(中性子数)
      酸素 (8)       16                  8
           炭素  (6)              12                  6
             銅  (29)             64                 35
 
 原子量と言うのは、原子の本名です。陽子数+中性子数で決まります。しかし
なぜさっき「中性子数=名前」と言ったのかと言うと、陽子数は原子の種類を
比べない限り、つまり、「名前」は違うが、「名字」は同じ、と言う兄弟同士
を比べる上では、陽子数は変わらないため、関係があるのは「中性子数」だけ
なのです。この講座では、これからは名前は「原子量」とします。
 
 さて本題に戻ります。上の図で、書いてあるのは「跡継ぎ」の代表です。この
名前のついている原子は、何も事故がない限り、半永久的にそのままでいられま
す。もっとも、これは代表ですから、跡継ぎが二人、三人といる物もあります。

#0004 sci1985  8908181719

 では、不運にも名前が違う、つまり上の図では名前が「14」の炭素とかはど
うでしょう。これは跡継ぎにはなれません。しかし、いつまでも跡継ぎにならず
遊んでいるわけにもいきませんから、原子は少し考えます。皆さんも考えて下さ
い。分かりましたか?そう、題名の通り、「原子」は養子、つまり名字も名前も
変えて、跡継ぎになろうとするのです。

 人間社会では、養子と言うのはあまり頻繁にはありませんが、原子の世界では
よくあることです。原子の養子のなり方は・・・。そう、自分の体の一部でもあ
り、名字やなまえそのものでもある、「陽子」や「中性子」を排出するのです。

 例えば、「金」の名前が「196」の原子は、「197」でなければならない
「金」の家にはいられません。そこで、「陽子」を2つ、「中性子」を2つ排出
し、陽子数が2つ少ない「イリジウム」家の「192」と言う名前になります。
これはイリジウム家では跡継ぎになれますから、この原子は永住します。

 しかし、こんなにうまくいくとは限りません。下図をどうぞ・・・。かわいそ
うですねえ・・。ちなみに、数字は名前です。

 ウラン238→トリウム234→プルトアクチニウム234→ウラン234
→トリウム230→ラジウム226→ラドン222→ポロニウム218
→鉛214→ビスマス214→ポロニウム214→鉛210→ビスマス210
→ポロニウム210→鉛206

 鉛206になって安定するまでに、14回も養子になるのです。本当に、
かわいそう・・・でもないんです。後逸しますが、こいつはあのプルトニウム
を作るのです。

#0005 sci1985  8908181721

  突然ですが、皆さんは放射能という言葉は、何の意味だと思いますか?放射能
がそのまま人体へ害を与えるもの、と考えてる人が多いと思います。
(思っていない人はなかなかです)それは間違いです。はっきりさせます。

    放射能・・放射線を出す能力
  放射線・・実際に人体に害を与えるもの
  放射線源・放射能を持っているもの、放射能をだすもの

 簡単に言えば、放射線源が工場とすると、放射能は生産力、放射線は製品と
なるわけです。今度からこの呼び方でいきますよ。

 今回は、放射線の話です。原子の養子作戦は、自分の体の一部を飛ばしてしま
うわけです。方法はいくつかあります。

 ◎α線(アルファ線)を発する。
 ◎β線(ベータ線)を発する。
  ◎γ線(ガンマ線)を発する。
  ◎電子の吸収
 ◎核分裂

#0006 sci1985  8908181722

 厳密に放射線をあげると、もっと多くなるのですが、養子作戦ではおもにこれ
ぐらいです。一つずつ説明しましょう。

 α線は、陽子2個、中性子2個がくっついた、ヘリウムと言う原子の原子核と
同じ物を飛ばします。当然の事ながら、とても大きく、周りの原子にぶつかりや
すいので、飛距離は短いです。ウラン、プルトニウムなどの原子量のとても多い
(名前の数が大きい)ものが出します。

 β線は、電子1個です。原子核からでます。
「あれ?核の中に電子があるの?」と思った人は流石です。
陽子はプラスの電気、電子はマイナスの電気、中性子は電気無しでした。すると
「中性子−電子=陽子」という公式が成り立ちますね。これなんです。中性子が
陽子に変化するとき、β線はでます。大きさは中ぐらい。よって、飛距離も中ぐ
らい。セシウム・ヨウ素等の中ぐらいの重さの原子が出します。
もう一つ、β線は発生方法がありますが、γ線とまとめて書きます。

 一つ飛んで、電子の吸収というのは、β線の反対です。電子を吸収し、陽子を
中性子に変えます。ほとんどの時、自分の管理下の電子を使います。これは、
β線やα線など、顕著な放射線は出ません。

#0007 sci1985  8908181724

 γ線は、光のような物、電磁波です。飛距離は当然長い。
原子には、名字、名前、相性の他に、「血の気の多さ」(=怒りっぽさ)があ
ります。この「怒りっぽさ」というのは、それぞれの原子で標準が決められ、養
子作戦の時期も、標準に基づいて決められます。

 「怒りっぽさ」が標準の原子は、以外におとなしく、冷静です。しかし、そう
でない原子は、熱を帯び(起こるとそうでしょ?)、ちょこまかと電子が動き回
ります。標準である原子の電子も、動くには動きますが、いわば亀とつばめのよ
うなもの、動き方は雲泥の差です。

 こんな奴をほっておくと、養子作戦も周期が狂い、うまくいきません。そこで
ストレス解消、怒りを沈めて標準にってんで、怒りのエネルギーを光のようなも
のに与えて、ふっとばしてしまいます。これが、γ線って奴です。
また、もう一つの手段として、電子に怒りをぶちまけて(いわいる「八つ当り」ですね)、破門にし、ふっとばします。一応は、β線のようなものですが、「八つ当り」を不満に思い、怒っていますので、大変です。
 また、「怒る」のは、養子作戦で養子に出た直後にもあります。慣れない環境
ですから。ですから、養子作戦の直後は、ほぼ必ずγ線が出ます。

#0008 sci1985  8908181726

 飛距離は、長いと言うのは厚さ30センチのコンクリート、中ぐらいという
のは金属一枚、短いと言うのは紙一枚を通り抜けると言うことを指します。
これらは、跳ぶところの原子の密度によって左右されます。だから、何百光年
という星からも、放射線が届くんです。

 飛距離が短い=安全、と考えるのは端的です。なぜなら、紙一枚でα線が止ま
ったとしたら、α線はその紙に、できる限りの障害を与えます。多きい方がエネ
ルギーは大きいので、紙はγ線などから受ける障害とはけた違いの障害を受けま
す。いわば、大きいものは狭く濃く、小さいものは広く薄く、障害を与えるわけ
です。

 分子に対する放射線障害は、大きく分けて二つあります。一つは、原子核、
つまり、原子の名前を変えてしまうもの。もう一つは、電子をふっとばして
分子を分解させてしまうものです。

 どちらかといえば、分子の分解の方がよく起こります。なぜなら、α線やβ線
は原子核にぶつかる前に、周りの電子にぶつかってしまう可能性の方が大きいの
です。しかし、原子核に入ってしまうと大変です。入れるのは、α線とβ線のみ
で、γ線は原子核にぶち当たった場合は、「いてーな、このヤロー!」と当てられた原子が怒りだし、「ストレス解消作戦」を開始することになります。
 これは、「八つ当り」された電子を、「電子が足りない=プラスの電気を持っ
ている」という理由で、原子ないに取り入れてしまっても起こります。
 
 α線は、陽子2つと中性子2つ、つまり、名字も名前も変えられてしまうので
す。原子核にはいれば。とすると、「跡継ぎ」になれる可能性は少なく、ほぼ
確実に「陽子作戦=放射線だし」を始めます。といっても、α線が原子核にぶつ
かるのは、確率はとても低いのです。α線も、原子核も、+の電気がありますか
ら、弾かれ易いのです。

#0009 sci1985  8908181729

 β線が入ると、ここは推測ですが、陽子がプラスマイナス0で電気を持たなく
なり、中性子に変化する、ということでしょう。これは、総集編ではっきりさせ
ます。(ただたんに、学校にあった本をよく読んでなくって忘れただけ)
これは、質量が軽いので、慣性が弱く、原子核の反発作用(電気に関係なくはた
らく)をまともに受けてしまうのです。

 しかし、原子核にはいることは希です。電気がありますから。これの本業は、
さっき書いた通り電子をふっとばすこと。

 放射線が、他の原子の電子にぶち当たるとどうなるか。
1.放射線が吸収される。
2.放射線が吸収され、電子がふっとぶ。
3.放射線が屈折し、電子がふっとぶ。

 これは、放射線の持つエネルギーの度合によって分けられます。1から弱い
順に並べてあります。γ線は、光のため、怒りの強さで分けられますが、
α線、β線は、3のみ起こります。

#0010 sci1985  8908181730

 その前に、分子の作られ方を物語でみましょう。

                <ショート・ストーリー> 「消えた電子」

 水素原子は悩んでいた。ただ一つの、電子がいなくなってしまった。

 別に電子がいなくなるのは、水素に限ったことではない。外の原子も、電子が
いなくなる。しかし、自分に任されている電子の他のまで、自分の物としてしま
う奴がいること、それに、この電子は彼女(水素原子)にとってただ一つのかけ
がえのないものであることで、悲しみはひとしおだったのである。

 原子は寂しがりやが多く、単独でいるのは非常に希だが、彼女は例外だった。
「私の電子は、どこへ・・。」
 彼女は悲しんだ。そこへ、プレイボーイと有名な、塩素原子がやってきた。
「おや?水素原子さんではありませんか。何を悲しんでいるのです?」
「わたしの電子がいなくなって・・。」
                              <続く>
「ああ、あなたの電子なら、ここにいますよ。」
 彼女は完全に気が動転した。
「電子・・本当に電子?ああ、良かった。」
「どうです?これも何かの縁。僕と一緒に・・。」

#0011 sci1985  8908181732

 「縁」というのは、いまいなくなった電子のことです。この電子を「縁」とし
て、二つの原子は分子を作ります。水などは、もっと複雑に三角関係になってい
ます。つまり三この原子が三この電子を「縁」としてつながっているわけです。
また、いなくなったり、受け入れたりする電子の数は原子の種類で決まっている
ので、普通に考えると、同じ原子で作られた分子は存在しませんが、それは、
原子がいくつかの電子を共同で管理し、「縁」としてつながっているわけです。

  α線、β線、γ線は、この「縁」をふっとばすのです。「縁」がきれた原子は
当然のことながら分子にはなっていられません。バラバラになります。「縁」
以外の電子をとばした場合は、電子の多すぎる原子とつながろうとします。
すると、H3Oとかいう、とんでもない分子が出来たりもします。

#0012 sci1985  8908181734

 だから「γ線」は、殺菌や手術などでよく使われます。代表はコバルト60。
また、過酸化水素や、オゾンなど、作りにくい分子を作るのにも使われます。
なぜなら、電子に当たらなくても、電子核に当たれば、もう一度γ線を出すか、
電子を放り出してくれるからです。後は、この開いた電子の席に、他の原子の
中の電子が座ってくれれば、分子に出来るからです。

     <いかがでしたか。ぜひ、感想を聞かせてもらいたいと思います。>
            少々長かったですが、読み終えられた方なら大丈夫。
                これからの講座も頑張って受けて下さいね!
                  その前に、第五回も忘れずに読むこと。

              <第六回講座は、8/19頃の書き込みです。>

                 入門・放射能学 第六回「人間への天罰」

                                        講師は、某中学生徒会長でした。

#0013 sci1985  8908181735

       参考文献 「放射能の話 核からのメッセージ」 大槻 義彦
                    NHKブックス     定価 税抜き700円
      (なお、少々ハイレベルですので、注意。昭和55年の本です。)

                  「茶の間で語り合う 原発と放射能」 安斎 育郎
                   鴨川ブックレット    定価 税抜き350円
       (講師のおすすめ!変な本より、格段に分かりやすく、安い!)