Gen00519 分散型エネルギー研究会の宣伝

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分散型エネルギー研究会の宣伝
 「分散型エネルギー研究会」というのをやっています。興味のある方はお読み下さい。本文が少々長め(約110行)になったので、いったん切ります。

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  分散型エネルギー研究会への参加のよびかけ

 巨大化・中央集権化・専門化といった方向にひた走ってきた石油文明がはらむ問題点
は、すでに多くの人たちが指摘しているところです。特にここ数年原子力発電をめぐる
議論が盛んに行なわれていますが、そこには石油文明についての本質的な問題点が非常
によく現われています。
 このような問題点を解決し、人が幸福に暮らし続けてゆくことのできる社会を目指す
アプローチには、大きく分けると2つの方向があります。
 1つは、より一層中央集権化・専門化を進め管理を徹底するという方向です。原子力
発電に即していうならば、安全対策を完全にし、核廃物処理の技術を確立し、被曝者の
発生をなくしつつ発電量を増やしてゆく努力がこれにあたります。しかしこの方向の努
力は問題をますます深刻にし、解決を困難にするばかりです。
 もう1つは個人や地域社会が主体的に自分たちのくらしをつくりあげてゆくという方
向です。エネルギーに関していえば、必要な人(たち)が、身近なところで、可能な限
り自分(たち)の力でエネルギーを生産する自立的・分権的なエネルギーシステムをつ
くりあげることです。私たちはこの方向をめざそうと思います。
 幸いこの方面でもすぐれた研究開発や実践がこれまでになされていて、私たちに使え
そうな技術が少なからず用意されています。ただ、専門家でない個人や小グループが自
分たちで使いこなしてゆくために必要な情報は不足しており、技術そのものにもまだ不
充分なところがあります。
 そこで、
 1.個人や小グループ、地域社会などで自律的にエネルギーを生産しようとする人た
ちに、技術・制度・経済性などについて必要な情報を提供する。
 2.適当な技術が存在しない部分については技術開発を行なう。
 3.ひとりでも多くの人が自律的なエネルギー生産に参加するようはたらきかける。
 4.このような実践の延長上に、日本の、そして地球全体ののぞましいエネルギーシ
ステムを構想する。
 5.さらにこのような実践を促し、それを社会の中に定着させるための制度や政策を
要求する。
  こういったことを目的として、「分散型エネルギー研究会」を発足させることにしま
した。たいへん大きなテーマですが、参加者の意志と能力に応じ、またほかのグループ
や個人と協力しながら、できることから手をつけてゆこうと思います。
 この研究会自身も特定の分野の専門家の集まりではありません。専門家でなくても、
やり方と努力次第で専門的な批判に耐える成果をあげられるものと確信します。
 みなさま方の参加をよびかけます。

         1988年12月
              井田均、市谷壮、小山貴弓、金井利之、小池浩一郎
              田中清子、中島大、松岡信夫、室田武

 よびかけ文だけではどんなことをやろうとしているのかわかりにくいので、いま話題
にのぼっている研究テーマをご紹介します。

1.森林エネルギー
 日本におけるソフト(分散型)エネルギーの代表の1つでありながら、森林エネルギ
ー(主に薪と木炭)をきちんと評価する人はきわめて少ないようです。
 89年1〜3月の東京セミナーでは、日本の森林の生産能力や、廃材利用の実状・事
例、そして技術的な可能性などを勉強しました。さらに、参加者の一部は、三重県美杉
村のおがくずを利用した自家発電施設を見学してきました。
 一方、薪炭というと必ず「炭酸ガス」と答えるパブロフ的反射が蔓延していますが、
森林生態学の観点から、森林エネルギーの適正な利用は炭酸ガスの増加に関して事実上
問題はない、というレポートを、情報誌「分散型エネルギー」に掲載する予定です。

2.小水力利用
 小水力は森林エネルギーと並んで日本で有力なソフトエネルギーです。「水車むら会
議」というグループの研究によれば、条件によっては大規模な火力発電と同じかむしろ
安く発電できる可能性もあります。今年の夏には水車むら会議と共催で研究会やワーク
ショップ(超小型タービン水車の設置工事)を開催する予定です。

3.エネルギー関連の制度(電気事業法・パーパ法など)
 現在の日本の電気事業法などの法規は、大規模発電に有利になっています。また電力
会社の送電義務と自家発電との関係なども勉強しておく必要があります。
 一方、アメリカで風力発電が盛んになった背景には、電力会社に電力の買取りを義務
づけたパーパ法があります。その具体的な内容や、日本で同じような法律をつくる可能
性も研究します。
 現在進行中の東京セミナー「分散型エネルギーと法制度」(次回は6月15日)では
ガス会社の方からガスコジェネレーションの実状を伺ったり、商社の方からアメリカに
風力発電プラントを輸出したときの経験を伺ったりしています。

4.コジェネレーション
 自家発電施設から出る熱を利用することで、電力と燃料を別々に買うよりも安くつき
資源のむだも少ない「コジェネレーションシステム」が産業界で盛んに利用されていま
す。いま普及しているプラントは石油や天然ガスを燃料にしていますが、美杉村の事例
のように木質エネルギーも使えますし、メタンガスやアルコールへの移行も容易でしょ
う。
 自分たちで何ができるかを考えるとともに、産業界の動向を分析し、電気事業法など
の改正に持っていければ大成功です。

5.太陽熱
 効率などを必要以上に追求しなければ太陽熱を利用できる場面は多く、ソーラーハウ
スの研究も進んでいます。ソーラーハウスワーキンググループができたので、まもなく
セミナー・見学会などを始められると思います。

6.風力
 日本の多くの地域では風力を使う条件がよくありません(風が弱い)が、適地を有効
に利用すれば、100万kW程度の発電は可能なようです。また、小規模な利用の可能
性は(もぐら追いだけでなく)まだまだあるでしょう。

7.メタン発酵
 太陽熱温水器と並んで戦後の1時期に広く普及した技術で、今も第3世界を中心に盛
んに研究されています。

8.その他
 廃熱、蓄熱、氷室、波力、太陽光、地熱など

 セミナーや見学会の案内、レポートや話題などを掲載した情報誌「分散型エネルギー」
を、7月1日に創刊します。
 興味のある方は下記にご連絡いただければ、創刊準備号と購読のご案内をお送りしま
す。
   連絡先:〒171 豊島区千早町1−27 第2山吉ビル102
            中島方 分散型エネルギー研究会事務局

 今のところ東京が活動の中心ですが、佐賀(「エネルギー生協研究会」)や金沢など
のグループとも交流があり、情報交換を行なっていますし、むしろ東京以外の方に積極
的に参加していただきたいと思っています。