Gen00395 RE:392 環境と各種エネルギー源に関して

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環境問題と原子力発電、および他の電源について、です。




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 発言番号 : 392  の reader さんの[環境問題と原子力発電]は、非常に
貴重なご意見と存じます。未見の方は、ぜひご一読下さい。
 さて、その上で、なのですが、以下は小生の愚考でございます。
 水力発電所を建設するには、ダムを造り川をせきとめなければならない、
というのは、土建業による山村への資金還流を錦の御旗とした、建設省=水
資源開発公団に代表される、「巨大開発型」の事業形態だと感じます。
 私が、計画の進行途上の現場を見た巨大ダム開発としては、岐阜県徳山村
という自治単位を消滅させた徳山ダム、および神奈川県の宮ケ瀬地区のダム
開発しかありませんが、とくに前者の計画は実にひどいものでした。「生態
系は乱れ、川は干上がってしまう」という reader さんの指摘は、その通り
ですし、さらに水没地区の住民の生活まで、一時的な補償金で木っ端みじん
にしてしまう、きわめて問題のあるプロジェクトだと感じられました。
 ただそれは、小規模開発で済むところを、権力とカネの動く巨大な多目的
ダム計画にしてしまった、公的機関の愚かしさが問題なのであって(徳山ダ
ムは、中京地区の用水需要増加に対応すべくプランニングされた利水ダムで
すが、その肝心の水需要が第一次石油危機を経て頭打ちになっても、計画だ
けは巨大なまま存続しました)、水力発電そのものをただちに「生態系破壊」
へと結びつけるのは、いささか早計とも感じます。
 ダム規模が小さくても、魚道の不備などで生態系への影響は確かに避けら
れませんし、実際に魚の種類が変化した例も聞いたことがあります。しかし、
一方で小規模水発のタービンを、魚類・両生類がけがをせずに通過できるよ
うな、発電用スクリューの開発に取り組んでいるグループも、さる国立大学
工学部にあると聞きます。ここでは、演習林中の水系にすむナガレタゴガエ
ルやオオダイガハラサンショウウオの保護を、発電設備の設置と両立させる
努力を続けています。
 経済面にも触れておきますと、自治体レベルで運営されている、小規模な
堰堤からの導水による水力発電設備は、コスト的にきわめて優れたものがあ
ると聞きます。87年12月に通産省が発表した電源別発電原価によると、
1キロワット時当りで一般水力は13円ですが、自治体営水発では、原子力(同9
円)すらしのぐ成績のものがあります。これは、大がかりなダム経営に関わ
る初期・経常コストがかかっていない(補償・土地収用などのカネ)ためだ
と推察されます。ただし、これらのシステムを管理している側は、「おカミ
の不興は買いたくない」というマインドもあるので、なかなか表だって小規
模水力の成功例を宣伝することはないようです。
 上記のような理由から、水力を見る見方にも複眼が必要だ、ともうしたく
存じます。
                       ムカシトカゲ (続く)




#0002 sci1260  8811150235


 次に火力の問題点。酸性雨と二酸化炭素の発生に伴う影響ですが、これは
もう reader さんのおっしゃる通りです。大規模水力が地域破壊なのに対し
て、これは地球規模です。化石燃料の使用は、抑制されなければなりません。
 環境問題に於て付け加えるならば、地熱も決してクリーンではありません。
温泉資源への影響だけではなく、還元井からの排水の重金属含有が、地域に
よってはボトルネックとなります。風力は、地域が限定されるのが難点です
し、太陽光はまだまだコスト面で未来の技術です。軌道上の発電衛星実験も
計画中ですが、こいつは送電方法に未解決の課題があります。ただし..

 さて、以下は「信仰」の問題です。
 まず、SOx、NOx、CO2 などの環境影響と、放射性廃棄物が持つ遺伝
毒性は、トレードオフがきわめて困難です。
 私は、ケミカルな汚染に対して、半減期が途方もなく長い放射性廃棄物の
集積は、地球史的な影響を生物圏に与え続けるような気がします。
 また、ベストミックスというのも、火力、原子力という2大スターがとも
に汚染源とならざるをえない現状では、汚染を減らすため、というよりは、
「これ以上、汚染が減らせないベストミックス状態」というような感じに、
一定の汚染の継続を基本的に許すものだと思います。これでは、本末転倒だ
と私は感じます。もちろん、「ある程度の汚染は、近代社会につきもの」と
いう立場をとる場合は、上記の「ベストミックス」も概念として成り立ちま
すが、私は、このような“大目に見る”態度は、結局環境問題にとっては有
益でない思考法だと感じます。
 以上の理由から、地球環境維持のストラテジーとしては、私は原子力をま
ずヤリ玉にあげて「否定」していきたいと考えます。こうした反対派の考え
方の存在は、各国の脱原発で国際市況がゆるみ値崩れした安いウランに電力
会社が安住するのを防ぎ、さらにクリーンな代替エネルギー開発に取り組む
ための、強力なインセンティブを与えると考えます。
 ちなみに、反原発運動の最も先鋭的な部分、つまり原発さえ止めればよし、
として代替エネルギー開発への関心が薄い層は、(単に視野が広くない場合
は別として)、先進国の一人当りのエネルギー消費を切下げて、地球環境の
破壊を防いでいこう、という立場・考え方を取る人々だと思います。
 一般的な意見は、エネルギー消費水準の向上がもたらした各種の恩恵には
肯定的で、しかし化石燃料による公害も含めた、その「負」の部分を減少さ
せる努力を怠ってはならない、というものだと感じます。私はこれです。
                          ムカシトカゲ