Gen00356 教えて下さい。 #0000 匿名 8810121946 狩野さん,どうもありがとうございます。 やっと,ダウンロードファィルを読み終りました。随分,ためになる書き込 みも多かったです。特に 「危険な話」の誤り や朝日新聞社の記事の選択 に関するものが興味深かった。 本も「東京に原発を」「原発大論争」「日本の原発地帯」「北陸が日本地図から 消える日」と読んできました。 書き込みの中には,それらの本からの引用が結構多いという印象を受けました。 ところで,今疑問に思っていることがあるのですが,ウランの埋蔵量というのは いったい,どれくらいであると推定されているのでしょうか? 「東京に原発を」では1980年に20年でなくなるとのレポートも紹介されて いたのですが,ちょっと真実性に欠けると思います。 また石炭の埋蔵量が千年分あるというのは真実なのでしょうか? 将来のエネルギー政策上でも重要なことだと思うのですが,知ってたら教えて 下さい。 質問の追加ですけど,レムというのは,どういう基準の単位なのでしょうか? 半減率とか濃縮性とかは,どれくらい考慮されてるのでしょうか? もうひとつ,原発での使用済燃料は再処理されて,高速増殖炉に使われる そうですが,高速増殖炉での使用済燃料は再び再処理されて使用可能な燃料に なるのでしょうか? 知らないことばかりで,恥かしいのですが教えて下さい。 未満 #0001 sci1679 8810140151 微力ながら、ご質問に私見を交えての解答をします。間違えているところがあれ ば、教えてください。 天然資源の埋蔵量というものは推定埋蔵量と確認可採埋蔵量とがあり、確実に現 状を掴めるのは後者だと思うので、それについて調べました。 なお、採掘可能年数は年間生産量で単純に割り算しました。現在、エネルギー消 費量は2%台の伸びを示していますが、どの資源が多く消費されるかはその時の コストで左右されるので、この方法をとりました。 石 油 天然ガス 石 炭 ウラン 確認可採 6,974億バーレル 102兆m3 5,158億トン 232万トンU 埋 蔵 量 年 間 204億バーレル 108百億m3 29.6億トン 3.5万トンU 生 産 量 採 掘 34年 57年 174年 66年 可能年数 出 典 Oil & Gas Journal Coal Information OECD/NEA 1986 さらに推定埋蔵量もあるので、実際の採掘可能年数は更に延びます。またウラン の場合には、核燃料サイクルによる再利用もあり、単純に採掘可能年数で計れな いのではないでしょうか。 レムとは、線量当量の旧単位です。現在は、次に示すようにシーベルト[Sv]に改 められました。 1 rem = 10-2 J/kg = 0.01 Sv 線量当量とは、放射線防護の目的から被爆の影響を全ての放射線に対して共通の 尺度で評価するための量です。つまり放射線の種類やエネルギー・レベルなどの 違いから、人体への影響も違ってきます。そこで単位質量当りのエネルギーに換 算したもので人体へのダメージを測ろうというものです。足の上にボーリングの 玉とビー玉を落したときの痛さを評価するためのものと思えばイメージが湧くと 思います。もちろん落す高さにより、おなじ球でもその痛さも変わってきます。 半減期(半減率?)や濃縮率(濃縮性?)については、特に考慮されていないと 思います。正確な線量当量の式は次のとおりです。 線量当量 = 吸収線量 × 線量係数 × 修正係数 原子炉で使われる核燃料は、車で使われるガソリンとは違い全て使い切ることは ありません。そこで再処理工場で(生成物を含めて)使えるものと使えないもの を分けて、再び燃料とすることが核燃料サイクルなので、高速増殖炉の場合も可 能であると思います。 参考文献:原子力ポケットブック (日本原子力産業会議) 詳解放射線取り扱い技術(日本原子力産業会議) Bird #0002 sci1044 8810142327 匿名さんへ 濃縮率について記載のある資料が手元にあったので、UPします。 本資料はPC−VANより入手したものです。(元はMSXネットです) --------------------------------------------------------------------- 放射能の考え方 (8)改訂版 Tosh<MSX ★内容 From MSX-NET Jiji Salon (confer.room4) Note 34 Res. 25 By msx03025 14:09 8/16/88 放射線の考え方 8/14(V1.1 ’88.8.16) 本編3 放射能が人に至るまでの経路 わずか30Bqの放射能でさえ(外部被曝なら何も怖いことはないのに)、食品に入れ ば、牛乳のセシウムだけで被曝量を3%アップさせます。 1 生体濃縮 2 代謝回転ー生物学的半減期 3 いくつかの放射性核種の重要な経路 1 生体濃縮 私達は昔から一切を水に流すとか、川の水は3尺流れれば清められるといって、川の 自浄作用に過度の信頼を寄せてきました。今日でも希釈さえすれば問題ないという考え が通用していて、産業廃棄物のたれ流しが最近まで行なわれてきました。 しかし、人類の生産・消費規模は、自然の浄化能力の限界を越えるところまで来てい ます。 海は、大型化したタンカーや、石油備蓄基地からの事故による大量の油の流出 や、日常的な仕事での油の投棄によって汚染が進行しています。さらに、原子力発電所 や、その核燃料再処理工場、原子力潜水艦などから排出される放射性物質もおそらく回 復し難い汚染を与えていることでしょう。 水俣湾、神通川、阿賀野川の例からも分かる通り、これまでの希釈拡散処理論は誤り で、たとえ自然界に廃棄物を捨てて希釈拡散させても、廃棄物は生物によって濃縮され、 人間に戻ってきます。 1.1 濃縮率 生物による濃縮の程度を表すのに、濃縮率という値が用いられます。これは、生物体 内の濃度と環境での濃度の比です。(体内濃度/環境(例えば水)の濃度) 濃縮率は元素や生物によって異なりますが、海洋プランクトンでは、ほぼ1000〜 10000程度の大きな値です。(プランクトンでさえこんなに大きい) また、身体の部分によって取り込み量が異なります。例えばストロンチウム(Sr) はカルシウム(Ca)と良く似た挙動を示して主に骨などの硬組織に蓄積し、セシウム (Cs)はカリウム(K)と同様に軟組織に多く濃縮されます。 濃縮率とは最初、放射生態学の分野で発達した考え方です。未汚染海域に放射性物質 が放出されたときの、環境や生物への影響を予測するために用いられました。 原子力発電所を海岸に建設する際に、どの程度放射性廃液が放出されるかが、設計段 階で計算できます。それが海に放出されたとき、どの様に希釈拡散し、放射線核種が海 域でどの様に分布するかも、気象学・海洋学的にある程度予測されます。その濃度から 生物がどの程度汚染されるのかを推定するために濃縮率が必要になるのです。 表7.1 濃縮率 (参考文献5) ====================================== 元素 濃縮率 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 対土壌 対海水 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 炭素C 3.6 6430 窒素N 3.0 − ケイ素Si 0.0075 750 アルミニウムAl 0.0029 400 ナトリウムNa 0.01 0.019 鉄Fe 0.025 1.2 カルシウムCa 0.02 0.25 カリウムK 0.07 1.8 リンP 0.088 7000 塩素Cl 0.4 0.021 硫黄S 1 0.22 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− これを使えば、土や水の汚染状況からでも生体への影響を予測できます。 2 滞留量ー代謝回転 細胞内でのある1個の物質の移動や分布、生成や分解といった代謝を正確に測り、追 跡することが、放射生同位体の利用によって近年分かるようになりました。 これは放 射線利用による大きな収穫でした。 放射線から自分の身を守るために、この画期的な成果を利用しないテはありません。 今日食べた食品は、何日間私達の体を巡るのでしょうか?今日の食事は胃や腸で吸収 され、血や肉となって身体の中を滞留して、いずれ老廃物として捨てられます。身体の 中には何日分がたまっているのでしょうか? 確かに、今日の食事の成分は(体から)徐々に捨てられて減っていきます。体内の残 りが初めの半分になる時間を生物学的半減期と呼びます。(区別するために、実習編で 扱ったものを物理的半減期と呼びます。) タンパク質の生物学的半減期はほぼ3日です。これによって減少する(排出される) 量と新しく摂取する量は釣り合いが取れているはずです。この半減期と1日に摂取する 量から、体内に蓄えられている量が逆算できます。(予習編での実習で使った式から逆 算するのです。)、今回も結果だけを示します。 体内の滞留量=1日の摂取量/(1−T*1.44*(1−0.5^(1/T))) ただし、T:生物学的半減期、単位は「日」 (有効半減期ではありません。詳しくご存じの方へ) 蛋白質の生物学的半減期はおよそ1〜7日程度ですから、体内には1日の摂取量の 3.6〜20倍の量が蓄えられていることがわかります。 一方骨に入った場合(カルシウムやストロンチウム)は、生物学的半減期が1〜10 年ですから、体内の量は1日の摂取量の実に460〜500倍になります。 また、各物質は体中に均一に分散するのではなく、ある特定の器官(肝臓・腎臓・脊 髄など)に集中するので、そういった器官では実際の放射線核種量(被曝量)は相当に 高くなっていると思われます。(つまり、実習5の結果から予測される影響よりも、大 きな影響を受ける。) これを利用して、今度はストロンチウム90による被曝量を予測してみて下さい。 (要領は実習5と同じです。ストロンチウム90はβ線2.27MeVを放出し、物理 的半減期は28年としてください。) 3 放射線源のヒトに至る経路 ここでは簡単に表にまとめます。チェルノブイリによる死の灰は全世界にまき散ら され、また様々な経路をたどってくるので、今や何が汚染されていないのか分かりま せん。(汚染飼料を食べた家畜は、当然、汚染されています。)あちこちで発表され るデータには気を付けていたいものです。 表7.2 核種の特定のグループへの重要な経路(参考文献8) ======================================= 放射線核種 重要な経路 被曝の型 被曝部位 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 137Cs 多様:海、海草、魚 食物摂取 全身 その加工品など 90Sr 同上 食物摂取・吸入 骨 106Ru 同上 食物摂取 胃腸管 60Co 同上 同上 胃腸管・全身 239Pu 同上 同上 骨・肝臓 131I 大気ー地面ー家畜 甲状腺 大気ー地面ー野菜 133Xe 気中から吸入 全身 3H 同上 同上 14C 多様 吸入・食物摂取 全身 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− この中には(チェルノブイリ事故について)既に十分被曝してしまったもの(131I) や、被曝を避けられないものがあることに、気づかれると思います。 避けられる被曝 は、出来るだけ避けるのが賢明だと思います。もうこれ以上、こんなことはゴメンです ね。 Tosh --------------------------------------------------------------------------- 最近書き込まなくなった「誤り人」より