Gen00324 今こそ、再処理・高レベル廃棄物問題を問い直す時期

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今こそ、再処理・高レベル廃棄物問題を問い直す時期
                      by 大阪科学部・団藤

 8月14日の社説に「”むつ”の過ちを繰り返すな」というのがありまし
た。そこからちょっと引用します。

   ウラン濃縮も再処理も、元はといえば軍事技術であり、商業用として
  は未完成である。安全性を高めながら、コストを下げていくのは、並大
  抵のことではない。
   今後の状況に対応して、柔軟に事業計画を見直していく姿勢も大切だ。
  たとえば、再処理事業は、プルトニウムを利用するために行うものであ
  り、使用済み燃料の処理のためのものではない。プルトニウム利用の本
  命である高速増殖炉の実用化が遠いとすれば、再処理はいったん凍結す
  るという選択もあるのではないか。

 このボードで、わたしはあまり個人的な意見を出しませんでしたが、ここ
では明確にしたいと思います。再処理計画は凍結して、国民的な再検討に委
ねるべきです。社説にもそこまで踏み込んでほしかった。

 関西電力の2030年ビジョンが最近出ましたが、高速増殖炉は2030
年時点でも実用炉として、組み込まれていません。下北に計画中の再処理工
場だけで8000億円の巨費が投じられます。さらに、第二、第三の工場が
必要です。これらは基本的には消費者への負担としてはねかえります。

 再処理の結果、プルトニウムは分離できて使えるようになります。しかし、
非常に長寿命の高レベル廃棄物も裸になってしまいます。こちらの技術開発
は率直なところ遅れています。そもそも、何万年、あるいは何十、何百万年、
管理し続けるべきか−−との合意すら出来ていません。

 地層中に閉じ込める構想にも、かなり大きな欠陥があります。どんな堅固
で、傷のない花崗岩盤を見付けたとしても、その中に封じ込めるには、穴を
開けて入れねばなりません。穴を開ければ、栓をしなければなりません。栓
をする作業は、現在の技術でしかないでしょう。工学的常識からみて、千年、
万年のオーダーでもつ栓の技術はありません。

 原子力を推進している側にも、再処理路線の旗を降ろすべきだとの認識は
広がっているはずです。再処理工場が欲しいというのは業界共通の認識でし
ょうか。もし、使用済み燃料の中間貯蔵施設が出来るのなら、当分先でもい
い、ということになるでしょう。それでもなお、再処理という人の主張は、
建前論の核燃料サイクル推進か、中断すると次に立ちあげるのが難しくなる
−−との弱々しい理由になるでしょう。何年か、この業界を観察してきた、
わたしの「独断的状況判断」ですが・・・。

 再処理問題を扱うべきなのは、在京のマスコミです。ところが、問題意識
がそちらに向いているとは、到底思えないのが現状です。時期を失してしま
う恐れが極めて大です。わたしは残念ながら、この問題に取り組むポジショ
ンにいません。