Gen00318 関連<放射線の危険度> 「誤り人」

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関連<放射線の危険度> 「誤り人」

 ヒロシマ・残留放射能の42年より(日本放送出版協会)より
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原爆線量再評価
  1965年、アメリカのオークリッジ国立研究所が、初めて原爆の被曝線量を   
 評価するシステムを提案した。彼らは「イチバン・プロジェクト」という大規模   
 な実験を行ない、その結果を根拠とした。地上500mという高い塔のうえに、   
 小型の裸の原子炉を置いたり、強力なコバルト60の線源を設置して、日本から   
 運んだ木造家屋を実験場に建てて放射実験をした。これに、ネバダの核実験場に   
 おいて長崎型原爆のテストをして得たデータを加え、ヒロシマ・ナガサキにあて   
 はめて放射線量を推定したのである。これを、T65D(1965年暫定線量)   
 というが、最近まで放影研、原医研をはじめ、世界のほとんどの研究調査で使わ   
 れてきたのが、この評価システムであった。                   
  ところが1970年代に入って、T65Dに色々な矛盾や問題があることが指   
 摘されるようになり、1981年、アメリカと日本に線量再評価検討委員会が設   
 置された。足掛け6年に渡って日米共同の再検討がおこなわれ、1986年3月   
 に、新しい線量評価システムが承認されたのである。これをDS86(1986   
 年線量評価システム)という。放影研では、この計算方式に基づいて直ちに原爆   
 被爆者の被曝量の計算のし直しを開始した。DS86の最終報告は1年程前(1   
 987年)に出たばかりで、現時点では、まだほとんどの研究所や大学、個人研   
 究所が使っているデータはT65Dによるものである。              
  しかし、この両者の違いのもつ意味は大きい。放射線の人体影響、つまり放射   
 線が人間に対してもつ危険度は、被曝した線量と結果の障害の関係によって決ま   
 る。人類が多数の人間の大量被曝を経験したのは、これまでにヒロシマ・ナガサ   
 キだけだったので、(今後はこれにチェルノブイリが加わることになるが)、T   
 65Dを使った放影研の被曝データが、放射線防護の基準値を定めるため基本資   
 料として使われてきた。すなわち、簡単に言えば、被曝線量が変わると放射線が   
 もつ危険度が変わることになり、防護基準の見直しにまで及ぶ可能性があるわけ   
 である。T65DとDS86は、ナガサキについては大きな違いはなかったが、   
 ヒロシマについては、DS86がT65Dに比べ、空気中の放射線量でガンマ線   
 が2〜3.5倍に増え、中性子線が逆に10分の1に減った。モちろんこれまで   
 のT65Dが間違っていたのであり、DS86がより正しい。ヒロシマ原爆の放   
 射線の量が、実は、従来の定説であり、これまでわたしたちが信じてきた放射線   
 量よりガンマ線が2〜3.5倍多く、中性子線が10分の1しかなかったという   
 のである。

高まる放射線の危険度
  この1年の間に、DS86を使った分析結果が放影研から次々に発表されてい   
 る。そのいくつかを見てみよう。放影研が追跡調査している被爆者の内、被曝状   
 況がはっきりしている7万5991人について、DS86によって1人ひとりの   
 各臓器別の被曝線量を再計算した。これによって、1万人が1年間に100ラド   
 、人体の表面に被曝した場合の、死亡リスク推定値をT65DとDS86で比較   
 した。それによると、DS86の方がT65Dより白血病で1.77倍、その他   
 のガンで1.85倍高くなるという結果が出たのである。             
  また、1万人の人が全員1レム(線量を、人体へ与える影響という観点で表し   
 た単位。ガンマ線、エックス線の場合、1ラド=1レム)被曝した場合、一生涯   
 でガンや白血病で死亡する人が何人増えるかを計算した。これを生涯リスクとい   
 うが、下表がその結果である。
      ョ「「「「「「「「「「「「「「ホ「「「「「「「「ホ「「「「「「イ
      、              、白血病以外のガン、 白血病  、
      セ「「「「「「「「「「「「「「゙「「「「「「「「゙「「「「「「ニ
      、UNSCEAR(注1)77年、1.0人増   、0.2人増 、
      セ「「「「「「「「「「「「「「゙「「「「「「「「゙「「「「「「ニ
      、BEIRV(注2)  80年、2.0人増   、0.23人増、
      セ「「「「「「「「「「「「「「゙「「「「「「「「゙「「「「「「ニ
      、放射線影響研究所   最大値、16.2人増  、1.2人増 、
      、87年        補正値、5.4〜    、0.4〜  、
      、              、10.8人増  、0.8人増 、
      カ「「「「「「「「「「「「「「ヨ「「「「「「「「ヨ「「「「「「コ
      1レム被曝による生涯リスク(1万人当たり)
      注1・・・原子放射線の影響に関する国連科学委員会
      注2・・・電離放射線の生物学的影響に関する第三次委員会

 UNSCEARが1977年にT65Dを基に広島・長崎のデータから計算した   
 ものと、アメリカ科学アカデミーが1980年に出したBEIRV報告のものを   
 並記し、比較してある。今回の放影研の計算が、従来の推計より、2〜16倍、   
 リスクが高くなっていることが分かる。                     
  さらに、遺伝学部の阿波章夫博士らが、DS86で線量計算が出来た1245   
 人の被爆者を対象に、染色体異常の発生率のデータを再解析したところ、T65   
 Dと比べてDS86の方が発生率が約60%高くなった。また、78人の被爆者   
 を対象に、より精密な調査で8742個の細胞を観察して被曝線量と発生率の関   
 係を2つの計算システムで比較したところ、87の方が約50%高いという結果   
 になった。                                  
  これらはいずれも、従来考えられていたより、人体に対する放射線の危険度が   
 さらに高いことを示しており、放射線の防護基準も、厳しい方向に見直しされる   
 ことになると思われる。12月2日、ICRP(国際放射線防護委員会)のダン   
 ・ベニンソン委員長が広島を訪れた。委員長は、個人的見解と断りながらも、原   
 子力発電所など放射線を扱う作業に従事している人たちの職業被曝の基準は、原   
 稿の年間5レムから1レムに厳しくすべきだと発言した。さらに、イタリアで9   
 月に開かれたICRP総会で、放影研のデータが検討された結果、ガンの危険度   
 はICRPの1977年勧告より約2倍高くなると判断、1990年に新勧告を   
 出す予定であることを語った。