Gen00315 <放射線の危険度3>危険率、白血病6倍、がん4倍

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* 放射線による死亡危険率、白血病6倍がん4倍 放影研見直し *
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          87.08.18  朝刊 1頁 1総 写図無 (全1254字)

  広島、長崎に投下された原爆の放射線量の新しい計算法に基づいて放射線に
よるがんの発生について見直しを進めてきた広島の放射線影響研究所(重松逸
造理事長)は17日、白血病と、一般のがんに分けて新しい死亡危険率を公表
した。公表された死亡危険率は、原子力発電所で働く人やレントゲン技師など
の規制基準のもとになっている国際放射線防護委員会(ICRP)の死亡危険
率に比べて、白血病で約6倍、一般のがんで4倍以上と高い。この結果は、9
月に開かれるICRPの会議に報告されるが、広島、長崎の被爆者のがんなど
の死亡率のデータは、これまで規制基準には十分反映されておらず、規制値が
大きく下げられるのは必至とみられる。

 広島、長崎の原爆で爆心からの距離によって、被爆者がどの程度の放射線を
浴びたかを推定するには、米国の研究者が1965年に提案した暫定計算法が
長く使われてきた。ところが、この計算法には大きな誤りがあることが分かり、
82年から日米合同で原爆線量再評価委員会をつくって見直しをした結果、広
島ではガンマ線が従来の2―3.5倍に増える一方、中性子線量は10分の1
に減るなどとした新しい計算法が決まった。
 新しい計算法では、屋内にいた被爆者1人が浴びた放射線量は、従来の数値
に比べ10―40%少なくなり、被爆後30日以内に半分の人が死ぬとされる
「半数致死線量」は、従来推定されていた400ラドよりも大幅に低い220
―260ラドとなることが、7月に明らかになった。
 
 今回発表されたのは、被ばくしてから数年―数十年後に起こる白血病とがん
について。放影研では、寿命調査を続けている9万余人の中から、主に木造家
器に達した線量の2つについて、白血病とがんの死亡率を検討した。

 この結果を1万人の人々が合計100ラドの放射線を浴びた場合に換算する
と、白血病の死亡率は1年当たり3.46人。これは被爆者が観察されている
1950―85年の35年間では121人になる。同様に一般のがん死亡率は
1年当たり11.46人、35年間では401人になる。

 これをICRPが77年に公表した発がん死亡危険率と比較すると白血病の
危険は約6倍、一般のがんによる死亡は最低で約4倍にのぼる。

 今回の計算とICRPの評価がこれほど大きく食い違う原因は、発がんが多
かった広島の被ばくデータがこれまで同委員会によって生かされなかったから
だ。広島では生物への影響が大きい中性子線が非常に多いと考えられていたた
め、中性子線がほとんどない普通の環境での基準を決めるには、ふさわしくな
いと考えられていた。

 この結果について、放影研の重松理事長らは「少ない線量を浴びて白血病や
がんで死亡する危険は高くなったといえる。しかし、国際放射線防護委員会の
基準を変えなければならないほどではない。放射線に対して今まで以上に厳し
い見方が必要で、今後、がんの種類別や急性症状の脱毛なども見直しを進めて
いく」と話している。