Fre00644 「準結晶」という物質について

#0000 sci4775  9002092339

今日の日経の朝刊に、ベル研で「準結晶」という物質の合成?に成功したとありま
した。この物質は5角形の結合を持つもので、その物理的特徴は抵抗値が変化しな
い(温度にも?)と書いてありました。普通、物質の電気的特性として導電率(電
気の通し易さ)と誘電率(電気の貯め易さ)で表せると思いますが、抵抗値が環境
に影響されないということは大変な可能性のある電気的素子になりそうな気がしま
す。
それにしても「準結晶」っていうのはどんな形をしているんでしょうか?
固形でない液体でない、粘土みたいなものなんでしょうか????

#0001 kimot    9002100222

"quasi crystal"のことでしょうか。ベル研のたぶん発表した
写真では、サイズは忘れましたが、ガラス繊維の先が溶けた
ような、なんともいえない形をしていました。そのうちに、
専門的な雑誌に紹介されるかもしれません。

木元・拝

#0002 sci3588  9002120455

そう云えば、アルミニウムとマンガンの合金の電子線回析像や、雪の結晶のよ
うな形をした準結晶の電子顕微鏡写真(シェヒトマナイト相)はよくみかけましたが、
実物はどんなものか知らないでいました。
 
みかけも強度も、溶解金属を急速冷却して固まらしたような、もろいもの、と
いうのが準結晶関係の記述や写真を目にしたときの自然に湧いてくるイメージ
でした。
 
斑猫

#0003 sci2088  9002121217

  準結晶ですか。
  5回の対称性を持つものは、結晶とは呼べない(結晶の性質をすべて
 持っているわけではない)ので準結晶と呼ぶのではなかったかしら。

たぬき

#0004 sci1012  9002130042

準結晶と云うのは、quasicrystalというやつですか? それなら少し前にその存在が
x線回折で確認されたと思うのですが。雑誌でその写真を見たことがありますし、第
2回JAMSセミナーで、quasicrystalについてpresentationしていた連中が何人か
いましたから多分確かでしょう。

じゃあ、今回ベル研で出来たとか云うのは、なんなんなんでしょうか? 新聞が来な
い(だって、新聞屋さんが来る時間に家にいないんだもん)ので、詳しいことは全然
分かりませんが、比抵抗や誘電率を測定したというのでしたら、巨視的な準結晶が出
来たのでしょうか? (不気味だ)

これでは、話が見えないでしょうから、少し解説すると(非専門家のいいかげんな説
明だと思って下さい)、まず結晶とは何かと云うことです。

水を例にとりましょう。水分子が規則正しくならんでいる状態にある物を水の結晶と
云います。いわゆる氷という奴です。これは、どの水分子も、その隣の水分子は丁度、
その水分子を中心とする正四面体の頂点に来るように配列しています。これは絵をか
くのが難しいので(化学の得意な人はシクロヘキサンの椅子型の立体構造をかく要領
でかける筈です)、正4面体の代りに正6面体(立方体)で考えてみて下さい。立方
体の頂点と中心に分子があると云う単位構造(単位格子と云います)が上下左右前後
に無限に連なる構造が想像できることでしょう。これはいわゆる体心立方格子とよば
れる結晶の構造ですが、この例の様に、構成要素が(実際上)無限に周期的に繰返し
て配列した物質が結晶と呼ばれる物なのです。

ここで、構成要素の無限に周期的な配列の仕方は何通りあるのかと云う問題がでてき
ます。1次元では、

. . . . . . . . . . . . . . . . . 

と、1種類しかありません。では、2次元では? 考え方としては、平面を無限に1
種類のタイルで埋めつくすことが出来るタイルの形は何通りあるかと考えればよい訳
です。そして、少し考えることで、そのタイルの頂角は60,90,120度しかあ
りえないことが分かります。そして、それをもとに考えると、5種類の並べ方しかな
いことが分かります。(正確には、単位格子が5種類であるということです。単位格
子の中身まで考えに入れて行くと、全部で17種類になります)
で、我等が3次元では単位格子は14種類、中身まで考えると、全部で230種類し
か周期的な並べ方は存在しません。で、そのいずれもが、角度としては0,60,9
0,120,180度がベースとなっていて、5回の対称軸すなわち、72度という
異端の角はでてきません。

さて、配列に周期性が全く見られない状態の固体(といっていいんでしょうか? 詳
しい人、固体の正確な定義を教えて下さい)をアモルファス(ア=非、モルファス
=結晶の)といって、その性質が結晶性の固体と違うために持て囃されているのはご
ぞんじのことでしょう。これは、全くランダムに構成要素がならんでいる状態といえ
ます。

では、無限に周期的ではないけれども、全くランダムではないってやつもあってもい
いんでないかい、と思う人もいる訳で、数学ではペンローズという人が有名で、その
様な並べ方をペンローズ・タイリングといったりします。こいつの面白い所は、5回
対称性を持っていたり、自己相似性(フラクタル)を持っていたり(自明といっては
いけません。自明な自己相似性ではないから大切なのであり、周期性を持たないこと
の証明はこの性質に依存します)する点です。
(ぎょえ〜な話:実はここであのτ(黄金比)が登場するのです!)

で、これは平面の話だったのですが、空間でも出来るんでないかい、という訳で3次
元版を考えた人がいて、で、出来た訳です。
そんなこんなで理論屋さんが遊んでいる(失礼!)うちに、実験屋さんが5回対称性
を持つ固体があったで〜! と云い出して、騒ぎになった。

…と、こんな風に理解していますが。
                         RIのOMEGA

*   *   *   *   *   *   *

アップしようとしたら、本棚にパリティ1986-05があったのを思い出してみてみると、
やはり載っていました。それをもとに補足すると、

準結晶構造の定義:複数種の単位胞が並進秩序をもつことなく空間を充填した状態
3次元版のペンローズ・タイリングを発見した人:T.Ogawa(日本人)
    Journal of Physical Society of Japan, 54, 3205 (1985)
実験的発見:
  1984年秋、D.Shechtman(イスラエル)が急冷したAl4Mn合金中の準安定
中間相の局所電子回折(電子顕微鏡の様なものと思って下さい)によって10回対称
性(36度)を示し、黄金比の自己相似性をもつ部分を見つけ、更にそれを解析する
ことにより正20面体を単位とする対称性(注)を有することを明らかにした。(Ph
ys.Rev.Lett.53,1951)
   注:正4面体と正6面体は、隙間なく並べることが出来ますが、
     正20面体ではできません。

#0005 sci3021  9002131148

 「ペンローズのチキン」ってヤツですか?                D.D.C.

#0006 sci4775  9002152357

皆様「準結晶」のテーマに、RES頂きありがとうございます。
私はどちらかというと技術(電気系)畑で仕事をしているのでこんな話題が新聞に
のると「すわ、新素材! 技術革新じゃ」などとうれしくなってしまいます。
 
皆さんのおかげで、おぼろげながらにも「液体の性質をもった個体のような物」「ミクロで
見ると結晶だが、マクロ的には結晶構造を持たない物質」なのかなー???(見当違いかも
しれないけど)なんて輪郭がみえてきたような気がしております。
 
またアホな質問をアップするかもしれませんが、そのときには「アホ!」と叱って頂け
たら幸いです。だってこのFree Sci.ってラベルが高いんだもの。

皆様のご健闘を心よりお祈りしております。

近々<こう吉>というネームで、プロフィールをアップする予定です。

       迷える<こう吉>より

#0007 sci4983  9002230012

 初投稿です。よろしく。
 さて準結晶ですが、結晶学の本には必ず「回転対称軸としてとりうるのは
1、2、3、4、6のみであり、5回対称軸を有する結晶は存在しない。」
と書いてあるぐらいなので、たぬきさんが書いたように結晶ではないんです
よね。(長周期構造をもたないためですが、じつは私もイメージがよくわか
らないんです) ただ温度依存性がないってのは興味深いですね。私はてっ
きり準結晶というのは構造的におもしろいだけで、物性の点からはあまり
結晶と違わないものと思っていたので、ぜひ読んでみたいものです。
 どういう系なんでしょうね?

        SCI4983: NOSHA

p.s. その昔純結晶と勘違いしていました。

#0008 sci2088  9002262223

  ほっほっほっ、のーしゃ君、来たね。
 彼は大学院で金属材料を専攻しているから、いろいろレスを期待しましょう。

たぬき