Fre00174 海の井戸端会議

#0000 sci1544  8810201511


  海に興味が有って、海洋物理学のケンイになりたいと思っている人は
いませんかぁ−。そういう、物好きな方への第一牽制球。
海の水の温度は、大抵、上が暖かく、下が冷たくなっています。どうして
そうなっているか、考えてみませんか? 
                                             旅やつれの 掃除機




#0001 sci1544  8810201513


 これまた、自分(あるいはそういう事を考えるのが商売の人=水商売と
申します)でも唖然とするような、はたして、これで、この先このコ−ナ−
やっていけるのか? と、おびえてしまうようなベ−スノ−ト。その上、
RT会議向きの話かもしれないな。でも..
 いままで 蔭に日向に、皆さんとお付き合いさせて頂いて、「さすが科学
ネットの参加者」とうならされた事も二度や三度ではありません。オセジで
なくて。そういう皆さんに、海洋とは、地球とは..と考える時のある一つ
の視点を分かっ頂けたら..と思ってこのコ−ナ−に清水の舞台から飛び降
りてきました。
 でも、私は出張が多く、このコ−ナ−を(も?)うまく運営していけるか
どうか心配です。そのための方法として、皆さんで、私の質問をタネにして
いろいろ、話をしてください。それに対して、私が現在までの「正解」らし
きものを紹介していきたいとおもっています。でも、ちゃんと言っておかな
くてはいけないのですが、正解らしいものはあっても正解そのものは、ある
のかどうなのか、わたしも実は知りません。そこの所、お含みおきを。
 話の進み方に応じて、次々にコ−ナ−をわけて行きたい、と思っています。
もし、皆さんの中に、そっちの方面でメシをくったり遊んだりしている方が
いらっしゃいましたら、どうか絶大なるご協力を。
気長にやりますので、sysop様、netの皆様、ドウカよろしく。
                              掃除機

p.s. 私の幾人かの友人(海洋関係の研究者、と呼ばれる物好きたち。非生物
  も、生物も)が参加してくれると思いますので、そうなれば、案外便利
  な、「電話」ならぬ、「ネット相談室」になるかも知れませんね。




#0002 sci1082  8810201612


ケンイでなくていいですけど、海洋の上を専門にしているので
ひとこと関連発言でエールを送ります。
フレー、フレー、掃除機さーん。
--Tokio




#0003 sci1003  8810210309


えっ,だって,上からは太陽の光で温められるし,温まった水は比重が軽いので
下へ降りていかないし,上のほうの水が温度が高いのは当然でしょう?
でも,こういう安直な考えは,きっと違っているんだぞ,と思う RUKAS




#0004 sci1544  8810210944


    そんなに疑心暗鬼にならないで下さいね。話は単純な事なんですから。
安直な考え、大変結構だと思います。安直な考えをいくつもくつも積み重ね
ていけば、大概の場合、正しい結論にたどりつく可能性が高くなるのですか
ら。ただ、安直な考えは徹底的に安直である事、考えと考えの論理的な結合
が形而上的整合性を確保している事は大事ですが。
  さて...では、関連質問。
  下はどうして46億年かかっても温まらないんだろう? だってね、炭
  火に突っ込んだひばしの事、考えて見て下さい。上からは太陽、下から
  は地熱(太陽ほど大きいソ−スではないけれど)で温められているひば
  しです。
  どうですかぁ? みなさん                 掃除機




#0005 sci1697  8810211014


[>5hたぶん、だれかが  暖かい水と冷たい水を
流しこんでいるんじゃないですか?
始めて書き込みました。
どうぞ よろしく。パラフォイ   ル
  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル
  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル
  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル ルルルルルル  ル
  ル  ル  ル  ル  ルです[>5l




#0006 sci1004  8810211321


そういうことなら,わたくしも疑心暗鬼にならずに書いてしまいますが,
あのー それって いま話題の 放射冷却では ないのですか?
オンラインの 院生浪人




#0007 sci1180  8810211710


 水が蒸発する時って、確か熱を奪いますよねぇー。「気化熱」とか
言いましたっけ・・・。
 それと極の方では「オン・ザ・ロック」になってますし・・・。
     うーーん、考えすぎてかえって
             分からなくなってきているtotoでした。




#0008 sci1544  8810221246


 いやぁ−。皆さんなかなかやりますなぁ。勉強になります。本当です。
さて、もったいぶってる訳ではなくて、正解らしき物を述べさせて頂く前に、
ちょっと、論点整理をしますね。
基調質問に対するRUKASさんの答えは、
  上は太陽で暖められる−−−−−−>上は暖かい
  暖かい水は軽い−−−−−−−−−>下は暖まらない
という骨子でした。
それに対する疑問は、
A: それはそうだけれども、熱伝導とか、まじりあいとかで、熱は下に伝わ
  っているかも知れないよ。

B: いやいや、でもね、地球の中心は熱いのだし、RUKASさんによって上でも
  暖められているし、地球の温度を、中心から表面まで一本の「半径」上
  で考えると、途中に温度極小値をもっているのは一見良さそうだなぁ。
  (つまり、冷えかけた饅頭を、セイロに入れれば、皮とアンコがあった
  かくて中間が冷たい状態が作れるよ)

A: でも、それはあくまでも過渡期の状況で、長い時間(地球の熱伝導
  率と地球の大きさで決まる時間)がたてば極値はなくなるはずだよ。(
  セイロに入れっぱなしにした饅頭は最後には一様に熱くなるもの)

それでは、まだまだ地球は「長い時間」たっていないのか?それは、実は有
りそうな事です。でも、天下りで言えば、(私が計算する限り)地球の表面
に近い所では、太陽からの放射と宇宙への地球の放射とは良く平衡状態にあ
って、とても途中に温度の極小値を維持できるほどではないようです。とな
ると...、
極小値の付近にマイナスの熱のソ−スが有るか(氷が埋まっているとかね)、
あるいは、RUKAS説がまだ述べられ足りないか..という事を想像させ
ます。つまり、
  どうして海の下の方は冷たいのか? これを答えなければならなくなっ
たわけです。そして、それがわたしの関連質問でした。
長くてよみづらいでしょうから、この後は別の関連発言に書き込みます。
                           掃除機  




#0009 sci1772  8810250023


 あれ? 書き込んでいいのかなー?
 確か、海のそこが冷たいのは、極地方からの冷たい海水が、流れ込んでいるの
だと思いましたが・・・。
                           Long




#0010 sci1731  8810260216


 私がまだ、ナンセンとかいう芸術品を使っていた頃のテキストにも、
極から流れてきた層があると書いてあったように思います。
(ナンセンの補正でだいぶ苦労しました。被圧・防圧の二本の温度計があって、
逆さまにして水銀糸が切れる仕組みが正に芸術ですね。それでいて1/100の精度が
ある・・・。それに、メッセンジャーがナンセンを叩いて、転倒させるときの
「コツーン」というワイヤーの感覚・・・ なんともいえません。)
 地球内部からの伝導による熱の放射は、ほとんど無いといって良いでしょう。
マントルをつくっている、かんらん岩の熱伝導率はたいへん小さいですから。
(なん億年も先になれば話は別ですが、とりあえず今のお話で)
そんでもって、地殻熱流量として観測されるものは、地殻内部の放射性物質及び
マントル内の対流によるものと考えられますが、たかだか2HFUというオーダー
です。(海底に槍を突き刺して地殻熱流量の測定をするのは、かなりしんどい)
 仮にこのような熱で温められたとしても、海水中で対流が起こって、やはり
暖かくなった水は上へと行ってしまうのではないでしょうか。すると、そこに
やって来るのは極の冷たい水、、かな?
                                                Shadow




#0011 sci1731  8810292217


おや、書き込みが絶えてしまった。
なんか私のせいのような気がする。う〜む、困った。
「みなさぁーん、お元気ですかー」 なんて言ってもだめ?
                                                Shadow




#0012 sci1772  8810300547


 一応、みなさんShadowさんの書き込み(プラス、私の書き込み?)で、結論が
出たと思っているのではないでしょうか?
                               Long
ps,私は元気ですよ;−)




#0013 sci1544  8811021808


 お久しぶりです。なやめる掃除機が NIF の CB でやけくそになって
戻って参りました。
さ−て、どこから話を始めようかナ......
 皆さん、対流って、御存知ですか? そう、小学校で習った「三つの熱の
伝わり方」の一つで、媒質が流体の場合に最も効率的な、マクロな「熱輸送」
の形態です。小は味噌汁のお碗の中から、大は(概念的には)全宇宙の構成
にまで見られるそうです。
 対流は浮力で駆動される流れです。あったり前田のXXXXXとお思いでしょうが
実に大事な事です。つまり、対流を起こすには、流体の中に密度の水平非一様
を作ってやれば良い、という事を頭にしまっておいてください。(もっと正確
に言えっ!、と専門家はおっしゃるかも知れませんが、まぁ、ゴカンベン)

 お風呂を考えましょう。(最近は蛇口をひねるとお風呂にお湯が一杯になる
んで、学校の先生はどうやって対流を教えたらいいんだろう。基本的な自然現象
のひな型が身の回りからドンドン消えていく..私、掃除機が子供の頃、
すなわち昭和30年頃には、どんなお風呂があったか知らない人は、どうか、
回りの老人に教えを乞うてくださいね。)お釜で熱せられた水はその場で上に
行きます。それでもお釜の前の水が無くならないのは、お釜のはるか前方の水が
お釜のほうにやってくるからです。さて、それじゃあ、こんどはお釜のはるか
前方の水が無くなるんじゃないか...と、心配になりますがそれは今度は
上から補償されます。で、これを絵に書くと

            (B) 空気にふれて冷える
         ー「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「エ
   (A)    ・ →    →     →     →     →     →    ・
   お    ・                                          ・
   釜    ・↑      ↓        ↓       ↓        ↓・
   で    ・                                      ・
      あ        ・↑                                       ・
   た    ・        ↓         ↓         ↓          ・
      た    ョ「ハ↑                                      ↓・
      め    ィ ・                                          ・
   ら  ィ釜・↑    ←     ←     ←     ←     ←   ← ・
      れ    ィ  ・                                          ・
      る    カ「レ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「シ

となるのは、御存知の通り。で、大事なのは、こういう対流は(A)か(B)か
どちらかがあれば(形は少々変わりますが)発生することです。
長くなったので、ここまで。次の次の関連書き込みには、氷を浮かべた
おふろを考えます。
ところで、こういう書き方って、詳しすぎますかぁ?




#0014 sci1544  8811021816


Shadowさんが書いていたナンセン...というヤツについての野次

☆ 海のフカ−イ所の水をどうやってとるのか、そこでの水温をどうやって
はかるのか...っていう事については18世紀後半ぐらいから、真面目に
考えた暇なひとがいました。まぁ、なんとかつかえるナ、という道具は
1771年にヴィルケという人が作った採水器(水を採る器械)が最初です。
そういう採水器に温度計をつけてまがりなりにも表面下の水温を計るように
なったのが19世紀の中ごろです。

☆ Shadowさんがつぶやいていたナンセン..というのは、あの有名な探検家
ナンセンが作った採水器で、1900年の事です。それまでにも、性能の
よい採水器として、ブチャナン、エクマン、ペタ−ソンという人々(考え
てみりゃ、みんな北欧系だ!)のものがあったんですが、ナンセン採水器
には、一本のワイヤ−に多数の採水器が取り付け可能であり、一度に
いろいろな深さの海水が採取出来ること、構造が簡単なこと、ある特殊な
水温計を付けることによって採水した海水のその場での水温、採水した深
さまでもがわかる事などのとくちょうがありました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

閑話休題
世界で最初にふか−い所の水温を計ったのは、ヨ−ロッパ−アフリカ間の
奴隷船の船長です。かれは17世紀後半に、ふたつきバケツで深い所の水
を採り、急いで温度計を突っ込み、「うおっ!つ、つめたいっ」という論
文を書きました。
そこが、赤道だったもので、どうして赤道に冷たい水があるのか....
という疑問はそれ以降しばしば海洋学の主題として扱われ、一応の決着を
みたのはなんと1961年にストムメルとア−ロンスという人が書いた論文
によってなのです。無論、現在、話はさらに進歩しておりまして、その最先
端にいるのは、なんとこれが日本人だというのが楽しいところです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

☆ ある特殊な水温計というのがShadowさんが言ってた、転倒温度計なのです。
この温度計には圧力を感じないものと、圧力を感じるものとの2種類があります。
この2種類の温度計をナンセン採水器ににとりつけます。ナンセン採水器は
ワイヤ−に固定されるのですが、採水器のボトル自体は、とめ金をはずすと、
自重によって、ひっくり返り(倒立)、ボトルの口がしまります。一方、
転倒温度計はひっくり返った時の温度を保持します(Shadowさんの発言参照)。
で、圧力を感じない水温計(防圧)からはその場の水温が、圧力を感じる
温度計(被圧)と防圧温度計の差から、ひっくり返った深さが推定できます。

☆ ボトルをひっくり返すのには、重りをワイヤ−を伝わせて投下し、採水器
のとめ金をはずします。で、ボトルがひっくり返りますと、ひっくり返った
ボトルからさらに新しい重りがほうり出され、ワイヤ−を伝わって、その
下のボトルをひっくり返します、そして、und so wieder。この重りの事
をメッセンジャ−といいます。なかなかいいネ−ミングでしょ?で、メッセ
ンジャ−によってボトルひっくり返る度に、ワイヤ−をさわっていると、
ゴツン、ゴツンというショックが伝わってくるというわけです。(でも、
私のように6000mもワイヤ−を出す場合はまるでわからないですけど)

☆ で、真面目なはなし、Shadowさんの言っていた1/100度の精度といのは間違えで
35度計(ー2度から35度まで計れる)んp場合、1/100度まで読みますけど、
精度はがんばって1/20度にすぎません。2度計(−2度から2度まで計れる)
の場合で、1/1000度まで読んで、精度が1/50と言うのがいいところでしょう。
もちろん、温度計のキャリブレ−ションによる事なのですが、この程度の
精度ですら、キャリブレ−ションには温度計一本5万円ぐらいかかります。

☆ このナンセン採水器は、現在ほとんど使われなくなりました。その理由は、
水密性が悪い事の他に、金属製なので回りから重金属イオンが解け出し、
科学物質の分析にとんでもないコンタミを与えるからです。現在では、塩化
ビニ−ルの筒を使い、内面にテフロンコ−トした採水器が一般に使われます。
また、水温、塩分の測定も、CTD(conductivity、temperature、depth)
という器械で連続的、かつ高分解に行なうようになっていますが、転倒温度計
については、CTDという器械の現場でのキャリブレ−ションに今なお使われ
ています。(CTD観測の精度についての議論がいまWHP=世界海洋大循環
実験計画海洋観測プログラム、の中で、英国のサンダ−ス博士、私、ドイツの
コ−ルタ−マン博士、米国のジョイス博士等によって議論されています。興味
がある方は、NIFTY SERVE の MGH00451までメ−ルをください。)
         あぁぁぁぁぁ ながかったぁ  ごめんなさいっ 掃除機




#0015 sci1731  8811031858


 すごい長編!!
掃除機様の、あの長編の後に何を書いても見劣りしてしまいます。
ナンセン採水器のナンセンと言うのは、実はあのナンセンだったのですか。
全然知りませんでした。しかし、6000mまで降ろすっていうのはすごいですね。
これは1日つぶれると思いますが、、、。実は私は海底の、さらにその下が専門
ですが、4000mちょっとの所で採泥をしたのが最高です。
そういえば、昔とある所で熱水が沸きだしているのでは、と思われる所を
偶然に発見し、ナンセンで採水しました。ところが、その水を入れる入れ物がなく
みんなでビールを飲み干して、そのビンに入れましたが、ビンの成分が溶け出して
全然駄目だったという思い出があります。(あるいはビールの成分か??)
ところで、転倒温度計がどうして水深を計ることが出来るのかよく分かりません。
よろしかったら教えて下さい。説明をしてもらった時は船酔で、頭にはトイレの事
しかありませんでしたので。
                                                        Shadow




#0016 sci1089  8811062127


 大変面白かったです。研究の最先端の現場が、生き生きと饐脳裏に浮かび
ました。といっても、風景だけで、内容は....?
 次の機会を楽しみにしております。
Martha