Edu00092 校則の法的根拠について

#0000 sci5139  9106230336

 学校によっては、オートバイの運転免許を取得してはいけないとか、パーマを
かけてはいけないとかいう校則があるようです。
 その合理性に疑問が投げ掛けられているようですが、私は“校則”の法的根拠
について考えてみました。 αマトン


#0001 sci5139  9106230337

 まず、立法権について話します。

 立法権は立法機関に属します。立法機関としては、国の国会および地方公共団
体の議会があります。

日本国憲法第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関で
ある。

日本国憲法第94条 地方公共団体は、《中略》、法律の範囲内で条例を制定す
ることができる。

 ここでいう「立法」とは形式的意味における「法律」を制定する能力ではなく
、実質的意味における法律を制定する能力をいいます。実質的意味における法律
とは、権利を設定し若しくは制限し、義務を課し若しくは免除し、または何らか
の強制力ある行為の根拠を定めるものをいいます。

 つまり、法律は外の根拠なくしてそれ自体強制力を持ちますが、行政機関の定
める規則は、法律の根拠に基づかなければ強制力を持ちません。これが憲法第4
1条の「唯一の」の意味するところです。

  by αマトン


#0002 sci5139  9106230338

 市町村立の小中学校を除き、学校を設置するときは“学則”を届け出なければ
ならないことが、学校教育法施行規則第三条に定められています。その第四条で
学則に記載すべき事項が決められています。

 そこには、就業年限、休業日、課程、授業日時数、収容定員、入学、退学、卒
業、授業料、賞罰、寄宿舎といった事項が並んでいます。しかし、これは学則制
定権を付与する授権法ではなく、当然そのようなことを定める権限があるはずだ
ということを前提にしています。


#0003 sci5139  9106230339

 校則は学校と生徒との契約の一部でしょうか。

 契約の内容は当事者の合意によって定めます。当事者はその合意によって契約
の内容を変更することができます。当事者の一方が相手方の同意を得ずに契約の
内容を変更することは出来ません。

 学校の校則の変更が、変更後に入学する者のみに適用されるものであれば、そ
の校則は契約の一部であるという余地がありますが、既に入学している者にも直
ちに適用されるというのであれば、契約の一部であるという余地はありません。

 授業料を学則で定めている大学がありましたが、その改定は改定後に入学する
者に適用され、改定前に入学した者は留年しても改定前の授業料が適用されまし
た。

  by αマトン


#0004 sci5139  9106230341

 校則が契約の一部だとして、そこで定めることのできる事項について考えます。

 通常は、「契約自由の原則」というものがあって、契約で何を定めてもいいの
ですが、学校教育法に基づいて設置される学校のする入学契約は、純然たる私法
上の契約ではなく、学校教育法という公法によって規律される契約となります。

 公法によって規律されるということは、単にその法律に違反しなければよいと
いうことではなく、その公法の目的とするところに適合するようにその内容を定
めなければならないということです。

 また、契約は一般に、「公の秩序、善良の風俗」に反する場合は無効となりま
す。公の秩序とは、法令の規定のうちその適用が当事者の自由に任されていない
ものをいいます。

  by αマトン


#0005 sci5139  9106230348

 校則が契約の一部ではないとしたら、その効力の根拠は何で、そこでは何を定
めることができるのでしょうか。

 校則は入学契約に基づく手続き規則であると私は考えます。

 入学契約に基づき、生徒は授業料を支払う義務を負い、学校は生徒に授業を受
けさせる義務を負います。校則では、これらの義務の履行方法を定めることがで
きると思います。すなわち、授業料の納入窓口を定め、授業の実施日、始業時刻
、時間割、クラス配置、終業時刻、試験週間などを定めることができます。

 そこで定めるのは、あくまで義務の履行方法であって、新たな義務を定めるこ
とは出来ないと考えます。

  by αマトン


#0006 sci5139  9106230350

 私見では、校則が契約の一部であるにしろ一部でないにしろ、学校外における
生徒の行為を制限するような規定について法的効力を与えることには非常に疑問
です。
 特に公立学校においては、そのような校則を定めること自体が「職権乱用罪」
になるのではないかという気がします。

刑法第193条 公務員其職権ヲ乱用シ人ヲシテ義務ナキ事ヲ行ハシメ又ハ行フ
可キ権利ヲ妨害シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス

  by αマトン


#0007 sci6891  9106260112

なるほど、専門的にはいろいろと問題がありそうなのですね。
法律関係はよくわかりませんが、校則に限らず、就業規則、施設利用規則、
サイエンスネット書き込み規則(!)、病院の面会時間の規定など、改めて
その根拠を問われると、わからないものばかりですね。
こういう規則は一般的に契約といえるのですか?
施設利用規則などは利用を申し込むときに、申込書に書かれていたりしますが、
明文化された規則のないことも多いですね。
銭湯に入るときに、異性の湯に入ってはいけない、という掲示を見た記憶が
ないのですが、、、
銭湯の入浴規則が、家庭風呂にまで適用される状況、というのが、校則で
学校外の行動を規定する状況と、考えると、とても変ですね。

TERA


#0008 sci5139  9106272257

 混浴の禁止は都道府県の条例で定められています。ですから、県によって混浴
禁止年令(8才以上とか10才以上とか)が異なる場合があります。混浴の禁止
されていない県があるかどうかは知りません。(あったら行ってみたい。)

  by αマトン


#0009 sci6891  9106280140

そうでしたか。知りませんでした。
ときどき温泉地で混浴があるようですが、あれは条例違反なのでしょうね。

話は戻って、就業規則は労働基準局か(労働監督署?)
に届出が必要だったと思いますが、校則では教育委員会に届出が
義務づけられているのでしょうか?
 もし、義務づけられているとすると、不当な校則は教育委員会が
行政指導する義務が生じるのではないかな?
 つまり、学校に対して抗議すると同時に、それを容認している
いわゆる行政所轄庁にも抗議をする必要が生じませんか?

TERA


#0010 sci5139  9106292132

市区町村立の小中学校を除き、学則の届け出義務がありますが、
校則の届出義務は不明です。 αマトン


#0011 sci5139  9106292134

 特別権力関係理論について紹介します。

 これは、特定の区域(学校、病院、官庁、刑務所など)を支配する者はその区
域に属する者(生徒、入院患者、公務員、受刑者)に対して、法律の根拠なくし
て権力を行使することができ、かつその行為は裁判所の裁判権の対象外であると
いう理論です。この理論は、かつて行政法学者の通説で、昭和40年頃までは最
高裁判所の判例でもおおむね認められていました。

 この理論を認めるなら、学校が校則を制定するのは当然の権限であるというこ
とになります。

 私見では、この理論は明治憲法には適合するとしても、現在の日本国憲法には
適合しないと思います。

 最近の裁判例では、特別権力関係理論をそのまま認めたものはなくなってきて
いるそうですが、実質的にこの理論を認めるのと同じくらい広い裁量権を認めて
裁判権を放棄しているように見える例があるように感じます。

  αマトン


#0012 sci5139  9106292136

 停学処分の法的根拠がどうも見当たらないのです。

 学校教育法施行規則第13条で、小中学校の児童生徒に対しては停学処分をす
ることができないという旨の規定があります。これは、教育基本法第4条による
9年間の義務教育を受ける権利を具体的に保障するためのものです。

 ところで、このような規定があるということは、小中学校以外の学校の生徒に
対しては停学処分をすることができるということを当然の前提にしています。し
かし、学校教育法施行規則は文部省令であって法律ではありませんから、法律の
根拠が特にある場合のほかは、権利義務に関する規定を設けることは出来ないは
ずです。そこで、停学処分の根拠が学校教育法にあるだろうと思って調べてみま
した。ところが、「停学」という文字が見当たらないのです。根拠となりそうな
のは第11条だけです。

学校教育法第11条 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督
庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。た
だし、体罰を加えることはできない。

 監督庁とは文部省(文部大臣)で、その定めるところとは文部省令をいいます。

  (つづく)


#0013 sci5139  9106292137

 「懲戒」といえば、単に叱ることだと思いました。それが、文部省令では停学
処分や退学処分までできることになってしまっているのです。私は、このような
包括的な規則制定権の委任では、停・退学処分に関する法律の根拠として不十分
だと思います。包括的な委任を認めてしまっては、立法権の独占は無意味になっ
てしまうからです。このように限定的でない規則制定権を認める背景としては、
やはり「特別権力関係」という考え方があるように思います。

  αマトン


#0014 sci5139  9106292341


 退学処分の法的根拠は、民法第541条の債務不履行による契約解除と考える
こともできますが、停学処分については民法などに相当する規定が存在しないの
です。

 法律の明文の規定がない場合において権利や義務の発生を認めるためのものと
して、慣習法という考え方があります。これは、慣習に法律と同一の効力を認め
ようというもので、「法例」という名前の法律に規定されています。

法例第2条 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セザル慣習ハ法令ノ規定ニ依リテ認メ
タルモノ及ビ法令ニ規定ナキ事項ニ関スルモノニ限リ法律ト同一ノ効力ヲ有ス

 結局、停学処分を行なう権利については、慣習法で認めるしかないと思います。
「停学処分はすべて違法だ」というなら別ですが。

 このようなものは他にもあると思いますが、慣習法というのは不文律であるだ
けに内容が明確でなく、できるだけ法律を制定して明文化することが好ましいと
思います。

  αマトン


#0015 sci6891  9106300043

初歩的な質問だと思いますが、

1 学則と校則の違いは、簡単にいうとどういうことですか?
2 特別権力関係論では、ふつうの社会の中に、「特定の区域」でない
  区域は存在するのでしょうか? たとえば、市長は市民に対して
  法律によらない強制力を持つ命令(?)を出せるのですか?
3 「懲戒」と聞くと、私は、訓告とか懲戒免職とか減棒とか、いろいろな
  叱り方を思い浮かべますが、、、?

できるだけ法律を制定して明文化することには賛成ですが、
基本法だけ決めて、あとは省令その他広い意味での行政指導で運用する
というやり方になってしまわないか心配です。

TERA


#0016 sci5139  9106300111

 市長と市民の関係は特別権力関係ではなく、一般権力関係であると
されています。
 すまわち、法治主義が保障されます。  αマトン


#0017 sci5139  9106300112

 学校に対する行政所管庁は、ややこしい体系になっていまして、
   ・大学および高等専門学校は、文部大臣
   ・大学・高専以外の国立学校も、文部大臣
   ・大学・高専以外の私立学校は、都道府県知事
   ・大学・高専以外の都道府県立学校は、都道府県教育委員会
   ・大学・高専以外の市区町村立学校は、市区町村教育委員会および都道府
    県教育委員会
となっています。高等専門学校というのは高校と短大をくっつけたような5年制
の学校です。
 ということなので、私立学校のすることについて教育委員会に文句を言っても
所管が違うと言って取り合ってもらえないと思います。

  αマトン


#0018 sci5139  9106300233

 学則を定めるのは、学校ではなく、学校を設置する者です。校則については法
令に規定がありませんが、多くは校長が定めていると思います。

 学則では、休業日などを定めなければならないことになっています。校則につ
いては、法令では校則と言う呼び名を使っていませんが、授業開始時刻を校長が
定めることになっています。

 市区町村立の学校(大学を除く)については、都道府県教育委員会が学期を定
め(学校教育法施行令第29条)、市区町村教育委員会が休業日を定め(同令第
30条)、校長が授業開始時刻を定める(学校教育法施行規則第46条)ことに
なっています。

  αマトン


#0019 sci5139  9106300236

 法律で、「懲戒を加えることができる」とだけ定めて、あとは省令と解釈で
、退学も停学もできるようにしているのが現状です。そういったやり方を止め
て、どんな処分をすることができるのか明確に法律を定めて、法律をだれが読
んでも同じような範囲の処分が思い浮かぶようにするべきだと考えます。

  αマトン


#0020 sci6293  9107112053

 懲戒の範囲については、義務教育段階と高校以上では異なっています。
中学まででは、退学も停学もできません。出校
停止には、教育委員会の許可を得て、できます。懲戒の範囲についても、
細かい規定があり、教室内で
立たせるのはよいが、廊下でたたせるのは教育えお受ける権利の侵害で
あるとか細かく言われています。もちろん、体罰は許されません。
 しかし、生徒が暴力をふるってきた場合、教師には、自己防衛の権利
はあります。
 高校以上については、退学や停学処分はおこなえますが、各校に処分
規定があるでしょうか。20年前、高校紛争の時代、我が母校でも問題
になりました、学則には、処分については、
内規で定めるとありながら、その内規はない き だったのです。
このような処分は法的にはどうなのでしょうか。
 恣意的な処分は
法的には、無効と考えますが、いかがでしょうか、 
            ふうたん


#0021 sci7103  9107122055

        どうも初めまして.今日IDの届いた「麗人」というものです.
        今後ともよろしく.

        さて,僕は法律関係についての知識はまったくないので,あまり
        説得力はないと思いますが,とりあえず聞いて下さい.
        「校則」の法的根拠等はよく分かりませんのでとりあえず「校則」
        について思っている事を書きます.

        ちょっと前にテレビで「校則は是か否か」という討論を見ていた
        ときのことですが,ある高校の教師が,「校則とは社会における
        法律・憲法のようなものである」という旨の発言をしていました.
        確かにそのような一面を持ってはいると思いますが,大きく異な
        る点が1つあると考えます.それは法律・憲法は建前の上では万
        人に拘束力をもつものでしょう.しかし,「校則」の場合ではど
        うでしょうか?

        「校則」というものはその学校に所属している全ての人間に有効で
        はありません.有効なのは生徒に対してのみです.生徒に対しては
        一度学校内に入ったら下校時刻まで出てはいけない,髪の毛をきれ
        などといっているのに,その「校則」を率先して守らなければなら
        ない立場であると考えられる教師自身が彼らの主張する「校則」を
        守っているのを見た事がありません.こんなことで生徒に対して「
        校則」を守れといえるのでしょうか?

        「彼らは成人しているのでよいのだ」という人もいるとは思います.
        しかしよく考えてみて下さい.
        最近警察官等の人達が,様々な事件を起こし続けています.そのよ
        うな事件に対して何も感じないのですか?
        たぶんたくさんの人が憤りを感じていると思います.それは,法律・
        憲法を率先して擁護していかなければいけない立場の人間が,それ
        を破るという事に対してではないのでしょうか?話がずれていると
        いう人もいるでしょう.しかしこれは「校則」と「学校」というも
        のを社会に当てはめてみただけの,いわばスケールアップしたもの
        であるに過ぎないと思います.

        話を戻します.教師には権力があります.彼ら自身がどう思ってい
        ようとそれは事実であるといえるでしょう.権力を持つ者が,それ
        に制限を加えられる事を拒むという事はすなわち自分は「法」の上
        に立つ者であるということを宣言しているのと同じです.そしてそ
        れを人は「独裁」と呼びます.
        権力は制限され,監視されるべき性質のものです.従って教師もあ
        る程度「校則」に拘束されるべきなのです.

        このように考えると,現在の校則の多く項目が削除されて然るべき
        ものであるとは思いませんか?一体彼らのうちのどのくらいの人達
        が頭を坊主にしたり,持ち物検査を受ける事に同意するというのか?

        僕は「校則」には,ただ”他人に迷惑をかけるな”という1行があ
        れば十分であると思っています.
        甘いですか?

                                    麗人


#0022 sci5551  9107131738

 義務教育の中学校には、あてはまらないんですが...

 高校の校則に関しては、生徒本人の責任ってないんでしょうか。
 というのは、高校って、行きたい人が行きたい学校に行くんですよね。
(もちろん、地域や環境によって、選択の幅に大きな差があるとは思う
けど)なら、どんな校則があるか知らずに入ってきて、文句を言う方だっ
て悪い。知ってて入ってきたんなら、それ以上の魅力その他を優先した
結果なわけで、文句を言う筋あいではないし。(つまり、契約と同じよ
うな考え方ですね。)
 中学の先生だって、高校の選択は人生の転機だとか言って大学進学率
を使って進学指導するヒマがあるんだったら、各々の高校の校則の一覧
表を配った方がずっと生徒のタメになるんじゃないかな。(これはタト)

 これで、自然淘汰ってのは甘いかな...

 ISW